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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第五話

 前回18時に予定投稿しましたがPV数が3とひどい結果だったので、21時に予定投稿します。これから投稿時間を調整しつつ作者が苦にならないかつ新着で競争になりづらい時間を探ります。しばらく投稿時間が安定しませんがお付き合いください。

 空は青と赤に分かれ、太陽は今にも姿を隠してしまいそうだ。昼行性の動物たちは眠る準備を始め、夜行性の動物は動けない動物を狙って活動を始める。


 俺とジダオは互いの実力を測るために対峙していた。距離は約15m。ジダオの氷弾なら瞬きの間にも俺のところまで届く。

 それに対して俺のとる行動はただ動かないこと。ジダオがどれだけのパワーを発揮しようとも、絶対にこの鎧を貫かせはしない。さっきみたいに拳で氷弾を砕くこともしない。これは俺の鎧がジダオの攻撃よりも強いということを証明する勝負だ。


「行くぞチャンクー! 四肢が消し飛んでも悪くは思うなよ!」


 いや四肢が捥げたら普通に恨むが


「来いジダオ! お前の付け焼刃の氷弾なんて通用しないところを見せてやろう!」


「お前の鎧も付け焼刃だろ」


 ジダオが何かつぶやいたが声が小さくてよくわからなかった。俺はお前ほど耳がよくないんだから、もっとでかい声でしゃべれよな。

 

 ジダオはいつも通り額に力を集めていく。今までで一番強力な力を感じる。ジダオの得意技、力の圧縮によって小さい形にエネルギーが溜まっていく。


 膨大なエネルギーは果てしない密度の氷を形成していく。それはアフリカの暑さでも決して溶けることはなく、鋭い先端は自然の物体程度は簡単に破壊できる。

 さらにその氷は形状による回転ではなく、力によって直接回転を加えられ、熱量を上げる。天の力、コリオリの応用だろう。


 対して俺は、今までで最高硬度の鎧。ジダオの扱っていた力の圧縮を俺も使えるようになっていた。ジダオほどのパワーは出せないが、俺の元の性質、岩石の重量と大地の硬度を最大限に引き出す鎧は、既存の物質の硬度を密度と結合のみで上回る。

 どんなドリルも刃が先に摩耗して通らないはずだ。ジダオの氷弾は威力はあっても俺の鎧を上回るほどの硬度はないはず。この鎧は決して破れない。


 ジダオの額から高速回転する氷弾が打ち出された。

 やはり、ジダオの氷弾はとんでもない速度で飛んでくる。俺の動体視力をもってしても、動きをとらえるのが精いっぱいだ。この距離だと叩き落すことはできなかった。

 氷弾は俺の鎧の胸部にぶち当たり、すさまじい音を立てる。しかし、ジダオの氷弾は俺の鎧に触れてその回転を急速に弱める。

 

 よし、氷弾が俺の鎧を貫けなかった。俺の勝ちだ!


 ん? これは、回転の速度が上がっている!?

 氷弾をよく見てみれば、力の糸のようなものがジダオとつながっている。

 あいつ、この距離で力を送り続けているのか。

 削れた先端が修復されていく。勢いも留まることを知らず、回転は最初に弱まった以降加速し続けている。

 

「鎧が削れ始めている!? クソッこうなれば俺も鎧を修復し続けるぞ!」


 へこみ始めた鎧の胸部を修復して氷弾を押し返す。


「良いだろう! ここからは持久力勝負だ!」


 ジダオも負けじとさらに力を込める。


「「ぐおおおおおお!!!! 負けんぞおお!!!!」」




 夜も深まり、太陽はすでに見えず少し欠けた月は太陽の代わりに宙に浮いている。

 昆虫は届くはずのない月に向かって飛び、しかし不思議にも地面と水平に飛ぶことができ、長い距離を飛ぶのに適していた。


 俺とジダオの戦いは数時間に及んでいた。ジダオはいつまでも力を送り続けて俺の鎧を破壊しようとしてくる。


 俺も負けじと鎧を修復し続ける。互いの力は拮抗しているかに見えたが、しかしそれは見た目だけだ。


 燃費が違う。ジダオは回転・推進力・氷弾の修復といった力を扱う必要がある。

 対して俺は鎧の胸部を修復するだけだ。元の重量に身を任せていれば俺がほかに力のリソースを割く必要はない。


「なあジダオ。いい加減諦めないか? もう夜中なんだが」


「俺の不利はわかっている! だがそれは持久戦だからだ! 先に力が尽きるのは俺だが、お前は油断しきっている!」


 そうジダオが言い放った瞬間氷弾の出力が急激に上がる。回転も推進力も今までの比ではない。


「今更短期決戦に切り替えるつもりか!? それならもっと早くするべきだったな!」


 俺の残存エネルギーはジダオよりもはるかに多い。

 機動力や性能は度外視して、重量と硬度に最大限力を使う。鎧の上にもう一回り大きい鎧を生成し、ジダオの氷弾に圧力をかけた。特に胸部は厚めだ。

 これは俺の鎧とジダオの氷弾をぶつけ合う戦い。鎧を一転特化で作るのは少々卑怯だが、この氷弾が鎧を貫けば四肢が捥げる程度では済まない。


「ジダオ! これで俺の勝ちだ! お前が最初の時点で短期決戦にかけていたら状況は違ったかもしれないがな!」


「ぬううう!! だが! 負けが決まっているとしても! 俺は力を使い切るまで手を止めないぞ!」


 諦めの悪い奴だ。もうジダオが俺に勝てないことはわかっているはずなのに。


「俺の力を受け切って見せろォォォ!!!」


 ジダオが最後の力を振り絞って氷弾の出力をさらに上げる。

 氷弾は光源ではないはずなのに、力の余波によって青い光を放つ。回転は空気と擦れあい、本来冷たいはずの氷は周囲に火を噴く。だが決して氷が溶けることはない。


「すごい威力だな。だが、修復に割く力が足りていないのではないか?」


 そう、ジダオの氷弾はもう修復のことなんか考えていない。俺の鎧を突破するための出力を出すには修復に費やす力はないと判断したのだろう。


「これで終わりだァァァ!!!」


 俺は大きく拳を振り上げ、氷弾を叩き壊す。崩壊した氷弾は内部の莫大なエネルギーを放出し、周囲を極寒の地に変えた。


「俺の負けか。うむ、仕方のないことだな。元々俺に不利な勝負だと気づくべきだった」


「そうだが、俺もお前が予想以上の粘りを見せたから我慢できなくなって氷弾を壊した。本来俺の鎧とお前の氷弾のみの勝負だったのに」


 俺はこの戦いを汚した。勝ちが確定していたのにまだ時間がかかりそうだったから待てなくなってしまった。


「チャンクーはあれか、典型的な決闘神聖主義だな。文化的な考え方が俺とは違う。今のを俺は、決闘を汚されたとは思っていない。俺の実力不足だ、気にするな」


「そう言ってくれると気が楽だよ。ありがとう」


「あ、あと力使い切って疲れたから朝まで動けない。頑張ってくれ」


 は? ……まあ、周囲がこの状況なら動物たちに襲われることはないだろう。俺も疲れた。今日はもう休むとしよう。

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