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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第七十二話

更新遅れてすいません。これからまた更新頻度が悪くなります

~SIDE ジダオ~


「悪いな魃魔王カンハン。俺の脳は思考能力を補うために、基礎能力を強化されているんだ。集中力に関しては人間にも負ける気はしない。多彩な思考は俺には無理だがな」


 地面に墜落し、力なくその場に横たわった魃魔王に語りかける。

 蝗魔王がその脳細胞の少なさを補うため全身に脳と同等の性能を持つ中枢神経を備えているように、俺の脳もその弱さを補うように出来ている。


「なるほど、そういえば貴方もワンと同じでしたね。ですが本当に残念です。その集中力で、貴方は私に負けたのですよ」


「なに!?」


 奴が発言した瞬間、力が抜けていくのを感じた。たまらず膝を付く。

 何故だ? 奴の脳組織は完全に破壊したはず。もうその口を動かすこともできない。その翅は二度と飛行できないように潰してある。

 というのに奴は俺に語りかけ、しかも俺の体内から無理やり天の力を奪い取ってきた。


「もし貴方の集中力がもう少し長く続けば、私が絶命していないことに気づくなんて簡単だった。それどころか、私のどこを破壊すれば絶命させられるのかも簡単に見つけ出せたはずです。しかし最後の最後に、貴方は集中を切らしてしまった。だから貴方は負けるのです」


 俺は咄嗟に奴から距離を取った。奴の手が触れている状態では天の力を奪われ続けてしまう。

 しかしどういうことだ? 奴は頭と身体が一体になっている。いわゆる一頭身に近い体形。これ以上何処を破壊しろと言うのだ。


 だがな、俺の集中力が切れただと? またこいつは舐めたこと言ってやがる。俺は今もお前を殺す魔法を制御するために集中し続けているんだぞ。


 少し時が経てば地面にしっかりと足を付けて踏み込む力が戻ってきた。

 まだ戦える。身体能力さえ戻れば、俺は充分に戦えるのだ。地上は俺の独壇場。どれだけ強大な力であろうと食い破って見せる。


 俺は力が完全に戻ると同時に走り出していた。

 地上での俺の機動力は空中のそれとは比較にならない。ただ愚直に、直線的に走るのではなく、時に蛇行し、時に跳躍し、奴に次の行動を予測されないよう走る。


 奴は俺を近づけさせまいと、先ほどの風の刃を大量に放ってくるが、俺はそのすべてを回避して見せた。

 あの攻撃は身体強化に頼って受け切ることはできない。一つずつしっかり機動を読み取り正確に躱すのだ。


 俺のすぐ傍を死を含んだ暴風が駆け抜けていくのを感じた。しかしそれに怯んではいけない。

 今日の俺は異常なほど冴えている、当たりはしないさ。

 俺の速度は完璧に戻っていた。奴には俺がこの距離を瞬間移動したように見えるだろう。


 自ら開いた距離を一瞬にして詰め、奴の顔面に食いかかる。

 奴の身体は一頭身。先ほどの攻防でその大部分を破壊したはずなのに絶命しないということは、もっと深い部分、もしくは手足などの突起に命が宿っている可能性が高い。


 俺の予想では目のさらに奥、脳の中心部分にそれがある。

 俺の感覚的な話になってくるが、化生や魔王は既存の生物とは異なる動力を持っている気がする。当然心臓や脳を破壊すれば倒すことが出来るはずだが、それ以外に何か別の命を持っているのだ。

 だから蝗魔王も頭部を破壊した程度では死なない。


 魃魔王の風の刃を慎重に避けつつ、私怨の全てを込めて奴の脳天を食い破る。先ほどの攻防で俺は既に奴の攻撃パターンを学習した。奴にダメージを与えること自体はさほど難しくはないのだ。

 弱い脳を補助する機能は基本的能力に偏っている。具体的には集中力、記憶力、記憶容量などである。だから俺はたった一度の攻防であっても奴の動きを記憶することができた。


 その経験から噛みついた牙を一瞬で離す。奴が狙うであろう攻撃を察知したからだ。

 俺が半身身体を逸らした瞬間、その場所に風の刃が通り抜ける。それは今まで俺に避けさせていたものとは違う、俺の肉体を確実に切断するための一撃であった。


「俺のお前に対する怒りは、きっとお前が思っている以上に深いものだぞ。あれほどの屈辱は受けたことがない。お前の言う通り、化生としてはそんな私怨で戦うのはあまり良いことではないが、それを軽く無視してお前と戦い、俺の力を見せつけたいという欲求があるのだ」


「怒り、怒りですか。貴方がそれを言うのですか。私が、貴方に怒りを宿していないとでも? 本当は貴方などすぐに片付けて、あの人型を殺したい。あれは神虫の仇だ。だけど貴方はそれを邪魔する。私は行動を邪魔されるのが一番嫌いなんです。私が貴方の怒りを推し測れないというのなら、貴方も私の怒りを推し測ることは出来ませんよ」


 奴は先ほどよりもさらに速い風の刃を放つ。敢えて言葉にしたことで、その怒りが表面的な力となって現れたのだろう。

 本来なら風の魔法で打ち消すところだが、奴の天属性最高権限とやらが気になる。安易に体外に魔法を放つべきではないと考え、俺は持ち前の洞察力でこれを回避した。


 取り敢えず、俺の体内で魔法を使って身体能力を強化する分には奴の影響を受けないらしい。しかし雷のように魔法を放ってしまうと打ち消される。直接奴の肌に触れても打ち消される。


 しかし俺のスピードは雷を超えているのだ。風が俺を捉えることはできない。たとえ10cmしか距離が離れていなかったとしても、奴の攻撃を避けられる自信がある。

 奴の魔法は基本的に熱と風。俺の動きを捉えられるような魔法は持っていない。だからこそ奴は俺の近接攻撃に合わせてカウンターを狙っているのだ。


「神虫は間違いなく私たちの友だった。彼は化生側だったけれど、ワンの主張を理解して手伝ってくれていた。もし彼がワンと友になっていなかったら、私は絶対にワンのことを許してはいなかった。あれは黄帝に傷をつけた男だから」


 ヒットアンドアウェイ。一撃喰らわせて一撃回避する。俺の攻撃は深くまで刺さらず、魃魔王の攻撃も俺に当たらない。

 そういった攻防を繰り返していると、奴は怒りに任せて言葉を紡ぎ始めた。丁寧な口調も美しい声もぐちゃぐちゃにして叫び散らかしている。


「神虫は……彼は記憶を失ってなどいなかった。ただ、彼は人神によって行動も発言も制限されていただけだった。ワンは気づいていないかも知れないけれど、一度化生側に寝返ったことのある私にはすぐにわかった。神の施す強制力。神虫はそれに全てを狂わされていた。人神、奴は気に入らないことを力で捻じ伏せようとする、一番良くない君主だ。あれだけは野放しにしておけない」


 何を言っているのか、俺には半分も分からない。しかし奴が怒りを語り始めてから刃の威力が飛躍的に上昇した。それだけ、奴にとって大切な事柄なのだろう。


 神虫の話はもちろん聞いたが、彼の知能は人型であるチャンクーをも出し抜くほど高度なものであり、とても思考に制限を掛けられているというような状態ではない。

 神の力はそんなピンポイントで制限を掛けれるほどのものなのだろうか。

 天神に地神、さらに人神か。神はいったいあと何柱いる? 俺たちの味方と言えるのはいったい誰なんだ。

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