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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第五十話

 前回までのチャンクー君。

 人質助けた。全軍動き出した。

 夜のビクトリア湖周辺。本来ならば夜行性の原生生物が動き回り、昼と遜色ない騒がしさを持つ土地。

 だがバッタたちの影響により、それも様変わりしてしまっている。

 木々はなぎ倒され食いつくされ、ただの更地と化している。アフリカ最大の水場であるはずのそこは、サハラと似たような状態にまでなっていた。


 襲い掛かる数多の人型種をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。先ほどからこれでもかってほど下位の人型種が攻撃を仕掛けてくる。

 だがこの程度、身体強化だけでも問題なく捌ききることができる。


 さっきからこいつら、何を考えているのかマジでわからん。

 最初は飛行種に攻撃させないために俺を囲んでいるのかと思っていたが、飛行種はまんまと装甲車に引き付けられている。

 飛行種は頭こそ悪いが、人型種の命令を受けて団結した行動をとったり、通常種を率いたりできる。


 上位の人型種が仕掛けてこないことを考え、こいつらの意味不明な行動は人型種の命令の可能性が高い。

 何か仕掛けてくることも考えておくべきだな。人型種に囲まれて範囲殲滅魔法を飛行種に撃ち込めていないのが痛い。あれでは本隊を魔法銃持ちに任せて突撃することができない。


 今回も例のごとく、バッタたちはビクトリア湖を背にして戦っており、俺たちも変異種から距離をとって銃撃する本隊、機動力の高い飛行種を引き付ける誘導部隊、そして強力な敵を殲滅する大戦力の俺、という構図になっている。


 魔法銃を所持しているのはウガンダ誘導部隊大隊長クラグ。元々ウガンダ軍の持ち物であり、クラグも使い慣れているそうだ。

 形状はタンザニア軍が押収した魔力式貫通火砲・拳銃型と同じ。魔力タンクには俺の水銀を渡し、昨日のうちに試し打ちをしてもらっている。


 ウガンダ軍の装甲車は特に走行スピードに優れ、多くの飛行種を引き付けてくれている。だがエンジンはそう優秀ではなく、あのスピードを出すのにかなり装甲を薄くしているらしい。対飛行種用の車両である。

 その為クラグが魔法銃によってかなりの数仕留めているわけだが、何せ飛行種は通常種並みに数が多い。殺しても殺してもすぐに次に奴が追ってくる。


 こいつらなぎ倒してさっさと上位人型種をぶちのめすしかないか。指揮官さえいなくなれば飛行種なんてただの雑兵。大型種も本隊との距離を考えれば相手にならない。

 今回も恐らく破壊種がいるだろう。生まれたばかりなら問題ないが、ボウリーのような奴が現れればそうもいかない。戦車の主砲さえものともしないような装甲を持っていた。人類の武器で相手にするなら、地雷を数十個仕掛けておく必要があるだろう。

 俺たちであっても身体強化を乱す魔法か、装甲を貫通する魔法を使わなければ大したダメージは与えられない。


「まだ戦いが始まって間もないが、早速新しい魔法の出番みたいだな。隆盛!」


 大地に向かって魔法を放つ。その途端大量の岩石山が生成され、周囲にいたバッタどもを全て打ち上げた。

 さらに人型種の接近を阻害し、かつ俺が操れるフィールドを増やした。


『誘導部隊に通達。酸素断絶結界を使う。距離をとれ。炎を嫌った人型種を逃がさないよう、かなり広範囲に放つ。十秒ののち、この魔法を発動する』


 通信機越しに了解の声が聞こえてくる。

 以前に使った、炎によって酸素を奪い取り相手の行動能力を阻害する結界。あれからさらにパワーアップし、強化された人型種の臓器であっても炎熱によって破壊できるようになった。上位人型種でもそこそこ強くなければ、結界内にいるだけで絶命させられるほど。空気を囲む炎も、単純なスピードや耐性程度では抜けられない出力となっている。

 こういう時のために人型種はある程度捕獲している。イギリスの研究チームに護送する分もあるしな。


『十秒経過。酸素断絶結界、発動!』


 十秒であれば、俺の流れ弾を警戒して元々距離をとっていた誘導部隊が結界から逃れられるだけの時間はある。


 体内から膨大な量の自然力があふれだす。だが酸素を自然力で補わない分、支出は抑えられている方だ。

 ただ、この魔法本来の力を発揮するには融合力が必要である。酸素分子を燃焼することによって二酸化炭素に変換させるには、本来炭素を含む有機物が必要である。

 ジダオの分子操作はまだまだ解析途中だが、融合力によって強化されれば酸素から二酸化炭素に反応させるのに炭素を必要としない。これの原理が本当に不明。ジダオの魔法は万能が過ぎる。


 しかし今の俺では酸素を減少させることしかできない。

 未だに魔法の解明が進んでいないから仮説でしかないが、恐らく魔法は本来自然界で起こるべき反応をすっ飛ばすことができる。


 何もないところに火はつかない。だが俺の魔法はそれを可能にする。全てのエネルギーは自然力によって補完され、現象を引き起こす。

 ではここで、酸素の情報を含む魔法の要素を破壊するとどうなるか。魔法は火を維持するために周囲から酸素を取り込むが、炭素がないために二酸化炭素は生成されない。

 まるで誰かが俺の指示を聞いて、結果だけを先取りしているかのような現象だ。


 酸素断絶結界によって減少した酸素は、下位の人型種を即座に窒息させ、動けなくした。

 半径約100m。人型種だけでなく大量の飛行種や大型種も巻き込み、その熱量で一息に絶命させた。体循環系操作や熱耐性を持たない生物に、これは耐えきれない。


「流石の力だなァ。あいつから聞いた通りだ。俺の配下がバカバカ死んでいくじゃねェか」


「上位人型種か。こいつを見せれば出てこないわけには行かないと思っていた。さっきから端っこでコソコソ何してた?」


 なんの意図も読み取れない下位人型種の動き。だがあれは間違いなく上位人型種の指示と言える。

 ならこいつが出てきた理由は二つ。向こうさんの作戦が実行段階になったか、俺の魔法を見て出てこざる負えなくなったか。

 後者を狙って即座にこの魔法を使ったわけだが、何とも微妙な雰囲気だ。俺に作戦を悟られないよう強者のふりをしているだけと信じたいところだが。


「ハンッ! お前が気にすることじゃないさ。今からお前は俺の相手をするんだからな!」


 隆盛によって作り出した岩石の山を避けつつ最適ルートで迫ってきた。手には短い二振りの剣を持っている。黒と白。間違いなく俺の身体を傷つけることのできる魔法の武器だ。


「フン、低能の馬鹿野郎が。わざわざ名前を付けて発動速度と形状を固定した魔法が、罠じゃないわけないだろう!」


 上位人型種の習性とでも呼ぶべき、最適ルートを見つけ出して直線的に移動する動き。

 それを逆手にとって配置した罠。設置型魔法、爆雷。岩石の山の側面に山ほど設置している。一瞬でも触れればそれだけで発動し、敵を粉々に砕く。

 爆雷の発動速度は現状最速であり、ジダオがトップスピードで触れてトップスピードで駆け抜けても掠る程である。


 爆雷に巻き込まれた上位人型種は持ち前の耐久力でこれを耐え、なおも俺に突撃してくる。

 崩壊した岩石の山は落下の衝撃によって新しい魔法を発動し、追加の山を発生させた。

 自然力が続く限り半永久的に岩石の山と爆雷を生成し、奴らを殺し続けるトラップ。酸素断絶結界がある限り奴らは人間を攻撃できないし、俺を殺そうにもトラップで殺し続けることができる。


 奴の速度は俺よりも速く、瞬きののちには目の前までたどり着いていた。

 振り下ろされた右の短剣をスレスレで躱し、左拳でカウンターを叩き込んだ。

 奴は俺の攻撃を顔面に受けたが、それを回転力に変えてさらに切り込んでくる。


「なかなかタフな奴だな。顔面に直撃したのに反撃できるとは」


「タフ、というのは人間的すぎる表現だ。俺たちに痛覚は存在しない。人間と同じ見た目ではあるが、体内は全く異なっているのだ」


「そうだよな。お前は人間じゃない。だからこそお前を倒すすべも、そこにあるんだがな」


 こいつらを倒すのはそう難しいことじゃない。バッタが無理に人型をとっているのだから、それを魔法で補ったところで弱点だらけだ。

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