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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第二話

※今回から前回よりも具体的に地名や地形、生体などが出てきますが下調べガバガバなので実際と違っても許して※

 とんでもなく頭が痛い。思いっきり打ち付けた。クソが。なぜこんなことに。

 背の低い草と小さい丘ばっかりの場所だ。動物のいそうな感じはするが、最初の目的だった人間には会えそうにない。

 隣で悶えている狼野郎が本当にムカつく。


「いてて。フン、全然問題なかったな」


「うっさいわボケ! 何しやがる! ここがどこかもわっかんねぇじゃねえか! 人間に話を聞いて情報収集しようと思ったのに人なんかいなそうなところに着地しちまったじゃねえか!」


「な、なんだと!? そもそもお前が自分の余剰エネルギーを使うことしか考えてなかったのが悪いではないか!」


「グ、それを言われると何も言い返せぬ」


 クソ、だが確かに言われてみれば俺に非があるような感じがする。というか完全に俺が悪い。

 普通に論破されてさっきまでの怒りがスンと消える。


「はあ、すまなかった。今回は俺が悪い」


「お、おう。お前は意外と素直な奴だな。なんかもうちょっと反論してくれないと調子崩れるな……。だが、今回のことで新しい問題が出てきたな」


「新しい問題? なんだ? 微妙に今後の関係が乱れそうなことか?」


「そんなことではない。っていうか、関係乱れそうか?」


 そりゃ俺のミスで今後の予定が崩れたし、俺は自分のことしか考えてなかった。十分関係が乱れそうな感じがしそうだが。


「へんな茶々を入れるんじゃない。俺がさっきのこと程度でお前のことが嫌いになるほど器の小さい奴だと思っていたのか」


 俺の考えすぎか。なんかこいつ、意外といいやつかもしれない。


「ところでジダオ、結局問題ってのは何なんだ?」


「俺たち、力の制御がガバガバなんだよ」


 力の制御がガバガバ? どういうことだ?


「さっきのお前の爆発、余剰エネルギーの出力が予想以上に高かったとはいえ、本当ならそれに気づいた時点で爆発を弱めることもできたはずだ。俺が風を発生させなかったとしてもあのままだとビオコ島を超えてアフリカ大陸に直接着陸していただろう」


 なるほど、確かに爆発を起こす前に出力が高すぎるかもしれないと感じた。しかしあれを止めることができなかった。俺の制御能力がエネルギーの量に対して弱すぎたのか。


「俺の風にしてもそうだ。俺の予想なら赤道ギニアのどこかに着陸できるはずだった。だがここはどう考えても赤道ギニアじゃない。というかたぶん赤道ギニアの隣のカボンやカメルーンでもない」


 やっぱ索敵能力を最大限発揮するために地理には詳しいのか。

 ん? 地理に詳しいのに、アフリカ大陸の内陸にわざわざ着地したのか? 内陸部は野生動物ばっかりじゃないのか。やっぱりこいつ馬鹿なのか? いや、こいつはいい奴だ。そういう考えはやめよう。


「そ、そうだ。余剰エネルギーを吐き出してすっきりしたところだし、簡単な狩りでもして制御能力を高めるとしようぜ。腹も減ったし」


「それもそうだな。食事がこの体にどのくらい必要なのかも調べておく必要がある」


「どうせなら、好戦的で足の速い奴にしようぜ。この辺りにはその手の肉食獣も多いだろ」


「それで行こう。この近く、南に少し行ったところにプライドが一つ。さらに南に行ったところに草食獣の群れがあるな」


 プライド、ライオンの群れか。強くて狩りが得意で自分たちが生態系の頂点だと勘違いしているイキリ肉食獣か。


「よし、プライドを襲うぞ。テキトウに挑発して奴らを怒らせる。そこで力を使って調子を確かめるんだ。もしかしたら余剰エネルギーが原因で制御能力がおかしくなっていたのかもしれない」


「俺はいいが、お前はいいのか? 食料調達も兼ねてるんだから最終的に食べるんだぞ。ライオンの肉はアンモニア臭くて食べられたものではないそうだぞ」


「良いさ。香辛料も味付け用の調味料もないが大丈夫だろ。最悪火ぃ通せば食えないことはねえだろ」


「お前がいいなら良いか。俺も強い奴と戦いたいのは同感だ。ある程度実力のあるやつじゃないと戦いにならないからな。プライドはそう遠くない。早速行こう」




 8月のこの時期、アフリカ大陸内陸部は乾季の大詰め、ひと月に一度しか雨が降らず、草は動物たちに食い荒らされ、動物たちはさらなる餌を求めて大移動する。季節的には涼しい時期のはずだが、赤道がすぐそばのこの場所ではほぼ誤差だ。気温は日陰でも28度。日向はまさに灼熱の暑さだ。そもそも日陰なんてほぼないが。


「ま、俺たちに暑さなんて関係ないけどな。俺は火山そのものだし。たとえ1000℃を超える溶岩の中に入ったとしても暑いなんて感じることはない。ジダオもそうだろ」


「さすがに1000℃の溶岩は暑いだろ。俺は寒気も扱うことができるからその力で体温管理をしているだけだ。制御がガバガバといってもそのくらいはできる」


「ふーん、寒気で体温調節か。なかなか面白いな。天の力はそんなこともできるのか」


「体温調節の必要がないお前の方が各段に楽だと思うが」


 そんなことを話しながら本来とてつもなく過酷なはずの道筋を俺たちはスイスイ進んでいく。体力も人間の比ではなく、丘を登るのも苦ではない。しばらく水を飲まなくとも問題はない。


「ッ! チャンクー、近いぞプライドだ」


 歩き始めて1時間と少し、ようやくか。歩くのは苦ではなかったがずっと変わらない風景の場所を見続けるのはしんどいものがあった。


「やっとだな。数は?」


「オスが1とメスが6だな。少々少ないか。テキトウに挑発すると言っていたが何か策が?」


「これは力の制御の練習も兼ねているんだ。岩石砲を使う。最初は当てない。威力も弱めだ。とりあえずあいつらに気づかせて襲わせる。奴らイキってるから向こうから襲わせたら逃げはしないぞ」


「そううまくいくものか? ちょっと不安なんだが」


 大丈夫なはずだ。俺の作戦にスキはない!

 奴らに向けて岩石砲を作る。距離は大体300mくらいか。奴らは休憩中なのかまだこちらに気づいていない。威力は弱めだ。直撃しても死なない程度の威力。

 奴らの近くの地面を狙って打つ!

 岩石は高速回転し空気抵抗を減らし、射出される。

 あれ、また威力ミスった。あれじゃ直撃したら殺しちまう!

 

 その時、岩石の軌道が大きく変わった。何かが俺の力に干渉するのを確かに感じた。

 軌道が曲げられた岩石は近くにいた雌の額を正確に貫く。岩石はそのままとどまることを知らず、回転を続けたまま脳を突き破って逆側の頭から飛び出す。そして、どこかに行ってしまった。

 

「な、なんだ今のは。岩石の制御権が俺から剝がされたのか?」


「お前、今の威力じゃ向こうから襲ってくれるどころかビビッて逃げられていたぞ。なんかお前の力に干渉できそうな感じがしたから軌道をまげてとりあえず一匹殺したが」


 俺の力に干渉することができるのか!? 俺とジダオが元は同じ竜だからか?


「ハッ! ライオンの群れは!?」


「もう逃げられた。まあ岩石を当ててなくても逃げられてただろ。走って追いつくこともできるがそれよりも先に力をもっと深く知ることが大切だ。それと、殺したメスを食べる」


「そうだな、腹も減ってきたし。できれば水場も見つけたいところだが、それは後回しだな。まだしばらくは大丈夫だろ。俺は食事の準備を始めるよ」


「頼む、俺は周囲の索敵でもしておこうかな」


 まずは雌ライオンの死体を解体して食事だ。

 雌ライオンは見事に頭をぶち抜かれ、それ以外に外傷は見当たらない。きれいに狩ることができた。まあ岩石を当てたのはジダオなんだが。

 とりあえず解体すべく頭を腕力で引きちぎる。脳みそはさすがに食えない。腹の肉くらいしか食えないだろう。

 ちぎった頭の縁の皮に手を突っ込んで剝いで行く。筋肉や脂肪が出てきたらほかの内臓から剥がしていく。腸とか胃とかは邪魔だし食べたくないからテキトウに燃やしておく。こうすることで腐るのを防ぐことができる。食べないからその辺に放置していくのだが、腐ったまま放置するのは気が引ける。ついでに頭も燃やしておく。しばらくしたらハイエナとかが肉をあさりに来るだろう。さすがにライオンは来ないと思うが実はライオンも死肉を食べる。


 食べる部分の腹肉を焼いていく。

 クサッ! ジダオの言っていた通りアンモニア臭いなこれ。肉食だからか?

 まあ食えなくはなさそうだな。


「ジダオ! 食事の準備ができたぞ!」


「早かったな。遠めに見ていたがずいぶんと手際が良いんだな。解体の知識があるのか?」


「いや、食えそうなところは腹だけだったからそこ以外はテキトウにぐちゃぐちゃにしておいた」


「まあ良いか。早く食べよう。腹が減った」


 そう言ってジダオは前足を合わせ、「いただきます」と一言つぶやいた。


「なんだそれ」


 と、俺が聞く。俺の知らない何らかの文化なのだろうが、俺には何がしたいのかわからなかった。


「ああこれか? 俺たちが生きるために犠牲になったものにせめて感謝だけでも伝えておこうと思ってな」


「ふーん」


 正直俺には意味が分からなかった。犠牲になった動物に感謝を伝える。それはとても失礼なことじゃないのか。

 こいつは俺に負けた。負けた相手に「俺達のために死んでくれてありがとう」なんて言われたら俺は怒る。

 だが俺は人の文化は否定しない男だ。なぜかはわからないが、それもまたとても失礼で人を傷つけることだとわかっていた。

 だから俺は何も言わずに肉を食う。アンモニアのにおいが鼻どころか口やのどまで刺激してきた。


「本当にまずいなこれ……」

 

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