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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第四十五話

~SIDE ジェリアス~


 装甲車の中から魔法銃を放つ。やっていること自体は先ほどと何も変わっていないが、今度は相手が違う。

 ジダオさんが人型種の多くを引き付けてくれてはいるが、全体の3分の2と言ったところ。つまり3分の1は私が相手をしなければいけないのだ。


 少し前まで戦車の主砲や固定式機関銃でしかまともなダメージを与えられず、それもかなり時間を掛けなければ撃滅までには至らなかったあの人型種を、私一人が受け入れなければいけない。


 今回はチャンクーさんがヘイト管理をしてくれているわけでも、ジダオさんが近くにいて援護してくれているわけでもない。

 お二方から、私ならば任せても大丈夫だという信頼のもとに私はこの魔法銃を預かっている。だからここで失敗するわけにはいかない。


 今回はリロードの心配はない。搭乗員に銃を渡し、その間はライフルで飛行種を狙うだけ。

 七発しっかりと撃ち尽くし、人型種を順調に撃破。ライフルを手に取る。


 私たち人間にとっては、上位飛行種も十分な脅威だ。彼らは突進だけで装甲車を凹ませるほどの威力を発揮し、銃が打てるように窓を外したこの装甲車に入り込まれでもしたら、遊撃部隊はすぐに壊滅させられてしまう。


 ライフルを乱射し飛行種を追い払った。何発かは当たるし、絶命させることもできる。飛行種はその突進力に比べて耐久力はそこまで高くなく、戦車ならば突進を受け止めるだけで撃破できる場合もある。


「隊長、リロード終わりました」


「ありがとう。ライフルのリロードも頼む」


 ライフルと魔法銃を交換し、人型種を狙う。先ほど倒したにも関わらず、次の人型種がもうすぐそこまで来ている。

 魔法銃から放たれる弾丸は容易くその胴体を貫き、一撃で絶命させることができた。


 この魔法銃、実は奴らの認識を阻害する魔法も掛けられている。そのため奴らに回避されることはほぼない。

 奴らは予備動作と着弾地点を先読みできなければ弾丸を避けられない。眼で見てから弾丸を避けるほどの能力は、あくまで眷属でしかない奴らには不可能だ。


 弾を放つ瞬間、奴らにはこの銃周辺が発光して見えなくなっているそうだ。発光している間に銃口を少しずらして狙いを悟らせなければ十分通用する。

 元々は対人戦で有利に立ち回るためのものだが、人間としての戦いができる人型種だからこそ、この地味な魔法が有効なのだ。


 移動速度の速い飛行種と、魔法銃がなければほぼ倒すことのできない人型種を引き付けるため、この装甲車には大量の紫外線ライトが設置されている。

 昆虫は視力が低下している上に、紫外線に寄り付く性質があるらしく、この方法なら効果的に奴らを引き付けることができる。


「隊長!こっち側に人型種が来てます!」


 声をかけられ、反対側の席に移動する。

 ライフルで牽制していた遊撃部隊のメンバーと入れ替わり、魔法銃を浴びせた。

 私がいる側は危険だと悟られたらしい。こちら側にはたくさんの人型種がいる。


「チッ、そんなところから銃撃しやがって! これでも喰らえやオラ!」


 人型種に装甲車の後部を掴まれた。どうやら足の速い奴がいたらしい。かなりのスピードを出していたはずだが、追いつかれてしまうとは。

 ピッタリ真後ろに付けられてしまい、射角的にここからは狙えない。それにこの魔法銃ではあまり車両に近いところを撃つとかなり危険なことになってしまう。


「ウゥオオォォラァ!!」


 装甲車は今だその速度を保ったまま走り続けているが、人型種は地面に足を突き立て装甲車を持ち上げようとする。

 がっしりと四本の手で車体を掴んでいるのが、走行のきしむ音でわかる。


「減速してください。一度装甲車を出て私が奴を殺します。他のメンバーは迫ってくる変異種をライフルで牽制してください。減速して奴を殺っても、人型種に接近されれば結局同じことです。頼みましたよ」


 全員から了承の声が上がる。本当に、私を信頼してくれている良い部下たちだ。本来なら、強力な変異種に追いかけられているこの状況で減速するなんてありえない。

 さっきも言った通り、減速して脅威を退けても、新たな脅威に接近されれば結局状況は悪くなるばかりだ。

 だが彼らは、私ならばこの状況を覆せると、そう信じてくれているのだ。もっと言うと、アッサムの才能を信じていると言えるのだが。


 十分に減速した装甲車から転がり落ちる。ドアを一瞬だけ開け、すぐさま遊撃部隊のメンバーがドアを閉める。

 リロードを全く気にしない、高密度の弾丸で周囲に来ている人型種を近づけさせない。

 今この状況で、さらに脅威を近づけさせることが最も避けたいこと。のちに少し不利になることを許容してでも弾幕を厚くする必要があった。


「やっと降りてきやがったな。俺と近接で勝負する気になったか」


「身体能力で大きく劣る私は、あなたと直接対決なんてしたくはありませんでしたが」


 ここまで至近距離になると、たとえ目くらましの発光があったとしても銃の軌道を読まれてしまう。

 ならば、奴に近づかれてでも後手を確実に当てるしかない。

 奴の身体能力なら私の身体程度簡単に破壊できる。本当ならこんなリスクは背負いたくはなかった。


 先手は当然身体能力で大きく私に差をつけている向こう。その圧倒的な走力で私に急接近し拳を叩き込んでくる。

 はぁ、やはり低能のバッタ。単純に直進して上段から拳の二連撃とは。一番私が予想し、準備してたところに綺麗に飛び込んできてくれた。


「何!?」


 奴の拳を体半分横にずれることで回避する。拳が降られる位置まで分かっていれば、避けることぐらい私でもできる。

 奴の速力は確かに速いが、弾丸のような速度というわけではない。十分視認し、距離によってはこうして完璧な対応ができる程度。


 完璧に奴の攻撃を躱した私は、即座に左手で魔法銃を放つ。この距離間で外すはずがない。

 と、思っていたが、やはり驚くべき身体能力だ。この距離、このタイミングで私の銃撃に対応するとは。


 人型種は魔法銃の弾丸に対して即座にバックステップすることで、腕を三本を吹き飛ばすだけに被害をとどめた。

 クソ、弾を一発無駄にした。本当に、こいつらの相手をするのは好きじゃない。フィジカルと身体能力だけでこちらの手を無駄にしてくる。


 奴は一本だけになってしまった右手で横薙ぎに拳を放ってくる。

 これを転がって避けるが、私は追撃の右足を見逃さなかった。これを魔法銃で打ち抜き、奴のバランスを崩す。足は容易く吹き飛び、私に届くことは絶対にない。


 足も腕も失い、地面に倒れこんだ奴の首をナイフで切断した。

 これだけだるま状態になってしまえば、ただのナイフでもこいつの外骨格を突破できる。

 ジダオさんの話では、身体に穴が開くと、体内の魔力の制御がかなり難しくなるそうだ。


 一番接近していた人型種を撃破し辺りを見渡してみると、遊撃部隊がしっかりと牽制してくれていたようで、かなり遠くにしか敵はいない。

 この距離なら十分魔法銃が通用する。とりあえず残りの弾丸を近づいてきている人型種に叩き込み、装甲車まで戻る。


「こちらに引き付けている人型種はかなり減ってきました。魔法銃の弾が少し心もとないので一旦本隊に戻ってください。皆さんは本隊に戻り次第その場で援護射撃、私はウガンダの装甲車に同乗し、人型種をさらに殲滅します」


「「「了解!」」」


 一部不満そうな顔も見えるが、全員了承してくれている。

 ウガンダ側の装甲車には魔法銃がないし、こちらに人型種の大部分を引き付けていたとはいえ、そろそろ援護に向かわなければならないだろう。

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