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※パラレル地球の救い方※  作者: Negimono
第一章 アフリカ編
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第二十四話

 大きく飛び上がったジダオ。降り下ろした薙刀をひねって身体ごと後ろに向けつつ振り上げる!

 ジダオの身体強化ならこの程度の斬撃で傷がつくわけないが、この速度と重みなら軽い脳震盪くらい起こせる。

 俺たちレベルの身体能力があれば高所低所の不利なんて存在しない。ジダオの身体能力がどれだけ高かろうとリーチの差で俺が勝つ。


「今回は俺の勝ちだぞ!」


「お前に見せたいものがあるって言っただろ!」


 ジダオの額を打ち抜こうとしていた薙刀の切っ先は大きく空ぶった。


 なん……だと?


 その時俺はありえない光景を目の当たりにしていた。


 薙刀に吹き飛ばされるはずだったジダオはしかし、不自然にも空中で軌道を変えた。突風を起こすだとかのレベルではない。

 確かにジダオの前足が大気を踏みしめ跳ね上がったのだ。

 まるでそこが地面かのように自然に。けれどはたから見ればこれほど不自然なものはない。


「んッ! だとこの!?」


「お前にはまだ見せたことがなかったよな! 自在に宙を駆ける空歩だ!」


 クソ! いつの間にそんな魔法を!?

 空を踏みしめ宙を駆けるだと!? そんなの反則もいいところだ。魔法は物理法則をガン無視してるクソ反則技だと思っていたが、こんなあからさまに物理法則を無視してる魔法が存在していいのか?


 宙で軌道を変えたジダオはしかし大きく逸れることはなく、薙刀の先端のみを躱して俺に迫ってくる。

 即座に水銀の槍で囲みに掛かるがジダオの電光を食らって弾かれる。


 ジダオの牙が薙刀を降り下ろし背を向けた姿勢の俺に襲い掛かってきた。

 それを察知した俺はジダオを正面に捉えることもせずにかがんだ姿勢から前方に回転する。


 薙刀を回収し、デカい口開けて俺に食いつこうとしてたジダオの顔面目掛け、回転に合わせてかかとを喰らわす!


 この何もない錬兵場で立体的な機動力を得られたのはかなり痛いが、それだけで勝てるほど甘くはねぇ!

 弾かれた水銀は回収し新しく生成しなおす。ジダオ相手に少しでも攻撃に時間をかけるのは悪手だ。とにかくノータイムで追撃を仕掛ける。


 新たな水銀の槍を四つジダオに放つ。先端の圧力は先ほどまでよりもはるかに大きい。

 重たくした水銀の槍は吹き飛ばされたジダオに追いつき叩きつけられるが、びくともしなかった。


 流石の耐久度だ。奴にクリーンヒットしたはずだが、少しも響かず抜けられてしまった。

 頭ならまだしも、胴体に当たっては、俺の攻撃が通用するはずがなかった。


 ジダオは俺の攻撃を受け切りそのまま距離をとってしまった。

 距離をとられれば俺が不利だ。今はまだ5m程度だが、これ以上距離を開けられるのは不味い。

 ジダオの背後に石の柱を生成する。やはり遠い距離なら金属よりも岩の方が生成が速い。ただこの程度でジダオの耐久を突破するのは不可能。あくまであいつの足を止めるのが目的だ。


「チッ! めんどくさいことするなよな!」


 ジダオは持ち前の索敵能力で振り向きもせずに俺の石柱の目前で停止する。


「距離をとられるのは嫌なんでな!」


「フン! お前が未だに距離を詰めれば勝ち筋があると思っているのがおかしくてならないぞ!」


 ジダオはそう言うと雷のような速さで接近してきた!風の刃を放ち俺の水銀を蹴散らしながらの接近は俺の想像以上に速い。眼でとらえることはできているが、俺の守りは簡単に破られてしまった。


「風の刃、そんな魔法まで使えるのか。重量が限りなく小さいはずなのに俺の水銀の槍を押し込むほどに出力があり、しかも不可視。水銀の槍で正面を守っていなければもろに喰らっていたな」


 それも腹が立つことに、あいつは決闘の最中にまた余裕を見せつけてきた。

 ジダオの射撃能力は知っている。わざわざ刃の形にしなくても、弾丸の形状にすれば俺の槍に触れずとも当てられたはずだ。

 クソ野郎! こっちはジダオの突拍子もない動きにまだついていけてないんだぞ。


 今度は攻撃速度をさらに早めるために短剣を二本作り出す。感覚を空けず鉄の弾丸を放ちながらジダオを迎え撃つ!

 鉄の弾丸はジダオにもある程度有効なようで、一発喰らったとたんに風の弾丸で阻止してきた。ジダオも俺との力量差を測りかねているらしい。


 俺の短剣が届く一歩手前で飛び上がり宙を踏みしめる。

 ジダオの近接攻撃は今まで牙と後ろ足しか見ていないが、今回は前足を大きく振り上げ、爪での攻撃に乗り出してきた。


 俺はこれを短剣をクロスして受け止める。ジダオは上段。それも空中だ。少し滑らせればジダオは簡単に俺に近づいてくる。

 そのまま連撃をかましてくるが、タングステンの鎧を信じてこれを受け止める。


「それは悪手だぞチャンクー! お前もそれを避けていたはずだ! 放電!」


 ジダオはその身から電光のように雷撃を放つ。新しい魔法か。


「ぐぐおおおおおお!!!!」


 タングステンの鎧を伝って電流が俺の身に流れ込んでくる。凄まじい痛みと、それ以外に身体が分離してしまうような感覚。


 だが、これを受け切るために喰らったんだ! 絶対の防御力は、電流なんかで沈まない。


 体内を地の自然力が循環していく。対外には放出せず、しかし確実に身体に影響を与える。俺の身体は地の自然力に満たされていき、電流は緩和されていった。


「ぐぐぐフフフ、ハハハハ!  やったぞ! この土壇場で完成させて見せた! お前を完封するための魔法! 体内に地属性を宿らせる魔法、地戴だ!」


 地の自然力が体内に宿り、通常の電流が地面に吸われて消えるように、俺の体内をめぐっていた電流はかき消される。


「厄介な! 電撃系の魔法を完封する魔法か!」


「これでお前は手詰まりだな。電撃は俺に通用せず、氷弾はタングステン鎧で防げる。あとはお前の近接攻撃力だが、この鎧を破壊することができるのか?」


 俺はついに完全な防御力を手に入れた。俺の唯一の弱点、鎧を超えての攻撃を防げるのなら、蝗魔王ワンの拳すら防いだこのタングステンに敵はいない!


「たしかにお前の防御力はほぼ完成されていて隙と呼べるものはない。それに体術も俺を上回っている。水銀の槍で手数も多く、幅の広い攻撃方法は指先を巧みに動かすことのできない俺には致命的。攻撃力以外に勝ち筋はないだろう」


「そうだとも、だからお前は手詰まりなのだ。頼みの綱である攻撃力を封じたのだからな!」


「フン、お前は油断が多すぎる。俺がこの三日間なにもせずにいたと思っているのか? どれだけ俺が軍人相手に体術の訓練をしたと思っている!」


 どうやらまだジダオには策があるらしい。ジダオ相手に油断は確かにまずい。空歩のような、常識を大きく覆す魔法を持っていてもおかしくはない。


 一体どんな隠し技を持っているというのか。

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