第百七話
おひさ~でござる。ゴミカスファッキンウィークも終わり、テストも終わり、今日からまた執筆再開していくんでよろしく!(パラちきに関しては落としてないから関係ない
目の前にはおびただしい数の巨人軍。特に名称もなければ、身体の大きさも違う。目の形や腕の本数、角の有無に至るまで、およそ共通していると呼べるものは無いかのように思える彼らは、しかし確かな団結力と統率力を持っていた。
対する俺たちは、ほとんどがロシア軍で構成されたメンバー。戦車を中心とし、機動力に優れた装甲車、移動式迫撃砲などを用意し、パワーで人間をはるかに凌ぐ巨人族を相手するのに万全の態勢を築いてきた。
「……よし、そろそろ良いだろう。戦車部隊は一時停車。その場から砲撃指示を待て。装甲車部隊はさらに前進。その機動力を活かし、巨人どもの攻撃を攪乱せよ。……そして俺たちは、このまま敵本陣へ突撃だ!」
通信機越しに命令を放つ。今回の作戦は至って単純。迫りくる巨人族の軍勢を、真正面から迎え撃ち皆殺しにする。例外はない。研究的価値のある巨人であっても容赦なく殺すし、恐らくここに潜伏しているであろう大将も有無を言わさず滅殺する。
これは上層部からの命令でもあるし、個人的にも皆殺しにするべきだと思うのだ。
もしも敵の大将が俺の予想通りであるならば、これ以上の被害を出す前に殺さなければならない。人間の裁量で管理しきれる存在ではないのだ。
「チャンクーさん、今回は好きなだけ暴れても良いんですよね。どれだけラズルシェーニェをぶん回しても良いっスよね! ここには破壊して困るようなものは無いし、流れ弾を喰らうような一般市民も住んでない。なら、自分の独壇場じゃないっスか!」
「まあ、確かに草原フィールドはお前の得意分野かもしれない。パワーと継戦能力がモノをいう戦いになるからな。だけど、あまり深追いしすぎるなよ。お前は重要な戦力なんだから、こんなところで死なれちゃ困る。それと、今回ドラコイェストは……」
「装甲車部隊と合流して敵の攪乱、ですよね。分かっています。私はソンダビットほど戦闘狂でもないので、深追いも絶対しません。何より自分の命が大切ですから。危ない状況になったらすぐ逃げますよ」
本当に、ドラコイェストはしっかりしている。ソンダビットとは大違いだ。
彼女は引き際もちゃんと心得ているし、ぴったり付きっきりでなくても問題はないだろう。むしろ、俺が目を光らせておかなければならないのは、この大男の方である。
「まあそう心配しなくても、ドラコがヘマやらかすなんてありえないっスよ。それに、ドライブバイの技術も相当なもんですよ。どうやってんのかは分かんないっスけど、ドラコは運転しながらバトルライフルを撒き散らしますからね」
う、運転しながらバトルライフル!? 意味が分からん。それは、片手でハンドルを操作しながら、もう片方の手で反動の大きいバトルライフルを制御しきるという意味だろうか。もしそうだとするのなら、それはもう変態の領域だ。
「ソンダビットには前に説明したでしょ。本当に私の話を聞いていないのよね。……イズナーさんに頼んで、ドライブバイ専用のバトルライフルを製造してもらったんです。グリップの部分にコントローラーが付いていて、銃を持ちながら車両を操作できるんですよ。まあ、本部にバレたら結構な大ごとなんですけど」
……な、なるほど。つまり最初からハンドルなど握るつもりはなかったのか。
だが、それは大丈夫なのか? コントローラーで制御できる車両など勝手に作ってしまって、法律に引っかかったりはしないのだろうか。俺には良くわからないが。
「っと、そんなことはどうでも良い。結局のところ、戦闘に役立てば何でも良いからな。俺とソンダビットはここで降りる。ドラコイェストは後続の装甲車両と合流し、手筈通りに動いてくれ。……それでは、互いの健闘を祈る!」
「そちらも、くれぐれもご注意を!」
巨人族の群れと距離が近づいたところで、俺とソンダビットは一足早く車両を降りる。身体強化を駆使すれば、時速数十キロで走行中の車両から飛び降りたところで、何も問題はないのだ。
その後、俺たちを降ろした装甲車は後続と合流し、巨人族へと突撃していった。早くも、ドラコイェストの運転する車両から銃弾が叩き込まれているのが見えた。他の車両からも弾丸が撃ちだされ、巨人たちは駆けまわる装甲車に夢中になっている。
彼らを先に向かわせたのは、ちゃんと理由がある。初手を俺たちが担ってしまうと、攻撃力の高さのあまり目立ちすぎるのだ。それでは、装甲車両の攪乱作戦がうまく機能しない。今回の作戦において、敵のヘイト管理は最重要事項である。
部隊の安全と迅速な敵の殲滅。その二つを両立するには、これ以外の方法が思い浮かばなかった。戦車部隊を効率よく扱うのなら、適切に相手の動きをコントロールする必要があったのだ。
「さあ、少し出遅れたが、今度は俺たちの番だ。ソンダビット、派手に暴れまわれ。ここはお前の独壇場だ!」
「ウッス!」
突撃していった装甲車の後に続き、俺とソンダビットは走りだす。最新の技術を使えば、ソンダビットでも車両と変わらない速度を出すことができるのだ。それは、人間の限界値を優に突破していた。
馬よりも速く草原を駆け、巨人の元まで辿り着くソンダビット。
巨人はその体格差を活かして掴みかかろうとするが、そんなもの彼は意にも解さなかった。
走る勢いをそのままに、抜き放ったラズルシェーニェで巨人の腕を切断しつつ、敵の懐まで潜り込む。
腕を切断された巨人はこれに対応することができず、その刃を受け入れることしか許されはしなかった。
ソンダビットの攻撃は無慈悲で豪快。左に右にとラズルシェーニェを振るい、まるでダルマ落としでもするかのように巨人の身長を縮めていく。
そしてついには頭部だけになり、身体の捻りを利用して一閃。高い生命力を持つ巨人族を、ものの数秒で殺して見せた。
「いや~、普段はロシアの森林で戦ってますから、木に登ればド頭から真っ二つにするのも簡単だったんですけどね。ここじゃそうもいかない。頭を切るのも一苦労っス」
そうか? 彼の身体能力があれば、巨人の頭部まで跳躍し切断することくらい簡単なはずだ。それが出来るように、俺が鍛え上げたんだからな。
だが、まあアレの方が簡単だというのなら、それでも構わないか。
ソンダビットに続き、俺も巨人族と対峙する。
装甲車に攪乱されていたが、ソンダビットの実力を見て何体かは俺たちの方へ注意を向けていた。やはり賢い者も中に入るようだ。
しかしまぁ、いくら知能があろうとも、所詮は雑多な巨人族。名前も持たない不完全な連中だ。中国の本物の巨人族というのは、この程度の雑魚では決してない。だからこそ、彼の誇りにかけて、こんな連中に時間をかけてはいられないのだ。
「巨人相手に磁力式破砕鎚は悪手だな。いちいち飛び上がるのも面倒だ。ここは……爆裂金剛杵! 先端を当てるだけで爆発するこの武器なら、効率よく巨人族を葬れる」
取り出したるは、これまたビクトリア決戦で猛威を振るった爆裂金剛杵。
人間でも用意に取り扱うことができ、先端に対象を叩きつけるだけで爆発を引き起こす。本体もそれなりの攻撃力を持っているし、図体のデカい巨人には最適の武器と言える。
ソンダビットのラズルシェーニェがよほど恐ろしかったのか、10m近くも体格差があるというのに、巨人族は俺に掴みかかろうとはしてこなかった。
それどころか、爆裂金剛杵の間合いに入らないよう、どうにか遠距離から攻撃しようと試みている。
……だがな、そんな探り探りの動きで、俺に付いてこれると思ったら大間違いだ。
確かに、戦闘中に思慮を巡らせるのは大切なこと。しかしそれは、戦闘という激しい動きを緩めながら行うものでは断じてない。戦闘中の思考とはすなわち、身体と脳を別々に動かすことだ。
「その程度の動きで、我が最強のライバルの死を汚すのか! 紛い物連中が、目にもの見せてくれるわ!」
ただがむしゃらに突き進み、爆裂金剛杵の一撃をお見舞いする。
それだけで巨人族の膝は砕け散り、太ももまでが大爆発。俺に頭を垂れる形で跪いた。すかさず、巨人の頭部へ金剛杵を再度叩きつける。
この間、わずか0.5秒の出来事であった。探り探り俺の動きを見極めようとしていた巨人族が、その身体能力の差に絶望するのには、充分な時間であっただろう。