第5話:驚愕
Side:マーサムエ
「ん?どうしたんだゲンさん??」
「ぁあ、グス、な、何でもねぇよ!目にゴミが入っちまっただけだ」
そう答えたが、あの当時の事を思い出し、ついつい潤んでしまったのである。
あのあと急いで顔を拭き、身支度を整え、詰所に向かった。直ぐに奥に通され、震える手で己が打った剣を確認し、また泣いてしまった。
そのあと是非ともこの剣と、憎き盗賊のクビを持ち込んでくれた御仁にご挨拶を伺いたいと申し出たのである。
案内された部屋に佇んでいたのは一人の青年?であった。第一印象は黒目黒髪の筋骨隆々の大男で、目は鷹のように眼光鋭いが、決して悪い人じゃないと思えた。
「あ、あの、俺・・いや、私は鍛冶屋を営んでいたマーサムエと申します。この度、弟子の無念を晴らして頂いて誠にありがとうございます。また、私が打った拙い剣をも持ち込んで頂き、感謝のしようがありません。本当にありがとうございます。この御恩は決して忘れません。私どもで何かお力になれる事がおありになる、どうぞ何でも仰って下さい。」
「ん・・・・剣を・・いや、ショートソードをひと振りと斧を2つばかり新調して欲しい。代金はこれで足りるだろうか?」
「いえ、お代は結構でございます。お気持ちだけで充分でございます」
「まあそう言わず、取っておいてくれ。少なければ報奨金が入った時にまとめて払うよ」
その時、"コンコン"とノックをされた。
もう良いか?っと扉の外に居た役人から、そう声を掛けられた。
仕方なく俺は退室し、弟子の元に向かった。
これからの作業予定を弟子に告げなければいけなかったからである。
「お、親方、どうでしたか?」
「ああ、若いながら立派な御方だったよ。それとショートソードひと振りと斧を2つ、新調してくれと頼まれた。代金も貰ってきたから、これで集められるだけ最高の資材を集めてくれ」
そう言って弟子に布袋を手渡した。
受け取った弟子は中を見てビックリし腰を抜かした。
な、なんと中には金貨は金貨でも、龍王金貨が入っていたのである!
金貨とは一般的に、'小金貨'、'中金貨'、'大判金貨'、'龍王金貨'とあり、金貨の中で最も最上級の物が龍王金貨なのである。特に龍王金貨は普段使われないというか、一般の人間がお目にかかる機会はほぼ皆無という超レア物なのである。そんな代物が複数枚入っていた為、余りの出来事に脳が処理出来ず気を失ってしまった。
「お、おい!大丈夫か!?」
突然の弟子の奇行に驚き、何を見たのか確認する為、布袋の中を覗き込んだ。
「な、ななな・・なんじゃこりゃぁぁぁ〜」
このあと、大きな叫びに駆け付けた役人達にこっぴどく叱られたのであった。
Side:主人公///
あのあと、盗賊共が貯め込んだ金銀財宝と所持していた武具、そして偉そうだった盗賊のクビを馬車に乗せ、町に向かったのである。その町には朝を過ぎたあたりに着き、直ぐさま門番に事情を伝えたが、胡散臭そうに見られ、話もちゃんと聞いてもらえなかったので、盗賊のクビを見せた途端顎を外すほど驚き黙ってしまったのである。
やはり朝からクビを見せたのが不味ったのかもしれん・・・すまんと心の中で詫びた。
やはりこの男ズレている。クビに驚いたのではなく、そのクビが誰であったのかを認識して驚き黙ったのである。
Side:町の門番A///
今日も1日頑張るぞ〜!と意気込んでみたものの、こんな辺境の町に事件など無く、門を行き来するのは少しばかりの行商人と山に向かう者くらいである。
そんな訳で'ボーッと'していたら、馬車が近付いてくるのが分かった・・が、どうせ商人か何かであろう・・と思い込み、見向きもしなかった。
"少し尋ねる、盗賊らしき者のクビを持ってきたのだが、ここで換金を受け付けてるか?"
いつの間にか目の前にいた男から声を掛けられ、驚いた門番は"おい!ビックリするじゃねぇか!"と怒鳴ろうとして男を見たら・・あっ、これ俺終わったわ。かーちゃんと将来の嫁さんごめんよ。と短い生涯を覚悟した・・・・
まあそのあと皆、落ち着きを取り戻し青年?に謝罪し、詰所へと丁重に案内し、本部に急いで遣いを出した。待ってる間も御茶を出しっと、せっせとご機嫌伺いを行った。そうしてやっと本部の方から人が来たと思ったら、事態を重くみた本部は副総監自らやってきて、こちらもこちらで対応にてんやわんやの大慌てである。
「本当にクビはあの盗賊団の首領の物で間違いないのだな?」
「ハッ!間違いありません閣下。何度も見た手配書通りの顔でありますし、一緒に持ってきたあの剣が何よりの証拠です。一応確認の為、製作者であるマーサムエのじいさんに遣いを出しました」
「フム・・本当に本物ならば大変な事だぞ・・・・それでクビを持ち込んだものは?」
「ハッ!別室にて待機して頂いております。お会いになりますか?」
「うむ・・そうだな。会おう」
この出会いが何れ大きく重要なものとなる・・・かもしれない。