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第4話:遭遇

Side:盗賊団///




オレはお頭にこの世界に誘われ20数年、お頭と一緒に暴れてきたが、数年前の軍との小競り合いで足を負傷してから第一線を外された。

最初は不満もあったが、お頭から"余り無理はするんじゃねーぞ"と一言貰ってから門番として勤めを果たしている。

今日も今日とて見張りをしていたら、変なもんが近付きつつあるのが見えた。




「おい、何か近付いて来る人間がいるぞ!周りに人がいないか確認しろ!」



「おやっさん、他に何もいませんぜ」



「こちらも確認出来ません」



「ナニモンかまだ分からねぇんだ、弓矢は隠れて狙っておけ!他はいつでも抜けるように待機!」



「へい!×8」



そうしてとうとう顔が見えるまでの距離となった。



「体はでけぇが腰にも背にも何も得物を持っちゃいねぇな・・・舐めてるのか?」



「おやっさん、やっちまいますかぁ?」



「よし、お前ら二人で行ってヤってこい!」



「へい!×2」



体はでけぇ相手だが、特に血の気の多い二人をやったんだ・・終わったな。と思った矢先



「おっ、発見!やあやあこんにちは!調子はどゎ」



相手が何か喋っている内に斬りかかったが、いつの間にか若ぇモン二人がやられただと!?



「ど、どういうこ・・・」



それが彼の最後の言葉となった。






Side:主人公///




「いきなり斬りかかって来るし、弓でも狙ってたんだし、この結果はシカタナイヨネ!」



この男、一瞬の内に2名を刈り取った後は素早く動き、残りの6名の内4名を相手から奪った剣で一刀のもとに斬伏せ、残りの弓兵には投げナイフの要領で剣を投げつけ絶命させたのである。



「チッ、とんだ鈍らを使ってやがる。コレがこの世界での挨拶なのか?」



バカである。この男、睡眠学習で闘争による闘争ばかりこなされた結果、ちょっとアホになってしまったのである。



「この見るからに汚く汗臭い風貌はあるで盗賊だな・・・・・えっ、本当に盗賊なの?」



本物の盗賊キターーー!!!と少し感動した後、ニヤリとした。

完全にお目々がドルマークになっているのである。



「コイツ等は盗賊・・ならば賞金首の可能性もあるし、コイツ等が貯め込んだ金銀財宝を俺が退治代として頂戴しても問題無いはずだ」



"クカカカカッ"と主人公にあるまじき黒い笑みを浮かべたのである。

中に居る盗賊さん達、にげて〜と言わざるを得ない。

そしてスキップしながらルンルン気分で盗賊団のアジトに乗り込んで行ったのである。




「やあ」



「こんにちは!」



「調子どう?」



「髪切った?」



と、挨拶しながらいきなり斬りつけていくスタイルで、ものの5分で制圧完了したのである。

その所業、完全に鬼である。

まあその盗賊達の今までの所業を鑑みれば、因果応報としか言わざるを得ないが。




「う〜ん、得物類は余り良さそうな物が無いな〜。何かばっちいし。まあ財宝類はそこそこあるみたいだからいっか」



「よし。あらかた回収したし町に行こう!幸いここから余り離れていないし、移動には馬もあるし、レッツラゴー!」



と、男は鼻歌を口ずさみながら馬に乗り、パッカラパッカラと進んで行った。







そして1ヶ月後、辺境の町でのんびりと過ごす主人公がいたのである。

あれから無事に町に辿り着き、特に道中変わった事もトラブルの類いも何も無かったのである。

物語としては、それはそれでどうなんだ?と言わざるを得ないが、何も無かったので本当に仕方ない。

えっ、ヒロイン?知らない子ですね。




「やあゲンさん、例の物は出来たかい?」



因みにだか、男が声を掛けた"ゲンさん"と呼ばれた人物は本名に'ゲ'も'ン'も入っていない・・・



「あぁ?俺ぁ、ゲンさんじゃねぇって何度も言ってるだろバカ野郎!俺の名前は・・」



「分かったよ、ゲンさん。」



「・・・・・はぁ、頼まれていたもんは出来てるぜ。ほら、これだ」



受け取ったショートソードを無言でじっくりと眺めた。



「気に入らなかったか?」



じっくりと眺めていた為、何か気になる事があるのかと声を掛けられたが、ただ単に良し悪しが分からないだけである。流石に本当の事を打ち明けるのは恥ずかしいので・・



「いや、これで十分。見事な仕上がりだ」



鍛冶屋のゲンさん(仮)はその一言で涙ぐんでしまった。その腕前を褒められたからでは無い。

この男が持ち込んだ剣や武具は嘗て、弟子に持たせた大切な代物だったのである。その弟子は当時、荷を運ぶ為に馬車に乗って、オワーリの街に向かおうとしていた所を、ある盗賊団に襲われ、奪われた物なのである。ゲンさん(本名:マーサムエ)は己の腕に誇りを持っている。それ故、盗賊団の首領が良く切れる珍しい形の得物を持っている・・と風の噂で聞いた時は、愕然とし一気に老けこんでしまったのである。

その後は店を畳み、この辺境の町でひっそりと暮らしていたが、ある朝、町が騒がしいのに気がついた。

この辺境の町が騒がしいのは珍しく、何かあったのかとその時は余り気にしていなかった。

お昼にはまだ早い頃である、"ドンドン"ドンドン"と珍しい来客の知らせがあった。

何かと出てみると、この町で鍛冶屋をやっている弟子の1人であった。


"お、親方が打った剣が出てきた!そ、それも盗賊の首領のクビと一緒に!"


何と・・己が丹精込めて打った業物を奪い、あまつさえ愛弟子を殺し、結果として大切な者を2つも奪っていった憎き盗賊共の・・それも首領の首を詰所に持ち込んだ人物がいるという・・・・

それを聞いたゲンさんは最初、なんとも表現のしようのない表情を浮かべた。それは感情が追い付かない故であった。

そして・・・



「うぉぉう、う、ううぅぅ・・・・」



15年間も苦しめられ、後悔し、何度も何度も己を責め続け、死のうと考えさえした・・それが遂に解放された魂の叫びであった。


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