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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
93/140

93


「俺が援護する! お前達は距離をとれ!」

「「了解!」」


 指示を受け、坂本と吉沢は放射線状に大きく距離を置いた後、狙撃を再開。

同時に浜崎は背を屈めて、死者からの追撃を逃れる。

これなら弾も温存でき、間合いと視界も広く取れる。

見事な連係プレーに、統也は光明を見る。


(流石だ!! この勢いならいける!!)


 統也だけなら尻尾を巻いて逃げる所、隊員等の力があれば多勢となった死者を押さえ込む事が出来る。この調子で店内を一掃してしまおう。


 矢先、吉沢の真横にある店内トイレの扉が勢い良く開け放たれる。



 ドン!!



「ひぃッ、」


 まるでビックリ箱の様に現れる死者の首には清掃用のゴムホースが巻きつけられている。

どうやらトイレで首吊り自殺をした従業員の様だ。

回避する吉沢が慌てて身を裁けば、浜崎が後方より死者を狙い撃ち。

そうして一難を逃れるも、吉沢は体勢を崩し、そのまま商品棚へと倒れ込む。

ライフルで的の無い天井を撃ち上げながら、吉沢は商品棚と共に横転。



 ……ガタン!!

 ガタン!! ガタン!! ガタン!! ガタン!!



 商品棚は将棋倒し。死者に応戦する坂本の頭上を押し潰す様に傾く。


「坂本サン、危ない!!」

「!」


 陳列された商品が滝の様に流れ落ちる中を、坂本は両手で頭部を守りながらの後退。

下敷きにならない迄も、ライフルを構え直す隙を縫って、死者の手が伸びる。


「坂本サン!!」

「うっ、あぁあぁあぁ!!」


 統也は素早く銃口を向ける。

然し、狙撃練習をした事も無い統也が、坂本に掴みかかる死者との微妙な差異を撃ち分けられはしない。仕方なく、ハンドガードを両手に持ち、鈍器使用で死者に殴りかかる。


「クソッ」


 坂本から死者を払い飛ばし、ライフルを構え直す。

乱射であれば、統也でもお安い御用。だが、次の瞬間、由月の言葉が思い出される。



『彼等は まだ死んでいないわ』



 同時に、母親の頭を殴りつけた感覚も掌に蘇える。


「! ――母、サン……」



*



 統也達が店内に潜入して間も無く、由月は車内に戻らず、日夏と共に周囲の様子を見やっている。この暑い日差しの中、いつ襲われるかも分からないと言うのに、由月は無表情。

恐れも見せない振る舞いには神経を疑ってしまう。

車中で待機する仁美は、そんな由月を眺めながら運転席の岩屋に問う。


「岩屋サン、あの人、何やってんの?」


 その口調はやはり、『どうでも良いけど』が聞こえてきそうだ。

その言い草が度々 気に入らないから岩屋は眉を顰めるのだが、暇を潰す様に答える。


「何って? そりゃ分かんねぇけど、ああやって何か研究してんじゃねぇの?」

「ふーん。でも、研究って……学生なんでしょ?」

「らしいけど。それでも頭はキレるから。あの人」

「ふーん。靖田クン何か、そーとー懐いてるみたいだけど、あの2人、付き合ってんの?」

「さぁ? それはねんじゃねぇかな?」

「年は?」

「どっち?」

「取り敢えず両方」

「靖田君は16で、大川サンは20才だって話だ」

「私と同い年か……」

「えぇっ? 大川サンと同い年ぃ?」

「はぁ? それ、どうゆう意味ですか?」

「いや、意味なんてねぇけど? 平家サンってOLだったっけ?」

「そうですけど?」

「あぁ、だからか。まぁ何てぇか、大人ッポイ? って事だよ。

大川サンは……この世のものでは無い、みたいな、ちょっと浮世離れしてるからなぁ。

年齢不詳だ」

「それは言えてる」

「でも、ヒーローと天才が揃う何て、ある意味無敵か知れねぇな!」


 そうこう2人が話している間に、店内から響く発砲音。


「な、何!?」

「始まったって事だろ、この音は……」




*

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