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ジープの助手席に乗る日夏の携帯電話がメールを受信する。
「あ。統也サンからだ!」
メール本文【平家サン合流】のメッセージに、日夏は笑みを深める。
「由月サン、吉沢サン、平家サンも合流したそうですよ!
これで8人ですね! 心強いです!」
後部座席で揺られながらノートパソコンのキーボードを叩く由月は、顔を上げるでも無く、日夏に問う。
「平家サンと仰るのは、どなたでしょうか?」
「平家サンは、さっき食堂で由月サンも話した女の人ですよ。
セミロングの髪で、えっと……統也サンと一緒に避難して来たました!」
「あぁ、あの方。ありがとうございます。一致しました」
「はい!」
由月の役に立てた感に、日夏は頬を赤らめ、座席に座り直す。
由月は指を止め、僅かに後ろを振り返る。
「8人――何人生きて帰れるのかしらね?」
独り言。
*
Y市の自衛隊駐屯地を出て2時間余り、時刻は13時を回る頃、K県を経由する。
「ァッ……暑いなぁ、オーイ……」
「ええ、40度以上はありそうですね……」
近頃は秋風も吹き、涼しくなって来たにも関わらず、土地ならではの気候か、この辺りはやけに蒸し暑い。
燃費を押さえる為、窓を僅かに開けるに留まっていたが、やり過ごせそうに無い。
岩屋は渋々とエアコンのスイッチを入れる。
(大川サンの調べでは、気温や天気がアイツらの行動を左右するらしい。
寿命と言う概念も併せると、この暑さじゃ腐敗も早まる筈だ。今の内に距離を稼ぐか……
それでも日没は早いだろうから、今日中にN県入りするのは諦めて、
食料調達に合わせて休憩場所を探すか……)
統也が考えを巡られている間に、先頭のセミトラックがウインカーを出す。
見晴らしの良い通り沿いにある大型スーパーの駐車場にピットインする様だ。
「調達か? 随分でかいスーパーだけど大丈夫かよぉ?
ウジャウジャいるんじゃねぇかぁ?」
岩屋は肩を竦めつつ、ウインカーレバーを倒す。
強い日差しを照り返す広い駐車場内に死者の姿は見当たらない。
車が数台停まっているばかりだが、他に人の気配は無さそうだ。
ジープに並んで停車するなり、統也はライフルを肩にかけ、2人に言う。
「岩屋サンは、」
「留守番は任せろ」
「はい。お願いします。平家サンはこのまま待機していてくださいね」
「……あぁ、うん、」
統也が車を降りると、仁美は窓ガラスにへばりついて外の様子を窺う。
車両から降りるメンバーが集まって作戦会議する中に由月の姿を見つけると、後部座席の窓を開け、6人の会話に聞き耳を立てる。
「ここで調達ですか? もう少し小さい店を狙った方が……」
大型スーパーなら従業員も多そうだ。
看板を見れば【早朝7時から営業】と言うから、異変が明るみとなった時点で少なからずの客もいただろう。それが その儘そっくり死者の数と過程すれば腰が引ける。
そんな警戒心を見せる統也に、浜崎と坂本は言う。
「この先は店も少ない。コンビニも考えたが、数が賄えるか不安だ」
「何度も足を止めて時間を無駄にしない方が良いだろう。
1度に食料補給を済ませるべきだ。その後は、進める限り進む」
速やかに任務を全うして駐屯地に帰還する事を考えれば、時間をかけ過ぎるのも考え物か、統也は躊躇いながらも頷く。
(確かに、田島の体調を思えば、のんびりしていられない……
診療所の人達だって、食糧を待ってる。……大丈夫、これまでとは違う。
この人達はプロだ。ここは一気に行くべきなんだ)
「分かりました、手伝わせてください」




