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「どうすんだよ、水原君、キミを巡って女が2人、争ってるぞ」
「岩屋サン、揶かうのはよしてください、」
「ぁ、あの! ぼ、ぼ、僕も! 由月サンが行くなら、僕も!」
「靖田君、キミまでなに言っちゃってるんだぁ?」
「はぁ!? こんなんじゃ行けないじゃん! バイクって2人乗りなんですけど!」
若者が我こそはと挙手する中、肝心の大人が引き下がっている訳にもいかない。
村岡は頷く。
「で、では、自分が行きます」
「アンタはいかんだろぉ! ここの代表なんだから!」
「し、然し、」
「村岡三等陸佐っ、自分が責任を持って任務を全うして参ります!」
「じ、自分も、皆サンのお役に立ちたいと思います!」
「……ゎ、……私も、……同行します……、」
挙手をしたのは隊員3名。
浜崎・坂本、吉沢に限っては数少ない女性隊員の1人だ。
岩屋は統也と日夏を窺う。
「3人もプロが出揃ったなら、キミらが行く必要ないだろ。足手纏いになるだけだ」
「……、」
岩屋の言葉には反論の余地も無い。
だが、隊員等としても駐屯地の医薬品は切らしたく無いのだ。統也が気負う事は無い。
然し、相手の都合に便乗する様で気が引ける。
男として、1度言った事を引っ込めるのは小狡くて気まずいのだ。
そして、理由はもう1つ。
(あの人は行くのか……)
統也は由月に目を側む。
由月は機敏だ。隊員の挙手によって統也の意志が揺らげば、即座に踵を返す。
そして、同行する3名と速やかに打ち合わせを始め、統也には目もくれない。
(バカだな、俺……手を差し出されて、少し勘違いした。
俺が行くから、あの人は着いて来るんだって……)
昨晩、由月は体を呈して田島を守った。
統也にとってこれは、とても重大な意味を持つ。
(一緒に、同じ目的を持っていられる人……)
あの瞬間、救われたのは田島だけでは無い。
統也も『自分は1人では無いのだ』と強く思えたのだ。
守るだけで無く、守られる事。この安堵感に意味を与えたい。
「俺も行きますよ。人手なら、無いよりはあった方が良いですよね?」
訓練を積んだ隊員等に比べて頼りなくとも、物資調達に必要な頭数を埋める事は出来る。
統也が4人の輪に足を向ければ、日夏もソロソロと着いて行く。
性懲りも無い2人に、岩屋は呆れ返って口を開ける。
「うわぁ、これだからユトリはぁ……」
流れに置き去りにされたのは岩屋だけでは無い。
ジレンマに舌打ちする仁美を見下し、岩屋は気の抜けた一息を零す。
「はぁ……平家サン、キミは行かないんだ?」
「まぁ。行って役に立てるとは思えないんで」
「だよなぁ……あぁ、でもなぁ……うーん、うーん……俺は行くかなぁ」
「はぁ?」
「死体の始末、やっぱぁやりたくねぇわぁ」
「……」
役に立つ・立たないの前に、消去法。
それが岩屋の思考回路。
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