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「た、確かに自分ですが……」
「それじゃぁ村岡サンにお願いしよう。皆サン、それで良いですかね?」
「頼みましたよ、村岡サン! アナタにかかってるんですから!」
「ちゃんと指示してくれなきゃ、オレ達はどうすりゃイイのか分からねぇぞ!」
「ぁ……は、はぁ、解かりました、尽力します……」
押し切られる形で、村岡がこの駐屯地の新たな代表となる。
ともなれば早速、陣頭指揮を取らねばなるまい。
騒ぎが収まったとは言え、外の状況は目にするも無残。
木下の死体と、正門前には死者の躯が山積している。
悪臭や感染病も予想される事から、後始末と消毒作業を万全に済ませなくてはならない。
(松尾サンは田島の隣で眠っている。
このままじゃ点滴が足らないと、看護師の清水サンが言っていた。
今後も、タイムラグの影響は無視できない。
ここの安全面や物資にしたって、今の状態じゃ不充分だ……)
自衛隊員は15名、一般避難者は28名、内2名は眠りについている。
この人数での避難生活を維持するには、危険を伴う行動に出なくてはならない。
統也はソロリ、と手を上げる。
「あの、今日は他の避難地に物資を分けて貰いに行くと、そんな話を聞いたんですが……」
こんな話は初耳だ。一同はざわめく。
「な、何だってぇ!? 他に避難所があるんかいなぁ!?」
「そんな大事な話、私達は聞いてませんよ!? どうゆう事です!?」
余計な事を行ってしまっただろうか、
避難者全員の視線の集中砲火に隊員等は後ずさり、代表に選ばれたばかりの村岡が慌てて答える。
「み、皆サン、ご静粛にっ、話は今お聞きの通りで……えぇ、連絡が取れたのはN県の、」
「N県!? 随分遠いじゃねぇか!」
「どうやって連絡を取ったんです!? まさか、この避難所の場所を公開したんですか!?」
「そんな事して、発狂者ってのは大丈夫なんだろうな!?」
「そうゆう事は我々にも相談してくれなけりゃ困るぞ!」
昨夜の一件で、隊員等への信頼は傾いている。
村岡が話していると言うのに、一同の騒ぎは収まらない。
「順にご説明しますのでっ、昨日、隊員の関係者からの一報が届きました!
身元はハッキリしていますので、ご安心を!」
「向こうは何人いるんです!?」
「10名程が村の診療所に避難しているとの事、そこには医薬品などの設備も充実しており、
我々は今日にでも出発し、食料供給に向かうと共に、場合によっては避難者の搬送を、」
「えぇ!? 食料!? ちょと待ってくれ! ここのを分ける気か!?」
「こっちにゃ何人いると思ってんだ!? それで無くてもギリギリだってのに!」
「問題ありません! 食料は道中にて収集、輸送します!」
「それじゃぁ、こっちの食料はどうするつもりだよ!?」
「他所の分まで面倒見てる余裕が何処にあるんだ!!」
「ここの分は、N県からの帰路にて補給して来ますのでっ、」
「避難者の搬送って、向こうの人をこっちに連れて来るって事!?」
「それは、希望者があればと……」
「いやいや! ここは死体の山だ! どうせなら全員でN県に移動した方がイイ!」
「そうね! こんな所、とてもいられないわ! きっとまたゾンビが襲いに来るわよ!」
1度襲撃された場所を安全だとは思えない。一同は揃って頷き合う。
然し、この駐屯地の総勢を村の診療所が収容できるのか、喚く避難者達を前に、隊員等は頭を抱える。
「皆サン、ここは安全です! 昨晩のような事は起こりません!」
「そんなの分からないでしょ!? アナタ達の所為でゾンビが集まって来たんだから!」
「そうだ! それに、N県に行ってる間、ここはどうするつもりだ!?」
「アンタ達がいないんじゃ、警備も手薄になっちまうだろ!」
「まさか、民間人の俺達に銃を持って戦えってのか!?」
「ム、ムリよぉそんなのぉ、銃なんか撃った事ないのにぃ……」
「だから! 皆でここを出れば良いんだ! なぁ、そうしよう!」




