表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックビート  作者: 坂戸樹水
80/140

80


 食事を済ませ、岩屋達と共に部屋へと向かう途中、統也の目に松尾の姿が映る。

玄関前で木下からの現状報告を聞いている様だが、これはチャンスだ。



「松尾将補!」



 松尾が振り返って間も無く、統也は駆け込む。



「田島に、田島に会わせてください!!」



 由月は田島の死を予感するからこそ、あんな縁起でもない事を言ったに違いない。

ならば、容体を確認せずにはいられない統也の嘆願に、松尾は口調を穏やかに言う。


「あぁ、キミは確かぁ……田島君の友人だったね?

大丈夫だ、彼は我々が責任を持って治療に当たっている。

それに、今さっき他県にも生存者が集う避難所があると確認された。

そこに幾らかの医療物資もあるそうだから、明日にでも行って」

「それは本当に良かったです!

でも、田島が本当に無事でいるのか確認したいんです!

勿論、皆サンを疑っているわけじゃなく、友人として!」


 感情的に訴える行為が幼稚である事は解かっていても、一切の面会を許可されない事には疑念を抱いてしまうのだ。統也のこの剣幕に、松尾は一息を落とす。


「――そうだな。会わせないと言うのも誤解を生む。着たまえ、彼の所に案内するから」

「ありがとうございます!!」


 統也の粘り勝ち。

これに便乗する岩屋・日夏・仁美も、統也の後に続く。



*



 駐屯地内でも隅に設けられた医務室前は、見張りまで立てる厳重さに一同は固唾を飲む。

室内にはストレッチャーに寝かされ、ベルトで固定された田島がいる。

統也は田島に駆け寄ると、憂惧に松尾を振り返る。


「な、何で こんな拘束を……」

「いつ命を落とすか分からない。

蘇える事にでもなれば、ここの者達を危険にさらす事になる。理解してくれたまえ」

「……田島、」


 田島は当初に比べて肌の色も土色に変色し、随分と痩せ細っている。

腕に刺さった1本の点滴針が心許なく命を支え、心電図が鼓動を伝えるばかりだ。


「彼のこんな姿を見せては、キミ達もショックだろうと思ったのだがね」

「……明日には、もう少し良い環境になるんですよね? ここは、」

「幾ばくかは。医師がいる訳では無いから、過度な期待はせんでくれよ?」


 由月の仮説を信じるとすれば、医者がいた所で改善に繋がったかは分からない。

地球が気まぐれを起こして、明日には元通りの心音に戻ってくれれば話は別だが。


(この人達は何処まで知っているんだ? 大川由月の仮説を聞いているのか?)


「……大川サンは、田島の治療に当たっているんですか?」

「いいや。彼女には死者と眠る者についての調査をさせている。

だが、情報が少ない今は何とも言えんとね。もう少し期待していたのだが……

あぁいや、彼女もここへ来て間も無い。

発狂者についての調べも進めて貰っているから、手が混んでいるのだろう。

時機に仮説の1つくらいは持って来るだろうから、キミ達も何か気づいた事があったら

協力してやってくれたまえ」


 松尾の言葉に嘘は無さそうだ。だからこそ、合点がいかない。


(何故だ……

俺にはあれだけの事を言ったのに、肝心の人達には何も言っていない?

信用してないって事か? ここの人達を……)


 松尾は出入口のドアを開ける。


「さぁ、もう良いだろう。

引き続き彼の事は我々が監視するから安心したまえ」


 治療でも無ければ看病でも無い『監視』の言葉に、一同は顔を見合わせる。



(田島が危険な存在だと分かったら、この人達は田島を善処する……

田島が殺される……)





*

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ