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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
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 人間は狩猟民族だ。武器を作り、攻撃し、命を狩る。

その原始の時代を超えても、主張や宗教の違いで多くの血を流して来た種族でもある。

他の動物には見られない行為だ。

これが人間の持って生まれた性であるなら、統也の父親や雅之は起源の意識を取り戻したと言える。


 最も、由月の主張には明確な裏づけが無い。

だが、専門家なりに根拠を持って分析し、真実に近づこうとしている。

その賢明さを統也が疑う事は無い。言葉を失う統也に、由月は続ける。


「6日前のあの日、あの時間、地球の心音は全てのボーダーラインを超えた。

それによって世界は急変し、誰の目から見ても明らかな変化が現れた。

今更この現象を止める事は出来ないわ」

「そんな簡単に割り切れませんよっ、俺達に抵抗する術は無いんですか!?」

「どうかしらね? 今 分かっている以上の影響が見られる可能性も無いとは言えない」

「これ以上の変化なんて冗談じゃ無い!

アイツらにしろ、死んだって生き返って襲って来るっ……

これも影響の一部だって言うなら、手も足も出ないじゃないですかっ、」


「彼等はまだ死んでいないわ」


「ぇ?」


 由月の言葉に統也は目を見開き、息を飲む。



「――死んで、ない?」



 脳裏に蘇えるのは、食欲の儘に襲いかかって来る母親の姿。

顔の半分を食い千切られ、見るも無残な母親が、あの時にはまだ生きていたと言うなら、統也の恐慌は言い知れない。



(母サンは生きていた?

死んで蘇えって来たんじゃなく、ただ生きて……?)



 統也の体がガタガタと震え出す。

由月はそれを一瞥で確認すると、話を続ける。


「誤解しないで。“厳密に言う”と、と言う話よ」

「でも、ぃ、生きて……だから、死んでなかった、って……」

「厳密に。状況にもよるけれど、肉体の死と脳の死は速度が異なるのよ」

「何ですか、それ……」

「医学的な死は確かよ。けれど、脳科学的には違う。

脳の一部は肉体の死後一定時間、僅かであっても活動し続ける。

睡眠時と同じデルタ波も観測されている。

その間、地球の心音をダイレクトに受け取り、蘇えりと言う生態に変化するのだと……

勿論、これも私の推測に過ぎないけど」


 由月の主張を引いて説けば、肉体と言う機能を失う事で脳は丸腰になるのだ。

直接的に不協和音を受け、霊性を呼び覚まし、そして、蘇える。



「最後に残る脳機能の一部と言うのが、食欲。だから彼等は貪る」



 敵は死者でも発狂者でも無い。原発は地球そのもの。

最も、諸悪は自然破壊に温暖化を招いた人間だと言うから堂々巡り。

解決の糸口が見つからない。


「私の話を聞いて、信じるか、どう捉えるかはアナタの自由よ。

それよりも、アナタはどう生きたいと思っているの?」


「!」


既に見失いかけている命題に、統也は頭を振って項垂れる。


(どう生きたいか何て、そんなの分からない……ただ、こうなる前に戻りたい!

皆が当たり前にいた時に戻りたい! それだけだ!!)


 願っても過去に戻れない事は解かっているが、今を生きる事が精一杯すぎて、それ以上の希望が持てない。そんな統也の苦しみは空気を伝う様だ。

由月は目を細め、固く握られた統也の拳に手を添える。



「ぉ、大川サン……?」


「今、アナタを頼る者が生きている。

アナタが守りたいと思っている者が生きている。

それだけで、アナタは前を見なくてはならない。どんなに辛くても」



 由月の言葉に誘われる様に思い出すのが、岩屋や日夏、仁美だ。

そして、目覚めを願っている田島もいる。



(どんなに辛くても……それが、俺の生きる理由……)




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