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遠巻きに様子を見守っていた田島は、恐る恐る統也に近づく。
「もぉイイよ、統也、行こうってっ、どっか隠れて助けに来て貰おうぜ!
こんなトコいたら、化けモンに見つかっちまうよぉ!」
田島の涙ぐんだ声に、統也は溜息をつく様に頷く。
寝倒れてしまった人達を放置するのは心許ないが、そばにいて何をしてやれるでも無い。
後ろ髪を引かれる思いで統也は踵を返す。
屋内施設場の出入り口のドアは思った通り開放されているが、案の定か、静まり返っている。
嫌な予感しかしない。
2人は耳を欹て、忍者の様に足音を忍ばせて中の様子を窺うと、受け付け通路の前に倒れた、2名の警備員を発見する。出血が無い所を見ると、眠っているのだろう。
「と、統也、どど、ど、どうすんだよっ、ココ、安全なのかっ?」
「外より安全だと思うけど……」
統也は警備員の腰ベルトに引っかかっている鍵の束を手に入れる。
「ぉ、お前、何やってんだよ!?」
「入り口、開けっ放しにしといたらヤツらが入って来るかも知れない。
一応、閉めた方が良いって思ったんだけど、やめた方が良いかな?」
「ぁ、あぁ、そっか! お前、頭イイな!」
【正面】と名札がぶら下がった鍵が出入り口用。
施錠を完了させ、田島はホッと肩の力を抜くが、統也は落ち着き無く周囲を見回す。
「他に誰かいるかも知れないし、見回っとくべきなのかな?」
「えぇ!?」
考えてもみればだ、同じ様な発想で ここに逃げ込んだ避難者がいるかも知れない。
それなら協力し合えば良いが、既に死者が潜んでいると言う最悪のケースが無いとも言えない。
そんな恐ろしい想像をサラっと言ってしまう統也に、田島は震え上がって後ずさる。
「ドア開けてくれよ! ここに化けモンがいたらm逃げられなくなるじゃんか!」
「でも、外のが入って来て数増やすよりは良いかって思ったんだけど……」
「お前、冷静すぎんだよ! 怖い事ばっか言うなよ!!」
「ぉ、俺だって怖いよ、バカ!
でも、田島がそんなんじゃ、俺が冷静でいなきゃ駄目じゃんか!」
頼り甲斐の無い友人を叱咤しても仕方が無い。
警備室を兼ねた利用者受け付け窓口の隣には、施設内の地図が表示されている。
それによると、出入り口の真正面にある1階体育館は卓球とバトミントン会場。
2階は障がい者が利用できる無料リハビリセンターとして開放されている様だ。
3階は各種会議室が6室。廊下の左右にあるエレベーターと階段を見やるも ひと気は無い。
(映画とかって、頭の弱い勇者気取りのヤツが驚く程あっさり殺されるんだよな……)
あくまで勇者気取り。臆病者だからこそ、ここまで逃げられたに過ぎない。
何が起こるか分からないのだから、闇雲に動き回るのは危険だ。
一刻も早く安全を確保する事を優先すべきか知れない。
「よしっ、警備室で作戦会議しよう」
警備員は警備室を施錠する間も無く昏倒してしまったらしく、ドアノブを捻れば難なく開錠。
「だ、誰もいませんよね?」
……
……
「ょ、良し、いないな!」
先客無し。
指さし確認しながら安全を自分達に言い聞かせ、素早く入室。
警備室は3畳程の小スペース。
受け付け兼用だけあって入り口から丸見えだが、窓を締めてカーテンで目隠ししてしまえば気にならない。
何より有り難いのは、施設内の様子を映す監視カメラのモニターが付いている事。
映像は白黒で不鮮明だが、各階層の状況を確認するには充分な設備だ。
これには2人揃って肩の力を抜く。
「やった、見に行かないで済んだ……」
監視映像に点々と見られる利用者は、全員が昏倒。一同に眠っている様だ。
幸いな事に、徘徊する死者の姿は無い。




