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バイクに給油する統也は、思わず声を上げる。
「あ!」
これに肩を震わせる仁美は、素早く統也に引っつき、周囲を警戒する。
「で、出たッ?」
「平家サンっ、コレ、コレ見てください!」
統也は携帯電話の画面を仁美に見せる。
そこには【自然環境研究所】と題されたページが表示され、更新履歴に今日の日付が記されている。
「何コレ?」
「更新されてるんですっ、生きてるんだ、大川由月は!」
「誰?」
「このページを作った人です!」
更新されたページを開くとそこには、驚くべきタイトルが打たれ、2人は息を飲む。
「蘇えりの生態系……だって?」
「蘇えりって、ゾンビの事だよね?」
「そうだと思います」
現象の発端から始まり、死者達に対する情報が開示されている。
一刻も早く読みたいが、ここでは死者に襲撃されかねない。
給油を済ませ、高速道路上にある非常階段の看板を見つけ、開閉式の遮音壁扉の前にバイクを止める。
扉を開け、折りたたみ式の梯子を引き出し、高欄壁に上って扉を閉めてしまえば一時的な砦として機能する。
こうして度々休憩を取っていた2人だから、今となってはお手の物。
腰を据え、早速、更新されたページを読み進めるとしよう。
2人は顔を見合わせ、コクリと頷く。
《蘇えりの生態系 ――死者の観測をして五日ばかりだが、判明した限りを記す》
《彼等は死によって脳機能の殆どを消失している。
生前の記憶は無く、意思疎通する様子も見られない。
唯一残る原始的行為=【食べる事】を最後の機能を主とする存在だ。
無論、空腹があっての事では無い。満腹感も無い為、無尽蔵に貪る。
食料とするのは主に生きた人間。
肉の柔らかい腹部・大腿部、又、血が多く流れる首筋を好むようだ》
《3日目、食料を失った彼等は相手を問わず攻撃し、共食いを始める。
又、損傷した肉体は自己修復する事無く、痛覚も存在しない。
肉体が部品となった状態では大半の機能を失うが、頭部だけは活動し続ける。
やはり、司令塔である脳を破壊しなければ、存在を停止させる事は出来ない》
「な、何これ……グロすぎるんですけど……頭だけは動くって、最悪」
「ぇ、えぇ……でも、アイツらは手や足だけじゃ動けないって事ですよね?」
「これ書いた人、ヤバくない? ソンビの観察なんって、どうやってやってんの……?」
《仮説の域を出ないが、彼等には寿命が存在する。それは肉体が滅びる事で訪れる》
「寿命……」
「死んでんのに寿命とかあんの?」
《肉体が再生しない以上、彼等は腐り続ける。自然と土に還るのだ。
その期間には個体差があり、損傷具合に大きく左右される。
最も早いケースで2日。多くは5日に至る現在でも活動し続けている。
そして、天候により、ある種の行動が制限される事も幾つか確認される》
「行動の制限って、すごいぞ、これ……」
《単純に、気温が上昇する事により肉体の腐敗は早まる。
無意識による延命か、活動期間を延ばす為、日差しを避ける者もいる。
雨天時にも同様の反応が見られた。
肉体の腐敗が進むにつれても活動が制限されると仮定できるだろう。
屋内への避難は これ等を考慮に入れる事を推奨する》
《例外とするのは、肉体損傷レベルが低い、
もしくは、地球の影響に対する適正や耐性を持った蘇えりだ。
このタイプの多くは嗅覚にも優れ、他の蘇えりよりも強い力を保持している。
動きも通常の物に比べ俊敏である。三体程が金網の囲いを破り、脱出にも成功している。
内1体についてはフェンスをよじ登る行為を取った。
知能レベルにも個体差が見られるようだ》
「嘘、ヤバイよ、これ……ゾンビって頭使えるの?」
「そうゆうタイプもいるようですね、」




