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道路沿いにある小さなサービスエリアは、軽食屋とトイレが一箇所のみのシンプル設計。
ツーリングやら旅行と言うなら大型の物を選ぶのも良いが、今はこの状況だ。
ひと気を避ける事が死者との遭遇を減らすコツ。
「ねぇ、統也クンって、どうゆう育ちしてんの?」
「ぇ、えぇ?」
このサバイバル生活にもだいぶ馴染んだ統也だが、落ち着かない様子で視線を漂わせて突っ立っている。その場所、女子トイレ。
「ねぇ、聞いてるのかって」
「は、はい、聞いてます! そ、育ち、ですか?」
トイレに入っているのは仁美だ。どんな状況でも生理現象までは抑えられない。
いつ死者が現れるか分からない事もあり、女子トイレの前に統也を待たせている。
女子のトイレに付き合うなぞ、本来なら有り得ない事だ。
「えっとぉ……別に、普通ですよ?」
「社長にさぁ……あぁ、えっと……まぁイイか、別に……
厳しく育てられたとか? 何かの訓練とかさせられた?」
父親の話題は禁句と思っていた仁美だが、うっかり口が滑ってしまった。
反省するも、それもまた仕方ないと諦め、質問を続ける根性がふてぶてしい。
だが、オフィスに現れた時も然り、雅之との出来事も然り、統也の無謀とも言える勇敢さに、仁美は度々驚かされている。
ただの高校生にあれだけの立ち回りが出来るとは思いもしないから、特殊な訓練でもして来たのかと想像してしまう。
「多少は、まぁ……しっかりしろ、みたいな事は言われて来ましたけど、」
言い終わらぬ間に、左右の茂みから死者がゾロリ……と現れる。
どうやら2人の気配を嗅ぎつけ、何処からかやって来たのだろう。強い悪臭だ。
暑い日差しに腐り出した肉体の損傷は激しく、生前の面立ちは一切残っていない。
カクカクと顎を動かし、飽く事の無い食欲を見せる。
(挟まれたか……)
数にして5体。
こんな状況を知れば、仁美は卒倒してしまうだろう。
統也は死者等に向き直ると茂みの奥へと蹴り押して、ライフルの銃床で頭部を砕く。
ガツン!! ガツン!!
「ねぇ、何か音しない?」
ガツン!!
「えっ? 音って? 何も聞こえませんけどっ?」
ガツン!!
「そぉ? ってか、ねぇ! ちゃんと見張りしてんでしょうねっ?」
「勿論してますよっ、って……
あぁ、えっと、育ちでしたね、訓練ってっ……それは流石に無いですよ!」
「そ」
「何でですっ?」
「別に。何となくね」
ガツン!!
そして、ジャーッと水が流れる音。
全てを片付け、統也が一息をつく頃、仁美はトイレから出て来る。
仁美は怪訝した様子で左右を見やる。
奇妙な音はしたが気の所為だったと納得すると、次には眉間に皺を寄せて言うのだ。
「……耳、塞いでたよね?」
「ぇ?」
「女子がトイレ入ってんだから、フツー耳塞ぐでしょッ?」
「そ、そんな無茶な……」
死者に気を配らなければならないは、仁美の話し相手にならなければならないは、耳を塞いでいられる筈が無い。
統也が表情を困らせると、仁美はフン! と鼻を鳴らして顔を背ける。
「もぉイイけど! ホラ、行くよ!」
「は、はいっ、」
仁美の相手は難しい。
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