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「ひ、ひと気が無いトコ、何でわざわざ選ぶんだよぉ!
大通りの商店街に出て、適当に逃げ込んだ方が絶対イイに決まってるってぇ!」
「今が校内だけの出来事か何て分からないだろ!」
「そ、外にもアイツらみたいなのがいるってのかよ!?」
「分からない……分からないけど、」
(同じ事がここ以外でも起こってるとすれば、繋がらない電話の理由にもなるんだ!)
「一端 身を隠して、落ち着いて考えて……
それからじゃなきゃ、怖くて街なんか見られないだろ!!」
今、卒倒せずにいられる事が自分でも不思議でならない。
それ程、統也の頭の中は混乱し、逆に冴え渡っている。
このまま終わる訳にはいかない、その一心だ。
拙い足取りの死者達が行く手を阻む度、息を止めて鞄で薙ぎ倒し、学校と外とを仕切る体育館裏のフェンスに飛びつく。
「うぅぅ……足が上手く動かねぇよ、スゲェ眠いし、最悪だっ、うぅぅ」
「田島、しっかりしろ! 俺だって泣きたいよッ、バカ!!」
こんな一大事に、眠いだのとは良く言えたものだ。
統也はフェンスの上から隣の駐車場に飛び降り、モタモタとよじ登る田島を叱責。
手を貸して田島を引き摺り下ろすなり、遅ればせながらにやって来た死者達が網戸に集る虫の様にフェンスにへばりつく。
ガシャン、ガシャン、ガシャン!
ガシャンガシャン、ガシャン!!
「アァアアアァァ……」
「ウァアァアァアァアァァァ……」
「ガガ、ガァッ、、アァアァアァ……」
どうやら死者達に【よじ登る】と言う発想は無い様だ。
動く死体達の知能と運動能力の低さには救われる。
フェンスが足止めになっている間に何処かに隠れよう。
運動競技上の周囲は広い駐車場で整備され、陸上競技場やテニスコート等が点在している。
休日ともなれば大型の大会が開催され、多くの人を呼ぶが、平日は予想通りの閑散さ。
(今日は何処の会場も、鍵は閉まってるだろうけど……)
田島はビクビクと震えながらも目が虚ろ。
眠いと言っていたが、体調不良から来るものかも知れない。
統也だけなら何処でも潜めそうだが、この暑さだ、田島の体調を悪化させない為にも空調が整っている場所に限定すべきだろう。
(一般開放されてる屋内施設場ならエアコンもかかってそうだし、入り込めるかも知れない!)
「田島、行くぞ。動けるな?」
「ぁ、あぁ、大丈夫、」
空っぽの駐車場を足早に突破し、屋内施設場を目指す。
道すがらには死者の姿が無い分マシだが、ウォーキングに訪れていたのだろう人達の横たわる姿が点々と見当たる。
(やっぱり学校だけじゃ無かったんだ!)
警戒しながら見回す前方に、地面を這い蹲る男が見える。
助けを求める様に手を伸ばし、呼吸を荒げて苦しげだ。
「大丈夫ですか!?」
「バ、バカ、統也、危ねぇよぉ! 全員死んでんのかも知れねぇのに!
生き返って、堀内みたいに襲いかかって来るかも知れねぇのに!!」
見て見ぬフリが出来ないのが統也と言う男。
田島の制止を払って男に駆け寄ると、その背を摩る。
「しっかりしてください! 一体ここで何が起こったんですか!?」
「ょ、良かった……キミは、動けるん、だな……?」
「え?」
「見ての通り……皆、いきなり倒れて、しまって……
俺も、急に眠く、なって……」
「眠いって、」
「ひどく眠いんだ……きっと、皆そうだ……早く救急車、を……」
男の話を掻い摘めば、皆が揃って倒れたらしい。
理由も この男と同じだとすれば、睡魔によるものだろう。
大の大人が眠気に耐えられず昏倒してしまうとは、俄かに信じがたい。
然し、現に男は激しい睡魔に襲われ、舟を漕ぐようにウトウト。今に落ちてしまいそうだ。
「あの、救急車を呼びたいんですけど、さっきから電話が……あれ?
あの、ちょっと、寝ちゃったのか!? オイ、起きて! ホラ、しっかり!!」
……
寝落ちてしまった。
何度も体を揺すろうと、起きる気配は無い。
(これ、用務員サンと同じだ! 眠り病!?
そんな病気、あるのか分からないけど……)




