表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックビート  作者: 坂戸樹水
57/140

57


「そ、それ……弾、入ってるのか……?」

「入ってるよ。使い方も解かってる」

「ッッ……ク、クソッ……、」


 人質を取られては太刀打ち出来ない。雅之はライフルを仁美に投げ返す。


 仁美はライフルを取り戻すと部屋から逃げ出すが、統也の銃口は弘武に向けられた儘、下ろされる事が無い。


「返しただろ! お前も銃を下ろせよ!」

「……」

「まさか、騙したのかッ?」

「そうじゃない」

「何が、そうじゃないんだよ!! この嘘つきヤロぉ!!」

「何が嘘つきよ!? アンタだって嘘ついて、私達を騙したじゃないの!

統也クン、早く行こ! そんなヤツ放って、早く!!」


 長居は禁物だ。

形勢が優位である内に この場を離れたい仁美は、地団駄を踏んで統也を急かす。

だが、統也は動かず雅之を見つめる。


「雅之、お前の気持ちは良く解かる」

「何だよ、それッ、」

「ここで全部終わらせて、一緒に行こう?」

「は、ぁ……?」


 バイクは2人乗り。もう1人を乗せるスペースは無い。

それで無くとも雅之は発狂している。同行させるには危険すぎる存在だ。

然し、統也は父親と同じ症状を見せる雅之を見捨てる事が出来ない。


「弟の為にした事なんだろ? 全部」

「……ッ、」

「弟が元気で生きてたら、こんな事しなかっただろ?」

「……ゎ、分かんねぇ、分かんねぇって……だって、楽しかったんだ……

弘武の為って思いながら、でも、やっぱ楽しかったから……

俺、頭おかしくなってんだ……今だって、殺したくて堪んねぇ……、、」

「雅之……」



(何故、発狂なんて現象が現れるのか……

僅かな理性に苛まれて、傷ついて、苦しんで……

それにも堪えられなくなれば、もっと壊れていく……)



 雅之は両膝から床に落ちると、両手を合わせて統也を拝む。


「頼む!! 殺さないでくれ!! 謝るから、全部謝るから!!

弘武は俺の大事な弟なんだ!! もうこんな事しない!! だから見逃してくれ!!」


 最終的には土下座。

これ程までに雅之は弘武を思い、唯一残された家族に依存している。

発狂者となった今でも、失う事は堪えられない。


 統也は銃を下ろす。


「雅之、お前はずっとここに留まるつもりなのか?」

「弘武を置いてけねぇよ……そんな事できねぇよ……」

「……そうか、」


 統也は腰を屈め、雅之に携帯電話を差し出す。


「これ、やるよ」

「ぇ……?」

「バッテリーが どれだけ持つか分からない。

でも、それまでに、もしここを出る気になったら、この番号に連絡してくれ。

必ず迎えに来るから」

「お前……」


 統也の手元には父親の携帯電話がある。

まだ端末は残っているとは言え、万一を考えれば失うには手痛い文明の利器。

それでも、雅之に託さずにはいられない。


 雅之は泣き崩れる。

まだ心に残る『人』としての感情が、そうさせるのだろう。



 派出所を後に、バイクは再びS県に向かう。


「あのさぁ、アンタ、バカすぎるでしょぉ!?」

「えぇ!? 何がですかぁ!?」

「スマホ! 携帯だって!」

「あぁ、あれぇ……別に、俺には父サンのがあるんで!」

「そうだけどぉ…… バーカ!」

「ハハハ……、」


 バイクに乗りながらの会話は声を張り上げなければ聞こえない。

馬鹿デカイ声で仁美に叱責され、統也は苦笑するばかりだ。

雖も、仁美の顔には笑みが浮かんでいる。



「ま。そうゆうの、嫌いじゃ無いけどね」



 ポツリと呟き、統也の背に頬を寄せる。




*

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ