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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
55/140

55


 雅之に教えられた通り、斜面を下る隘路を使い、2人は側道に下りる。

元々のひと気は少ない土地の様で、道の左右には僅かな死者が徘徊するばかりだ。

雅之は派出所から顔を出し、忙しなく手招き。2人は足音を殺して派出所に飛び込む。


「ハァ、あぶ、危なかったぁ……、」


 仁美は息すら止めていたのだろう、しゃがみ込むなり深呼吸。

雅之は死者達の視界を遮るよう、入り口のカーテンを閉める。


「ホント、悪かったな! 良かったよ、無事で!」

「これ。この程度の物しか無いんだけど、使えそうかな?」

「助かるよ! ありがとうな! 本当にありがと!」


 仁美はしゃがみ込んだまま2人を見上げ、首を傾げる。


「ケガ人って? 何処にいんの?」


 話では怪我をした弟がいるとの事だが、室内には見当たらない。

雅之は隣接するドアを見やる。


「向こうに寝かせてんだ。2日前まではスゴく痛がってたけど、漸く落ち着いてさ」

「それなら手当て何か要らないんじゃないの?」

「まだ傷は塞がって無いから、小まめに包帯は取り替えてやりたいじゃんか」

「ふーん。……イイお兄チャンだね」

「ハハハ!」


 投げ遣りな口調だが、仁美の褒め言葉に雅之は照れ臭そうに笑う。

人の笑顔を見るのはどれくらい振りか、統也の心は幾分か軽くなる。


「手当て、1人で出来るのか? 良かったら手伝うけど?」

「そこまでさせられないって! ありがとな、ホントに……

こんな時に助けてくれる人がいるとは思わなかったから、本当に嬉しいよ。

なぁ、こんなトコで良かったらさ、ゆっくりしてけよ」

「ありがとう。でも、先を急いでるんだ」

「そっか……どっか向かってんのか?」

「ああ。S県へ」

「S県?」

「友達が……仲間が待ってるんだ」


 友達と言うには生温い。

統也にとって岩屋や日夏は運命共同体として、心を支える大事な仲間だ。

この響きを気に入ったのか、仁美は満足気に頷く。


「じゃ、行こっか。統也クン」

「そうですね」


 お大事に、の気持ちを込め、統也は後ろ手を振る。



 カチャ。



「ぇ……?」


 仁美が小さな疑問符を零すと同時、統也の顔に銃口が向けられる。



「――雅之、」



 ライフルは雅之の手に握られている。

一瞬の出来事に成す術も無い仁美はヨロヨロと腰を抜かし、又もその場に座り込む。



「あぁあぁ、ビックリしたぁ。

まさかライフル持ってるヤツがいる何て思わなかったっつの!」



 雅之は仁美から奪ったライフルを身構え、照準を統也に絞る。


「お前、発狂……」

「あぁ? 発狂? 何だそりゃぁ? 妙なネーミングつけてんじゃねぇよ。

俺は……そうだな、解放者! 自由になった!」

「自由……」


 統也の父親も同じ様な事を言っていたのを思い出す。

発狂した者は開放感に満たされた状態となり、それが転じて暴挙を働く。


「女に物騒なモン持たせんなよ、ヘタレ! ま。お陰で奪い取れたんだけどな!」

「雅之、弟の話は嘘だったのか……」


 統也の言葉に、雅之は眉を吊り上げる。


「嘘なもんか!! 弘武はアイツらに襲われて、ケガして、ずっと苦しんで痛がってた!

それなのに生き残ったヤツらは俺達を無視して逃げて行きやがった! チクショぉ!!」

「嘘じゃないなら、そんな物構えてないで手当てしてやったら良いだろ」

「ああ、してやるさ。食事の後でな」

「「!?」」


 雅之は隣接するドアを蹴り開ける。

その物音に、部屋の奥から濁った声が返される。



「ググ、ァァアァアァッッ……」



 ドアの先は警官の仮眠室。

そこに置かれたベッドには小さな子供が縛りつけられ、唸り声を発している。

血生臭い悪臭も相俟って、とても生きている状態とは思えない。



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