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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
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 C市から約5時間。

死者の出現や、道路事情により遠回りさせられはしたが、

岩屋の車は無事 S県Y市にある葉円成都大学の門前に辿り着く。



「やっぱり、スッカラカンな感じがするな……」



 Y市は県の中心部から外れている事もあり、自然も豊か。

中でも葉円大は環境や植物に纏わる学部が多く、周囲は自然観測の為の私有林に囲まれている。

それでも閉鎖感を受けるのは、それ等が金網で区切られているからだろう。

研究の一環に部外の介入を避ける必要があっての事なのだろうが、この状況下では警戒心にも見て取れる。

だが、田舎町と言う元々の人の少なさもあって、この界隈では死者との遭遇で胆を煮やす事も無い。


 日夏は後部座席から怖ず怖ずと頭を出し、運転席の岩屋の顔色を窺う。


「あの……どうしますか……?」

「どうって何が?」

「えっ? えっと……この後……」

「お前はどうしたいんだよ?」

「ぼ、僕は……その…………分かりません……、」


 統也が車を離れてからと言うもの、2人の関係は一層にギクシャクしている。


「靖田君、大川由月に会いたいんだよな?」

「は、はい!」

「見に行って来るって気は無いのかよ?」

「え!? ぼ、ぼ、ぼ、僕、1人で、です、かっ?」

「当たり前だろ。田島君もいる、こんなトコで車を空にできねぇだろぉが」


 岩屋の言い分は毎度 理解できるも、大学内部は生存者がスッカラカンだと思われるのであって、死者達が蠢いているのは範疇だ。

そこへ1人で行って、顔も分からない大川由月を確認しろと言うのは余りにも酷な話。

単純に危険を冒したく無いだけの岩屋はこれ迄に1度も先陣を切った事が無いから、無理難題を軽々しく口にする。


「た、多分……絶対無理ですっ、、僕1人なんて……だって、怖いです……」

「あのなぁ、キミがここに来たいって言ったんだぞッ? そんなんでどうすんだよッ?」

「だ、だって、岩屋サンだって……」

「人の所為にするんじゃねぇよ! そっちが先に言ったんだろって!

いちいち言わなきゃ分かんねぇのかよッ、だからユトリは嫌なんだよ!」


 岩屋の辞書に『連帯責任』や『協調性』と言う単語は無いらしい。


 だが、岩屋は日夏に苛々させられている。

何かにつけ怯え、意見を求めても『分からない』の一点張り。

希望を口にする割に自己の考えが定まる事も無ければ、行動力にも期待できない。

そんな頼り甲斐の無い日夏の為に、大人げを発揮してやる気にはなれないのだ。


 雖も、日夏にも言い分はある。

岩屋の言葉の強さには圧倒されてしまい、意見を言う所の始末では無い。

そして、何かを言えば発言責任の下、単独行動を迫られる。

そこに協力を求める事は許されない。

現にそうして統也をC市の中心部に置き去りにして来たのだ。

その躊躇いの無さに、信頼を寄せる事は出来ない。


 そんな2人が共通して思う事があるとすれば、統也を欠いたダメージは大きいと言う事。

統也は車が運転できるでも無ければ、コンピューター知識に長けているでも無い。

実にニュートラルな高校生だ。然し、群を抜いた正義感と実行力を持っている。

悪く言えば無謀なのだが、頼もしい結果を残している事も事実。

あの場に残さざる負えなかった事が悔やまれてならない。


 2人は揃って肩を落とす。

こうして車中から大学の外装を眺めていても何も分からない。

この状態では、自衛隊駐屯地に場所を変えても結果は同じだろう。

そうして岩屋が頭を痛めていると、日夏が前方を指差す。


「岩屋サン、あれ……」

「な、何だ!? ゾンビか!?」

「違います、多分、あれ……」

「え? え?」


 いつでも発進できるようハンドルを握り、岩屋は日夏の指差す先を見る。

気の所為だろうか、大学校舎の3階角部屋の窓から、白い布が振られている。

カーテンが風に舞い上がっているとするには、動きはそれ程 緩やかでは無い。

日夏は自宅から持ち出した大きなリュックから双眼鏡を取り出す。


「そんなモンまで持って来てたのかよ!? 物持ち良いなぁ!」

「必要になるかも知れないって思ったから。

あぁ、やっぱり、誰かが旗を振ってます。あれは……生存者かも!」


 まさか、死者が旗を作ってバサバサと合図を送ったりはしない。

日夏はゴクリと喉を鳴らす。


「ち、近づいてみませんか?」

「キミ、いきなりやる気になるよなぁ、情緒ヤバイぞ……、」


 雖も、行ってみる価値はある。

岩屋はアクセルを踏むと ゆっくりと門を潜り、周囲を警戒しながら走行。



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