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「統也、統也ぁ、どうしちゃったんだよ、コレぇッ、何が起こってんだよ!?」
「そ、そんなの、俺にだって分からない、、何でこんな事に……」
この状況を理解する術なぞ持ち得ない。
それよりも、思考回路は必死に現実逃避をしようとしている。
(毎日学校行って、友達と遊んでバイトして……
今日は昨日と何も変わらない1日で、そんな当たり前の日々が続くんじゃなかったのか……?)
「と、に、かく、その、えっと……」
(夢だ!! 現実でこんな事が起こってたまるか!!)
「逃げ、る……?」
今は考えるよりも、安全を確保すべきで、そう考えるのは皆も同じ。
「警察、警察、……ォ、オイ、何で電話に出ねぇんだよ!」
「そんなワケねぇだろ!」
「ホントだって! 呼び出し音は鳴るけど、何度かけても出ねぇんだよ!」
「も、もしかして他でも同じような事が起きて、お巡りサン、出払ってんじゃないの!?」
「こんな事が そう簡単に起こるわけ無いじゃない!」
「もぉヤダ!! 私 家に帰る!!」
「そうだ! 家に帰ろう!」
「校門はヤバイ! 堀内がいる! 裏門から出ようぜ!」
「裏門だ! 皆、裏門に行こう!」
一致団結。田島も一同に習って統也の腕をグイグイと引っ張る。
「逃げるんだろ、統也!
皆、裏門から出るって、オレ達も行こう! 家に帰ろう!」
「ぁ、あぁ、」
校門を振り返れば、食事を終えた堀内は返り血で染まった赤い姿で ゆっくりと校舎の方へと向かって来る。実に無残な姿だ。
交際期間は1日ばかりだが遣る瀬無い。
統也は苦衷に表情を曇らせながらも裏門へ向かって走る。
生徒達が向かった裏門の手前には、作業服を着た男が1人横たわっている。
然し、誰もがそれに構う事無く、我こそはと狭い裏門に駆け込み、体を半身にして無理矢理に通り抜ける。
統也と田島が一足遅れて辿り着く頃には、裏門に集中する生徒達が団子の様になって中々先に進めない揉みくちゃ状態。
「絵里奈に追い着かれちゃうよ!! 早くどいてよ!!」
「痛いなッ、押さないでってば!」
「だったら早く行けよ! 後ろが閊えてんだぞ!!」
「前の方、何やってんだ! モタモタすんじゃねぇよ!」
誰もが背後を振り返り振り返り、堀内が来ない事を確認。
門によって区切られた学校と言う領域からの脱出を誰もが急いでいる。
外へ出れば元通りの生活に戻れるのだと、ただそれだけの思いだ。
「田島、ちょっと待て!」
統也は田島の手を振り解くと、倒れて動かない作業服の男へと駆け寄る。
「統也、何やってんだよ!?」
「用務員サンだっ、今少しだけど今動いたんだよ!
……ホラ、やっぱり生きてる!
しっかりしてください、用務員サン! 何があったんですか!?」
手荒に体を揺するが、用務員が反応を返す事は無い。
(夏病か!? 倒れた拍子に頭でも打ったか!?
でも、呼吸は落ち着いてる、まるで眠ってるみたいだ)
口元に耳を近づければ、スースーと寝息の様な深い息遣いが聞こえる。
日差しの暑さに汗ばんではいるが、顔色が悪い事も無い。
雖も、こんな所で寝そべり、更にはこの騒ぎの中でも目覚めないのは奇妙だろう。
統也が訝しんで首を傾げていれば、田島はジレンマに地団駄を踏む。
「統也! 今はそんなのに構ってる暇ナイんだって!」
「そんなのって、なに言ってんだよ! 放って置けないだろ!」
こんな時だからこそ見過ごす事は出来ない。
統也は携帯電話をポケットから取り出し、119番をコール。
然し、長らくコールするも応答が無い。2度3度かけ直すが同じ事。
(救急車も出ないのか!? こんな事ってあるのか!? いや、でも、)
疑問に思うも、今の状況を見れば どんな事でも起こり得そうだ。
(死んだ、……らしい堀内は生き返って同級生を殺した……
校舎の屋上からは、先生まで一緒になって飛び降りた……
間違いなく有り得ない事が起こってる!)
「きっと、ここだけじゃなく……」
統也は未だ目覚めない用務員を一瞥。そして、周囲を見回す。




