表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラックビート  作者: 坂戸樹水
31/140

31


 統也は運転席側に回り込み、窓をノック。


「何? 早くしろって」

「言いずらいんですが、こんな時でもお金が無いと機械が動かないみたいで」

「ああ。ホラよ、カード」


 岩屋は人使いが荒い。

然し、2度も助けられている手前、文句も言えない。

統也はクレジットカードを受け取ると、給油を開始する。

この手の支払いシステムは、まだ機能する様だ。


「……」

「……」

「日夏、何してるの?」

「え!?」


 岩屋にはガソリンスタンド内にあるだろう携帯缶を探して来いと言われている日夏だが、

統也の隣にピタリとくっついたきり離れようとしない。


(そうだよな、怖くて1人じゃ行けないよな)


「分かった。携帯缶は俺が探して来る。その代わり、給油は日夏がやってくれ」

「で、でも……」

「大丈夫だよ。このままレバー引いてれば勝手にいっぱいになるから」

「ご、ごめんなさい、」


 仕事を押し付ける形となり、日夏はしょぼ暮れる。

勿論、統也も怖くない訳では無い。

日夏の気持ちが解かるからこそ仕事を変わってやろうと思うのだ。存外、損な性分。


 ガソリンスタンドに併設された休憩所の中にカー用品が販売されている。

その中に携帯缶の1つや2つはある筈だ。

統也は念の為、倒れた掃除用具入れから柄の長いモップを武器に選び、身構えながら、半開きになっているガラスのドアを足で突っついて開ける。


(俺、いつからこんな勇敢になったのかな? 何処か、麻痺しちゃったのかな?

俺みたいな軟弱な男、ヤバイ事が起きれば一目散に走って逃げるもんだと思ってたよ)


 人を助ける為、自分の命を天秤にかける。

そんな現実が訪れるとは想像もしない所か、武器を持って応戦する思い切りの良さが自分に備わっていたとは、これ迄の日常からは想像も出来ない。


(まさかこんな、)


 レジカウンターから、突如、死者が飛び出す。

齧りつかれる前に死者の頭を目がけてモップをフルスイング。



 ガツン!!



 成す術も無く、グシャリ!! と壁に顔面を打ちつけ、死者の頭は弾け飛ぶ。



(冷静に対処できるようになるとは、やっぱり思ってなかったよ)



 2~3日あれば大概の事には順応するのが人間だとは聞くが、それは事実だった様だ。

車を振り返るも、岩屋と日夏は ここに死者がいた事に気づいていない。

何かあれば直ぐにキレる岩屋と泣き出す日夏を思えば、事勿れが1番良い。統也は息をつく。



「フゥ……俺って逞しい」



 車回りの備品と、四つの携帯缶を発見し、給油を万端 整える。

これでガス欠の事態に陥っても、当面は やり過ごせる。

騒ぎが起きずに用を終えられ、岩屋は満足げにハンドルを握る。


「さ、日が暮れる前に何処か、宿を見つけようか!」


 宿と言われると旅行気分にもなるが、メンバーは何ともミスマッチ。

然し、今は心の拠り所となる頼もしい仲間達だ。


「そうですね、行きましょう」



*



 ――3日目。



《世界が変化してから、まだ3日しか経っていないと言うのに、

もう長い事こんな当てのない旅をしているように思う》



 吹く風は日を増して秋の気配を運ぶも、未だ肌に纏わりつく湿度が煩わしい。


「結構、物持ち良い家だったな!」


 昨日に引き続き、車を運転する岩屋の機嫌は上々。


(昨日は給油した後、日夏の案内を受けて家に泊まらせて貰った。

運が良いのか悪いのか、家の中は無人で、当然、それを確認に行かされるのは俺で、

岩屋サンは安全が分かるまでは絶対に車から降りて来ない)



『両親は忙しくて、殆ど家に帰って来ないんです。だからきっと……』



(両親の安否は分からず仕舞いで落ち込む日夏の気持ちをどう考えているのか、

岩屋サンは必要な物資も同時に補給できた事に満足って顔だ)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ