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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
29/140

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(頭、頭だ! そこを狙えばコイツらは動けなくなる! もう1度、)



「死んでくれ!!」



 銃床で死者の頭を殴りつければ巨体はグラリ……と傾き、地を揺るがす様な音を立てて倒れる。

然し、死者は1体では無い。続々と現れ、2人に襲いかかる。


「うわぁあぁ!!」


 日夏は鼻の頭を赤くしてベソをかき、恐怖の余りに走る事を忘れて蹲る。

これでは『喰ってください』と言っている様なもの。統也は日夏の腕を引っ張る。


「何やってるんだよ、お前も応戦しろ! 頭を狙えばどうにかなる!」

「イヤだ!! 怖い!! 怖いよぉぉぉぉ!!」

「ふざけんな! 男だろ! 死にたくなかったら――」


 統也の頭に、あの言葉が思い出される。



「生き抜きたければ頭を使え!!」


「!」



 この言葉に、日夏の目は大きく見開かれる。

そして、これに応える様に立ち上がり、肩に下げていたアサルトライフルを構える。


「うぅ、ぅ、うぅぅ、……うわぁあああああ!!」



 ズダダダダダダダダダダダダ!!

 ズダダダダダダダダダダダダ!!



 いつの間にセーフティーを解除したのか、日夏が銃のトリガーを引けば銃口から一気に弾が発射される。


「うわぁ!! 危ない、やめろ! こっち向けるな!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! うあぁあぁあぁあぁん、あぁあぁあぁ!!」


 泣き叫びながらの乱射。薬莢があちらこちらに飛び散る。

到る場所を銃撃し、流れ弾が辛うじて死者に命中するも、頭に当てない事には意味が無い。

それでも死者の前進を封じる手としては有効か、着弾の衝撃に大きく体を仰け反らせて倒れる。

何にしろ、応戦は逃亡のついでだ。

統也は日夏の背後から腹に腕を回し、引き摺って退路を急ぐ。


「もう良い、もう良いから!! 充分 足止めになってるから、ここを早く出よう!!」

「うわぁん!! うわぁあぁん、あぁあぁ!!」

「駄目だこりゃ、」


 力いっぱいトリガーを引いたから、指が硬直して外れなくなってしまった様だ。

体中に巻きつけたベルトリンクの弾が無くなるまで収まりそうにない。

こうなったら日夏そのものを武器として振り回すとしよう。

統也は死者の方向に日夏を向け、発砲させまくる。中々の連係プレー。



 ズダダダダダダダダダダダダ!!

 ズダダダダダダダダダダダ……


 ――カチッ、カチ、カチンカチンカチン!



 弾を使い切れば、スライドがリコイルするばかりの虚しい音が繰り返される。


「た、た、弾がぁ!!」

「もうすぐ出口だ! 兎に角 走ってくれ!」


 体中を蜂の巣にされた死者達に痛みは無いにしろ、肉体的損傷は大きい。

それでも腹這いになって生存者を追い駆けようとする死者の執拗さにはゾッとさせられる。


 全力疾走で隊舎の外に飛び出し、日差しを浴びる。

だが、外へ出た所で逃げ切れた訳では無い。

見た目通り軟弱な日夏は、忽ち脚力を失って膝を突く。


「日夏、止まっちゃ駄目だ! ヤツらを巻くまで走るんだ!」

「ハァハァハァ、、は、はぃ……、」


 統也は敷地内を見回す。岩屋の車は見当たらない。


(やっぱり行っちゃったか……)



『俺達は今ある自分の命を守るべきなんだ!』



(そうだよな、何度も助けて貰おう何て虫が良いにも程があるって……)


 ズルズルと体を引き摺って追い駆けて来る死者達の気配は、今後も背後に付き纏うだろう。

だからこそ、外にいる以上は動き続けなければならないのだと、それは岩屋が言っていた最も頷ける主張だ。然し、ここは統也にとっては馴染みの無い場所。留まる当てが無い。


「日夏、何処か隠れられそうな場所は!?」

「えっと、えっと……」

「家は!?」

「電車に乗らないと……」

「クソっ、」


(どうする? 何処へ逃げる?

表に出てないだけで死者達は至る所に潜んでいる、隠れられる場所なんて無い、

いつか追い着かれる、いつか回り込まれる……このままじゃ、いつか喰い殺される!!)



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