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《隠れてる部屋の前に化け物がたくさんいる。動いてる音が聞こえる》
生存者に近づくと言う事は、死者の目測に入る事と同意。
統也の有意識は既に臨戦態勢。いつ死者が現れても応戦できるよう殺気立っている。
(見つけた!)
角を曲がった所に十数体にもなる死者が群れを成している。統也は素早く身を隠す。
(うわぁ、やっぱりだよ! ガタイの良いのが沢山いるよ!
あんなの、1人だって相手に出来るとは思えないぞ!)
想像した以上に、自衛隊員の死者は屈強な肉体を持っている。
統也の様な薄っぺらな体系の男子なら、一瞬で捻り潰されそうだ。
(か、勘弁してくれッ、
俺はケンカだって今までした事ないのに、部活だって帰宅部なのに!
成績だってド真ん中なのに!)
突出した能力は無いと言いたい。
(あぁ、でも、何とかして数を減らさなけりゃ……
非力なアイツらでも、力を合わせれば車1台 引っくり返せるって言うんだから、
俺なんか一溜りも無い、)
飛んで火にいる夏の虫にならない為の試行錯誤に、引き返すと言う選択肢は無い。
統也は膝を折り、薬莢を幾つか拾い上げる。
《キミの名前は?》
《にちか。靖田日夏》
統也は静かに長息を吐く。
(可愛い子だと良いな!)
下心を掛け声に、統也は手にした薬莢を反対側の廊下の先に遠投。
カラン、カランカラン……
この音に死者達は徐に振り向く。
聴覚は健在。音のする方へとゆっくり移動を始める。
死者達が移動しきるのを見守る迄は一旦退却だ。距離を置く。
《何か音がした! 大丈夫!?》
《大丈夫。キミはドアの側にいて。声をかけたら出て来て》
ここからは連係プレーが試される。
統也は死者達が通り過ぎたのを確認すると、その隙を縫って日夏が隠れているだろうドアの前に滑り込む。その寸暇、
Tururururururu……
(え?)
統也の携帯電話が着信を知らせる。
(この音は……父サンからの着信!)
生存の知らせは有り難いが、こんな時に呼び出しとはタイミングが悪い。
否、着信音を切っておかなかった統也の過失だ。
勿論、この電子音は死者達の耳に届く。
ピタリと足を止め、再び振り返った視界に統也を見つけると、顎を外す様に大口を開ける。
「ガァァァァ、ァァァ……アァァァァァァ!!」
「アァアァ、アァアァアァアァ!!」
(クソっ、こうなったら強硬手段だ!)
「日夏ぁぁぁ!!」
「は、はい!!」
統也の声に引っ張られる様に大きな返事をしてドアから飛び出すのは、制服姿の矮小な男子高校生。彼が靖田日夏だ。
「男!?」
「は、はい!!」
「然も武装!?」
「は、はい!!」
名前が【日夏】なだけに、てえきり女性だと思い込んでいたが、とんだ勘違い。
制服の上に防弾チョッキを着て、肩には何丁もの機関銃やら銃弾の入ったベルトリンクをぶら下げた姿は、中々見られない兵隊コスプレ。
雖も、今はそれ等を兎や角 言っている場合では無い。統也は日夏の腕を取る。
「走って!!」
「は、はい!!」
脱兎の如く走る足音と、1度は切れたが再び鳴る携帯電話の着信音に、内部の死者達が集い出す。相手が隊服を着ていようと、どれ程 隆々な肉体であろうと怯んではならない。
行く手を死者達が遮れば、統也は両手に銃を握って竹刀の様に振り回す。




