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(生存者は、どんな思いでこの夜を迎えているんだろう……)
統也はネットに繋げると、更新されなくなった掲示板にメッセージを書き込む。
《僕は水原統也です。秀明高校3年、18才です。
今、C市のI地区にいます。自宅です。友達2人が一緒です。生きています。
明日、F地区の自衛隊駐屯地に向かいます。保護して貰える事を祈って》
ネットに実名を晒すなぞ、普通なら馬鹿げていると笑われるだろう。然し、今は違う。
(父サンが、知り合いが、見てくれるかも知れない。
そうじゃなくても、誰か、生きてたら返して欲しい。生きてるって教えて欲しい。
絶対に今を乗り切れるって、そう励ましたい……励まされたい……)
1人でも多くの生存者が確認できれば、それだけで明日への希望に変わる。
*
……
……
何処からか声がする。
『統也ぁ、統也ぁ……』
『!』
パッと目を開ければ、そこは自宅のリビングだ。
『母サン……?』
『統也、ゴハンが出来ましたよ』
『……何で、いるの?』
『えぇ? 何よ? 寝ボケてるの?
腹減ったぁって急かすから、急いで作ったのに』
『え? ……ぁ、あぁ、そっかそっか……そう、だったね、ハハハ。
ぁ、ありがと、』
『あらヤダ。ねぇ聞いた? お父サン、統也が珍しく、ありがとうですって!』
『また小遣いでも欲しいんじゃないのか?』
『きっとそうね』
『いや、違うよっ、本当に、純粋に、有り難いなって……それだけだってっ、』
『はいはい。分かったから食べちゃいなさい』
『ぅ、うん』
(ああ、何だ。やっぱり夢だったんだ。そうだよな、
死んだ人間が生き返ったり、そんなおかしな事が起こるわけ無かったんだ)
『そう言えば、昨日はあれからどうしたの?』
『昨日って?』
(母サンが死んだり、俺が殺したり、)
『ホラ、言っていたじゃないの。お友達が沢山死んだって。
田島君はもう2度と目覚めないんでしょう? 可哀想に、ご両親も大変よねぇ』
『……』
『でも、車の事故は驚いたわ。
統也ったら膝すりむいて帰って来て、お母サン、本当にビックリしたんだから』
『……母サン?』
(あれは全部夢で、俺はこうして現実に戻って来たんだよな……?)
『あ。そうそう。お味噌汁の具、少し変わった物にしてみたの。
どう? 美味しいでしょ? ホラ。良く見て御覧なさいな』
統也は黒目だけを下に、手に持った味噌汁の椀の中身を見る。
『ぅ、』
眼球が1つ、浮いている。
『それね、お母サンの目なのよ?』
*




