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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
18/140

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「トイレ、どうぞ」


 車に戻るなり、統也は田島を担いでさっさと家に引き返す。

浮かない様子だが、深く追求するだけの関係では無い男は 緩い返事。

足早に水原家の玄関に滑り込むと、手早く鍵を閉める。


「と、戸締りはこれで大丈夫かっ?」

「1階は全て雨戸から閉めておきましたから大丈夫だと思いますよ?」

「そ、そっか、じゃぁ……」

「2階のトイレを使ってください。俺の部屋の前だから。

でもその前に、田島を運ぶのを手伝ってください。

車に轢かれそうになって、膝、怪我しちゃったんで、俺」

「……キミ、結構イヤミだよなぁ?」

「そうですか?」


 統也は顔を上げようとしない。ただ、時折り鼻を啜る。

泣いていた程度の察しはつくも、まさか1階リビングに母親の遺体が転がっているとは、男も思いはしないだろう。


 さて、トイレを済ませてスッキリした男は、統也の部屋で胡坐をかく。


「良い部屋だなぁ」

「そうですか?」

「坊チャンか」

「そうは思わないけど」


 素っ気無い統也の返答に、男は溜息を零す。


「まぁ……そう気を落とすなよ」

「何が、ですか?」

「だからぁ、親とはぐれたって、何処かで会えるかも知れないだろ?」

「……」

「人ってのは、何れは1人で生きてかなきゃならない。

俺は生まれつき片親で育ってる。その親も去年 病気で他界した。

遅かれ早かれだよ。それに、今は自分自身を守る事を1番に考えた方が良い。

それが結果的に自分の為にも人の為にもなるんだ。解かるか?」

「……はぁ。そう、ですね。はい。そうします、」


 やはり、子供には素直さが大切だ。

統也が納得する様子に、男は満足して右手を差し出す。


「そうだ。自己紹介してなかったな。俺は、岩屋いわや圭市けいいち

車の営業販売をやってて、……ってまぁ、今朝までだけど」


 名刺を取り出そうと胸ポケットに指をかけるが、今更 何の意味も無いと言いたげに手を下ろす。


「俺は水原統也です。そこの秀明高校に通ってました。今朝までですけど」

「ハハハハ。その辺はお互い様か。でも、秀明って言ったら名門だ!

お父サンは、どっかの社長サンか何か?」

「まぁ、小さな会社ですけど」

「へぇ! 車はなに乗ってんの?

今うちの社で売出し中の……って、あぁ、それもどうでも良いか、」


 こんな事でも無ければ、知り合う事も無かった2人だ。

会話が盛り上がる筈も無い。

統也はベッドに寝かせた田島を見やり、肩を落とす。


(まだ1日……飲まず食わずでも1週間くらいは何とか、)


 中々 苦しい言い訳だ。

統也はテレビを点ける。どの局も砂嵐。


「あの、岩屋サンは何処から来たんですか?」

「隣町。

出勤途中に事故やら色々に巻き込まれて、そのまま車流してここまで来た。

途中、飛び出して来た高校生、轢きそうになったけどな」

「そっか、俺の方から車道に飛び出したんですよね。

でも、だって、まさか普通に生きているがいる何て思いもしなかったから、

車が突っ込んで来るとも思わなかったんです」

「そりゃそうだよな。言われてみれば そうかも知れない。

周りは寝てるかゾンビだから、てっきり自分だけが残ってるって、思い込んでた節はある」

「生きてる人間が珍しく感じる何て、信じられませんよね……」


 話題が適当な所で着地すると、2人は括目。鼻っ面を突き合わせる。



「「他にも生存者がいる!!」」



 再確認。


「そうだよ! 俺達だけの筈が無い!

何でそんな簡単な事に気づかなかったんだ!? だからユトリはぁ!」

「それもお互い様で、ユトリは関係ないと思いますけどッ?」


 名門と言ってみたり、ユトリと言ってみたり、岩屋は度々都合が良い。

だが、生存者の存在は活路に繋がる。統也は腰を上げると、机上のパソコンに向かう。

テレビ中継が止まってしまっても、インターネットは未だ生きている。

携帯電話でチマチマ検索するより、大画面のデスクトップで現状を調べるとしよう。


「さっき、スマホで何ですけど、妙なアドレスを見つけたんです」

「避難場所でも書かれてるのか!?」

「それは分からないけど、もしかしたら……あった!」



【生き抜きたければ頭を使え。http:///www.ohkawa-labo_1xxxx……】



 パソコン画面を前に、岩屋は不満そうに首を捻る。


「前向きと言うか、無責任と言うか……」


 感想は夫々。



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