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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
14/140

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 統也は背後に注意を払いながら、田島を背負い直す。


(諦めるな、まだ走れる!

この通りさえ切り抜ければ、絶対に家に辿り着ける!!)


 強く強く言い聞かせ、神経を研ぎ澄ませる。



(良し、行け!!)



 横転したバスまで走ると一旦 足を止め、先を窺い見る。

唸り声を上げながら這う上半身だけの死者や、食事中の死者、

皆が事故の死傷者だろう惨たらしい姿は、何度 見ても慣れる事は無い。

涙に交じって吐き気が迫るも、統也は口を押さえて必死に堪える。


(アイツらは不死身だけど、超能力を使ったり、体を回復させる事は出来ないみたいだし、蹴散らしてしまえば、直ぐに体勢を立て直す事も出来ない!)


 これ迄に対峙した死者達が何処かしら肉体を損傷していた事もあるが、モンスターとは言え、死者の体は生前よりも脆いと言うのが統也の読みだ。

活路を見出し、統也はスタートを切る。それと同時 ――



 キィィィィィィィ!!



「!?」


 シルバーのワンボックスカーが統也を目がけて突進。

耳を劈く急ブレーキの音に目を回しながら、統也は田島を抱えて倒れる。


「うぅぅ、、……ッッ、イッてぇ…ッッ、」


 衝突は避けられたが、アスファルトをゴロゴロと転がされ、体中が痛い。

黒目だけで隣を見やれば、痛がる様子も無い田島は、この期に及んで寝息を立てている。


「ぃ、生きてる、っぽい……良かった、」


 修羅場を切り抜けて来たのだ、交通事故で あっさり死んで貰っては困る。

雖も、一命を取り留めたとは言えない。統也は痛みを押して体を起こす。


(でも、まぁ、……こうゆう事になるよな、)


 四方八方を死者に囲まれ、逃げ道は失われた。

統也は腰を引き摺って田島に擦り寄る。


「田島、田島っ、好い加減に起きろよっ、お前だけ怖くないとかズルイだろ!」


 意識があるよりは無いまま喰われた方がマシな気がする。

少なくとも、絶命する迄の恐怖は無い筈だ。

統也はブンブンと頭を振り、近づく死者達を見上げる。


「ぉ、俺が何したって言うんだよっ……皆この街の住人だろ!?

何で人を襲ったり食ったり、そんな事が出来るんだよ!?

死んだら生き返るなとは言わないけど、せめて普通に……だって、そうだろ!?

目も見えて耳も聞こえて、それなのに、当たり前の感情は無くなる何て、

そんなの、おかしいじゃないか!!」


 死者が視点を合わす事は無いが、視界と言う物は持っているのだろう。

その範囲に動く物を捉えれば その方向に向かい、物音に反応する聴覚も持ち合わせている。

だが、統也の強い訴えに、死者が心を動かす事は無い。



「誰か、誰か……助けてくれよ!!」



 最後の命乞い。

その寸暇、1度は急ブレーキで停車したワンボックスカーのエンジンが再びかかる。


(あの車、まさか……)


 車のエンジン音に、死者達は首を傾げる様に振り返る。

この隙を見落としてはならない。統也は手放した鞄を掴み、死者を目がけて振り回す。


「うわぁあぁあぁあぁあぁ!!」


 渾身の、あるだけの力を揮って死者達を薙ぎ倒す。

死者達が倒れて這い蹲っている間に、統也は田島を肩に担ぎ、ワンボックスカーに駆け寄る。



(この車の運転手、生きてる! 生きてるんだ!!)



 統也は助手席側のドアにへばりつくと、運転席には20代の男の姿。


「助けて! 助けてください!! ここを開けて! 早く! 早く開けてくれ!!」


 統也は窓を叩く。然し、ドアロックは解除されない。

背後には、騒ぎを聞きつけた新たな死者が迫っている。

転倒した衝撃で膝を強く打った統也では、家までの距離を走れはしないだろう。

ましてや、田島を担いで逃げるとなれば生き延びる確率は皆無。

何が何でも車に乗せて貰いたい。

然し、運転手は何を血迷ったか、アクセルを踏む。



 キュルルルルルル!!



「えぇ!? ちょ、ちょっと!!」


 まさかの見殺し逃亡。

2人を助ける気なぞ運転手には無いと言う事だ。統也は放心。



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