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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
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「知能、高そうだなぁ」

「アァアァアァァアァ……」

「言葉は無理か」

「ガァアァアァアァ!!」

「元気そうで何よりだよ!!」


 手にするハンドガンの残弾は8発。

1度に2発を命中させるが、弾は腹の肉に食い込むだけで貫通しない。

田島はめり込んだ鉛を目に、首を傾げる。


「痛覚なし……予想通り鋼の鎧だな、田島ッ、」


 田島は統也を視界に捉えるなり駆け出す。


「ッッ、走れるのかよ、お前は!」



 ダン!! ダン!! ダン!!



 距離が縮まっても銃弾が田島の体を貫く事は無い。

田島は避ける間も無い統也の首を掴み、片腕で持ち上げると、そのまま壁に叩きつける。



 バン!!



「ッッ!! ――ゴフッ、」


 車に跳ね飛ばされたかの様な、目の前が眩む程の衝撃。

何処かの内臓が潰れたのかも知れない。

統也の口から血が流れれば、田島は楽しげに目を細め、もう1度、統也の体を壁に叩きつける。


「ッッ!! ……た、じ、ま、ッ……」



『彼を死なせてはならない』


『それでも死なせてしまったら――その時は、アナタが殺してあげなさい』



(ああ、解かってるよ。

田島を生かしてはおけない……俺が殺してやらなきゃならない……

由月、アナタがこれからも生き延びて、多くの人を救う為にも……)


 もう1発、額に銃口を突き付けて撃つも、肝心の脳にまで弾が届かない。

やはり由月の見解に間違いは無かった様だ。

統也は息切れ切れの中で苦笑してしまう。


(助けたかった……諦めたくなかった……)


「ごめん、な、田島……

俺は、こうゆうやり方でしか……お前を、救ってやれ、ない……」


 田島は首を傾げる。

統也の言葉は聞こえているも、その意味を理解する事は出来ない。


(マズイな、体に力が入らなくなって来たし、寒いぞ……)


「最後の1発だ……この意味、解かる、だろ?」



『ホントだぞ? 起こせよ? ゼッテェ置いてくなよ?』



「俺に、約束を守らせてくれ、……な?」


 消えゆく力を振り絞り、統也は銃口を上げる。

ピッタリ……とつけるのは、田島の眼球。グニャリと弾力を感じる。

不幸中の幸いだ。目玉までは硬質化していない事に統也は一笑。


「先、逝って、待ってろ……俺も直ぐ、追いつくから……」



 ダン!!



 弾丸は田島の眼球から脳へ侵入、盲管銃創。

耳や目鼻からダラリと血を流し、全ての力を失って仰向けに倒れる。

目覚めてからの田島の時間は束の間。それが哀れに思えてならない。


 一緒になって床に落ちる統也は、体を起こす事も出来ずに咳き込む。


「ゲホゲホゲホ、ゴホッ、ゴホッ……、」


 咳に合わせ、ゴボゴボと口から血が溢れ出る。



(父サン、母サン……こんな俺でも少しは2人に報いる事は出来たかな?)



 首を横に倒せば、父親から譲り受けたバイクが見える。

動けたならまた走れるのだろうが、否、それは無理そうだ。

然し、統也は安息をつく。久し振りに体を休められる、そんな気分だ。


(ここから出たい何て思わない……ここまで来られて満足だ……)


 シャッターは閉まっている。

この場で統也が命を落として蘇えろうと、外に出る事は適わない。

朽ち果てるまで、車庫の中を1人で彷徨い歩く。全て、予定調和。


「由月……」


(もう1度、あの笑顔を見たかったな……)


 『面白い人』と、統也を笑う由月の笑顔。

薄れ行く意識の中で思い出すのは そればかりだから、これが未練と言うものなのだろう。

統也は僅かな力を振り絞り、ポケットから携帯電話を取り出すと指を震わせながらネットの掲示板を開く。

そこには、返信されてない儘の名無しのメッセージが浮かんでいる。


(アンタが ただの生存者でありますよう、

皆を守れる本物のヒーローでありますよう……)



「偽物のヒーローは、最期くらい、潔く ――」




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