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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
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 統也は立ち上がり、後ずさると、驚愕の余りに動きを失い、ライフルを構え続ける日夏を背に隠す。


「大川サン、まだアイツらがいるんだ……

アナタに正気に戻って貰わないと、俺達は生き延びれない……」

「汚らわしき種の起源よ……お前ら廃棄物に私の自由は奪えない」

「大川サン、それは自由じゃない。そんな事、大川サンが1番 解かってる事だ。

俺達は理解しあえる。だって今までそうだった。今だって、俺を助けてくれた!」

「フッ、ハハ、アハハハ!! ……ッッ、、最後の忠告よ……田島君の事は、諦めなさい――」

「大川サンっ、」


 由月は苦し紛れに意識を繋ぎ、フラフラと足元を迷わせながらライフルを構え直す。

まだ伝えるべきが残っている。まだ理性を失う事は出来ない。


「あの症状……知覚は保たれている……――ギャハハ!! ――ッッ、

けれど、脳から筋肉に指令を送る神経細胞が変性して、消失しているわ……

人類は起源を取り戻し、解放の時を迎えた!! ――うぅっ……、

アレは【例外】では収まらない……私も、もう駄目よ……これ以上は、無理……

もう、一緒にはいられない……」

「そ、そんな事ない!

大丈夫、大丈夫だからっ……皆、アナタを必要としてる……」

「早く、行きなさい……ここは、私が引き受ける……」

「嫌だ……大川サンまで、そんな……」


 父親との別れが思い出される。同じ事が繰り返されようとしている。


「戻って来て……皆でここを脱出するんだ、それにはアナタがいなきゃ駄目なんだ……」

「ッッ、うぅぅ……、」


 今も由月は戦っている。内側から這い上がろうとする狂気と。

統也は日夏に銃を下ろさせ、ゆっくりと由月に歩み寄る。


(漸く、あの矛盾が解けた)



『もし私が何かに変化したら、その時はアナタに救って貰いたいの』



(どうして大川サンが あんな話を俺に持ちかけたのか)



『何の罪悪も持たず、殺して欲しい』



「誰も傷つけたくない、殺したくない……

そう思っていたのは、俺だけじゃなかった。大川サンも同じ……

だから、そうなる前に死にたかった。死んで救われたかった。

そうですよね?」



『信じるに値するアナタにだから、頼める事』



「アナタは俺に命すらも預けてくれた……だから俺は、アナタを救います」


 統也は苦しむ由月を抱き寄せる。


「!」

「アナタ、すごく遠回しだ。

父サンも母サンも、死によって救われたと、俺に伝えたかったんでしょ?

誰に殺されて裏切られるより、俺が手を下してやるのが1番の優しさだって、そう言いたかったんでしょ?」

「とう、や、君……」

「解かったよ。俺は父サンと母サンを救った。俺は、間に合ったんだ……

アナタがそう言うなら、きっとそうだ。俺はやっと解放された。自由になった。

そうだろ? だから戻って来てくれ……俺には大川由月が必要なんだ……

アナタが好きだから、生き延びて欲しい……」

「統也君――」


 由月は統也の言葉に息を抜き、意識を手放す。


(目を覚ました時、彼女がどんな存在になっているか何て、俺には分からない。

でも、彼女ならきっと……)



「日夏、彼女を頼む」

「ぇ……?」

「お前、守ってやれるだろ?」


 日夏は統也の腕の中で眠る由月に目を落とす。

いつもと変わらない由月。然し、発狂者だ。それでも日夏は頷く。



「はい! 守ります!」



 いつもの『頑張ります』では無い。ハッキリとした意志が そこにはある。

統也は由月と日夏を車に乗せると、装填されているロケット砲を手にドアを閉める。


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