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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
132/140

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「日夏」


 ワンボックスカーの後部座席で仮眠中だった日夏は 目を擦りながら、それでも素早く体を起こす。


「は、はい、交代ですねっ、頑張ります!」

「少し早いんだけど、ごめんな? 考えたい事があって」

「はい、任せてください! 僕、頑張りますから!」

「ああ」


 岩屋は背凭れを倒した運転席で、鼻を鳴らしながら熟睡中。

日夏はスッカリ持ち慣れたライフルを手に車を降りると、思い立って統也を振り返る。


「あ。そうだ、統也サン、

さっき寝る前に由月サンのホームページを覗いたんです。

そうしたら、更新されてました! 由月サンって本当にスゴイですよね!

今回は発狂者について書かれてたんですよ!」


 いつの間に更新したのか、

そう言えばS県の診療所で、統也は『発狂者についての観察はどう行っているのか?』を由月に問うたが、結局それは別の話に摩り替わっていた事を思い出す。



「分かった。俺も見ておくよ」

「それから、生存者は他にいないか、ネットを探してみたんです。

そしたらコレ、見てください!」


 日夏は携帯電話の画面を統也に見せる。表示されるのはネット掲示板だ。

統也と日夏の遣り取りの後に たった一行だけ、何者かが書き込んでいる。



《更新されないけど、死んだのか? 名無し》



 統也は顔を上げ、日夏を見やる。


「これ……」

「日付は昨日です。

レスした方が良いのか分からなくて、発狂者だったらって……」


 生存者がいたからと言って両手放しで喜べないのが残念だが、地上には未だ命が残っているのは確かだ。それが希望に繋がる以上、諦めてはならない。


「日夏、相手がどんなヤツか探れないか?」


 日夏には優れたハッキング技能がある。

掲示板に書き込んだ端末から個人情報にアクセス出来れば、相手の位置が確認できる筈だ。

日夏は気難しげに眉を顰めるも、深く頷く。


「今の環境で出来るか分からないけど……やってみます!」

「頼むよ。もし分かるようなら、ここを出た後、向かってみたらどうだろう?」

「ああ、そっか、そうですよね! どうせ行く場所なんて無いんだから!」


 車庫を脱出する事ばかりで、その後の事は何一つ決まっていない。

日夏は自宅から持参したノートパソコンを車から持ち出し、灯りのある由月の元へと走る。

その背を見送り、統也はポツリと零すのだ。



「何だ、俺……答え、出てるじゃないか」



 日夏と明日の話をして、自分が今後をどう考えているのか気づけた気がする。

それが清々しくも感じるから、この結論に間違いは無いのだろう。


統也は後部座席に腰かけると、ドアは閉めずに携帯電話を取り出す。


(それにしても、大川サンはどうやって発狂者について調べてるんだろう?

更新したら更新したと言ってくれれば良いのに)


 雖も、由月は自ら発言する事の無い研究者だ。求められなければ口を開かない。

今の内に確認て理解を深めておこう。統也は由月のホームページを開く。



《発狂者についての経過観察。――発狂者は2つに分けられる。

1つは、自殺衝動に駆られる者。1つは、解放感を求めて暴挙を働く者。

ここでは後者についてを【発狂者】と定義づけて説明する。

蘇えりの者と違い、発狂者とは意思疎通・会話が可能だ。

然し、発狂者は発狂の時点で譲歩や加減と言った意識を持たない。

常に欲望の赴く儘と言う点については蘇えりの者と類似する》


《又、発狂者に行動パターンは無い。

日常的に感じていたストレスや欲求に作用され、表現も異なる。

知能は高く、正常を偽る技術を持っている事を忘れてはならない》



 これが、生存者と発狂者を見分けられない理由。

内に秘められた凶暴性に気づけなければ、死者に喰われる前に殺されてしまう。


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