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ブラックビート  作者: 坂戸樹水
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 ドオォオォオォン!!



 ロケット弾は地面に突き刺さって爆発。

強烈な爆風に、閉まったばかりのシャッターがガタガタと揺れる。

ロケット弾発射の勢いに吹っ飛ばされ、ゴロゴロと床を転がされた統也は、強打した頭や背中・腰を押さえて悶絶。


「いッ、てて……ッッ、」


 思いつきの作戦ではあるが、吉沢の健闘もあって死者の侵入は全て食い止め、車庫内の安全は保たれる。

岩屋は運転席を飛び降りると、腰をついた統也に怒鳴る。


「お前なぁ! 俺達も一緒に殺す気かぁ!?」

「まさか。これ以上アイツらを増やしてどうするんですか。

岩屋サンの車がストレートに入って来れるようにって道を作ろうと思ったんですけど、もうちょっと余裕があった方が良かったですね」

「ハァ、お前の発想とんでもねぇ……」


 何にせよ、無事に車庫に辿り着く事が出来た。

岩屋は統也に手を貸し、立ち上がらせる。


「所で岩屋サン、もしかして、俺達を助けに来てくれたんですか?」

「そりゃそうだろ! 他に何しに来んだ、んなトコ!」


 岩屋と言えば安全主義者。

それが随分と思い切った事をするから驚きを隠せない。

然し、車から降りて来る仲間達の顔を見てしまうと、嫌でも緊張が解けてしまう。


「ハ、ハハハハ! 何だ、皆の方が余っ程ヒーローじゃないか、」


 滲む涙をゴシゴシと袖で擦って誤魔化す。

一同が揃って統也に駆けつける中、由月は座り込む吉沢に手を差し伸べる。


「ありがとうございます」

「ぇ?」

「彼等を守ってくれて」

「!」


 負傷の吉沢には これ以上ない褒賞だ。

ギュッと下唇を噛んで頷く。



*



 空は夜を招き、闇の色が車庫内にも染み入る。

整備棚の蛍光灯を1つばかり点け、僅かな明かりの中で一同は円陣を組んで腰を下ろす。

眠り続ける田島と負傷の吉沢の事を考えれば、ここに長く籠城する事は出来ない。

今の内に明日の段取りを立てるとしよう。


「成程なぁ。このバズーカ砲みたいなのをブッ放しながら脱出か。いけそうだな」

「はい。さっき演習で使わせて貰ったので、次はもっと上手く扱えると思います」

「初撃ち演習かよ……マジで怖い事しやがったな、オメェは……」


 照準が狂えば岩屋の車に命中していただろう、統也の無謀さには毎度 驚愕させられる。


「ぁ、あのっ、変な声が聞こえてきましたっ、

それから化け物が沢山現れたんですけど、あれは一体なんだったんですかっ?」


 ライフルを乱射し続けた今日の日夏はお手柄だが、どれだけ泣き腫らしたのか、今でも鼻の頭を赤くして問えば、統也は眉を顰める。


「松尾将補だ。アイツが叫んで、そうしたらこうなった」

「えぇ!? オイオイ、勘弁してくれよッ、雄叫びでゾンビを呼び寄せたってのか!?

何だよ、そのポテンシャルの高さは!?」


 死者に視覚や聴覚・嗅覚がある事は分っているが、意思疎通を図って結託する実例は、これ迄に確認されていない。

それも又、【例外】とする死者に与えられた特別な能力なのか、岩屋の目が由月に向けられる。

由月はストレッチャーに横たわる田島を見下した儘、考え耽った様子で答える。



「――ただ、叫んだ。それだけなのかも知れない」


「あぁ? どうしたよ、センセぇらしくもねぇ。説明になって無いぞ」



 いつもの由月なら小難しい理論を並べ立てて仮説を導き出すだろうに、今回は随分と適当な言い回しだから、岩屋で無くとも怪訝する。

由月は田島の頬に触れ、呟く。



「I did it my way. 結果的にそうなった」



 一同は更に首を捻る。


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