120
「ねぇッ、何あれ!? どうゆうコト!? あんなんじゃ、大川サンはっ、」
「うるせぇ!! ドア閉めて、とっとと座れ!!」
まさか自分を助ける為に、あんな暴挙を働いたとは思いたくは無い。
仁美は岩屋に一喝されると押し黙り、崩れる様にシートに凭れかかる。
「どうすんだよ!? 大川サンは今の内に逃げろって言った!
その時間稼ぎにあんなバカな事をしやがった!! お前らは どうしたいんだよ!!」
「そ、そんなの、どうしたいか何て……私達に何が出来るっての!?」
「出来る事なんか誰も聞いてねぇよ!! どうしたいかって聞いてんだよ!!」
「うぅぅ、っっ、由月サン、由月サン……嫌だっ、僕はこんなの嫌だぁあぁあぁっ、」
「あぁそうかよ! 口だけで、泣くだけで、そんなら俺の勝手にさせて貰うからな!! 後で文句言うんじゃねぇぞ!!」
岩屋はアクセルを踏む。
「どうせ死ぬなら、全員助けに行って死んでやる!!」
この地上で生きる事の難しさは、とっくに理解している。
ならば、どっち道死ぬとして、死に方くらいは自分で決めたい。
最後くらいはヒーローになりたい。岩屋は車を走らせる。
由月が正門バリケードを薙ぎ倒したお陰で、ワンボックスカーは傷一つ付かずに敷地内に突入。
炎上寸前のセミトラックの脇に停まると、日夏は僅かに開けた窓の隙間から銃口を突き出し、泣きながらライフルのトリガーを引く。集い出す死者達に乱射だ。
「来るなっ来るな! うわぁあぁあぁあぁあぁん!!」
日夏が攻防する間に岩屋と仁美は窓を開け、セミトラックを怒鳴りつける。
「オイ! センセイ!! 大川由月!! 生きてるか!? 生きてるなら返事しろ!!
「ねぇっ、大川サン、生きてるの!? 生きてるよね、大川サンってば!!」
「助けに来てやったんだぞ!! 置いてくぞ!! 大川由月ぃ!!」
「もぉヤダ怖い!! 生きてるなら早く出て来て!! 死ぬとかホントに嫌だからぁ!!」
すると、割れた助手席側の窓から白い手がヌッ……と伸びる。
まるで白蛇が壺の中から出て来る様だ。
生きているのか、それとも死んで蘇えったのか、この段階では分からない。
――ダン!!
白い手がドアを叩きつける。そして、ゆっくりと顔を出す。
「騒がしいわね、蘇えり損ねたわ……」
「「大川サン!!」」
額から流血しているも、意識はハッキリしている。
セミトラックの窓から這い上がる由月を、岩屋は運転席から迎え入れる。
「アンタ、無茶苦茶だろ!」
「退避せず乗り込んで来たアナタ方には言われたくないわ」
岩屋を跨ぎ、由月は助手席に腰を落とす。避難は完了。
「靖田君、行くぞ!!」
「は、はい!!」
岩屋は再びアクセルを踏み、敷地内を走行。
「統也は何処にいる!?」
「平家サン! 僕のスマホから統也サンに電話して、場所を確認してください!」
「ゎ、分かった!」
薬莢が車中に飛んで転がる中、仁美は腰を屈めながら日夏のボトムのポケットから携帯電話を引っこ抜く。
*




