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(何だよ、しっかりしろ、ネット住人! 俺はこれからどうしたら良いんだ!?
どうやって田島を起こせば良いんだ!? 何処にどうやって避難すれば良いんだ!?
どっかにレスキュー情報、出てないのかよ!?)
ネットの世界も統也と同じ迷える子羊ばかり。
その中で、唯一シンプルなレスポンスを見つける。
「何だ、コレ……」
【生き抜きたければ頭を使え。http:///www.ohkawa-labo_1xxxx……】
恐怖に馴れ合うでも無ければ、泣き言を綴るでも無い。
強い信念を感じるメッセージに目を奪われる。
(このアドレスは……ここに飛べって事か?)
この先に記されているのは、救いか絶望か。
否、どちらを問えど、藁にも縋りたい統也に迷いは無い。
指先はリンク先のアドレスをクリック。
カタン……
「!?」
携帯電話の画面がリンク先に移り変わったと同時、外からの物音。
統也は肩を震わせる。
(ドアに……何かぶつかった!? 外に誰かいるのか!?)
警備室に逃げ込んで揃々3時間が経過しようとしているが、2人以外に音を立てられる者はいない筈だ。統也は静かに腰を上げ、監視モニターに目を向ける。
(警備員が起きた? ――いや、違う)
警備室前に放置した儘の警備員達が目覚めたと言うなら肩を撫で下ろす所だが、モニターに映し出される映像は、そんな感動的な物では無い。
(いつの間に……どうしてアイツらが、何処から入って来たんだ!?)
言葉にするも おぞましい存在。
それでも、統也の目は警備室前を映すモニターを凝視する。
ダラリダラリ……ユルリユルリ……生気の無い足取りで壁に体を擦りつけながら歩く人影。
その数3体。倒れた警備員を見つけると、次々に その体に覆い被さる。
「ぁ……」
モニターで見ている所為か、現実味が無い。無声映画の様だ。
それでも、壁1枚隔てた先で何が起きているのか、
既に1度、これと同じ光景を目にしている統也に想像する手間は無い。
(食ってる……堀内と同じ……アイツら、人を食ってる……)
恐怖が心頭に発しながらも、統也は全てのモニターに目を向ける。
(そうか、入って来たんじゃない……俺達が気づかなかっただけ……)
白黒の映像。
(映像が荒くて分からなかった……
全員が寝落ちたんじゃ無く、既に死んでいた人もいて、
そいつらが目覚めて、目を離した隙に……)
他のモニターを見れば、いつの間にやら喰い散らされた利用者が、無残な躯となっている。
蘇った死者がどんな意識で人を襲うのか知れないが、【喰らう】に対しての執着や集中力は異常だ。形振り構わぬ食いっぷりは、まさに獣。
そして、一頻り貪れば、3体の死者は再び施設内をウロウロと徘徊しだす。
(それから、きっと、死者にも個体差があって、)
腸を穿り返されたばかりの警備員が、ピクピクと動き出す。
(死んで直ぐ蘇えるヤツもいる――)
警備員は立ち上がると、バランスが悪そうにヨタヨタと歩き出す。
きっと他の死者達と同様、獲物を探し始めたのだろう。
(寝落ちた人はアイツらの格好の餌食……
抵抗の余地無く喰い殺され、そして、次には違う存在となって蘇える。
そうやって最悪の連鎖が出来上がるんだ……
時間が経てば経つ程、俺達はアイツらに囲まれる!)
1つ、現実を把握。
平衡感覚を無くす程の衝撃に、ガクン! と膝の力が抜ける。
何せ、ここに来る道すがらにも寝倒れた人達を何人も見て来た。
それが揃ってゾンビ化しているとなれば、この施設は四面楚歌と言っても良い。
助けを待つ所の始末では無い。
(か、考えろ、俺! どうすれば良いのかを!!)
壁かけ時計は15時を指している。まだ外は明るいが、夕暮れは間近。
警備室はエアコンで涼しく保たれているが、長居するには不充分だろう。
(俺達だって飲まず食わずじゃいられない。集中力を切らすわけにもいかない。
そうなったら必ずボロが出る……
田島と俺、どちらか先に死ぬ事になっても、やっぱり最悪なんだ!)




