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「あぁ、もう……何なんだよ、お前!?
何がって何だよ、そのどうでも良さそうな言い草はよぉ!
ただ くっ着いて来るだけで何もしねぇで、都合が悪くなりゃ黙りやがって、
言い逃げばっかじゃねぇか! 自分で何かしようって、少しは動けよ!
足手纏いのクセに、場所だけ取ってんじゃねぇよ!」
「はぁ!? そんな事 言われる筋合い無いんですけど!?
そっちだって運転してるだけで、何でもかんでも統也クンにやらせて、肝心な時んなって人に判断押し付けてさ!」
「押し付けて何かねぇだろ!
運転してるだけって、お前はそれすらしてねぇだろ!」
「免許持って無いんだよ! 男のクセにつまンねぇ事 言ってんじゃねぇよ!」
「何だと!? もう我慢できねぇッ……降りろ! とっとと降りろ!」
「ッ、」
こうまで言われては、仁美が岩屋の車に留まる事は出来ない。
シートを跨ぎ、日夏を押し退けて車を飛び降りる。
「へ、平家サンっ、」
日夏の制止を無視し、叩きつける様にドアを閉めると、仁美はジープの後部座席に身を隠す。
結局、2人の言い争いすら傍観に留まってしまった日夏は、怖ず怖ずと岩屋を見やる。
「ぃ、岩屋サン、マズイですよ、危ないと思います……
何かあったら、平家サン、運転できないのに……」
「知るかよ! 少しは自分の立場を分かった方が良いんだ! ああゆうのは!」
完全決裂。
一方、統也・浜崎・吉沢の3人は、正門のバリケードを攀じ登り、敷地内に降り立つ。
左右を見回すも死者の姿が無い所を見ると、日差しを避けて隊舎内に留まっているのだろう。
浜崎は長息を吐く。
「そう言えば、水原君は我々より敵との接触は多く経験していたんだったかな?」
「移動していましたから、その都度は」
「大したもんだよ。今更だが、キミならどうする?」
統也は隊舎の正面玄関と、その並びに位置する食堂の窓を見やる。
(出入り口は締め切ったまま……窓のバリケードも外されて無い。
皆、脱出に間に合わなかったのか……いや、裏口があるじゃないか、
車庫に向かう最短距離を選んだのかも知れない!)
「車庫に避難できた人がいるかも知れないから、グラウンドを経由して確認、
それから、1番近い裏口から隊舎内に侵入します。
どうせ大腕振って歩いてるのはヤツらぐらいでしょうから、派手に撃ってやりますよ」
「名案だな。吉沢、そのプランで行くぞ」
「はい!」
生存者の存在を信じるからこその判断。
3人は背を低く走り、建物や花壇の角々で立ち止まっては進行方向を確認。
グラウンドに踏み込むと、車庫を左斜め前方に捉える。
「グラウンド、クリア。蘇えりの姿はありません」
「車庫のシャッターは閉まったままだな。誰も車両を使ってはいないと言う事か」
車庫に駆け寄って対人用ドアをノックしてみるが応答は無く、人が籠城している様子は無い。
「やっぱり、まだ隊舎に……」
「隊舎に突入したら、私が車庫の鍵を取ってきます」
「良し。2人の援護は俺に任せろ。水原君、キミは医務室を見て来るんだ」
「え?」
統也が聞き返すと、浜崎は一笑する。
「田島君を迎えに行くんだろ? 早く行ってやらないとな」
「は、はいっ、ありがとうございますっ、」




