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(誰からも連絡が来ない……)
携帯電話は鳴らない。
家族の誰一人も連絡できる状況に無いのか、嫌な方向にしか想像が向かない。
統也は膝を抱え、小さく縮こまる。
(父サン、母サン、どうか無事でいて欲しい。保護されていて欲しい。
安全な所にいて欲しい。もしそうじゃ無かったら……)
統也はブンブンと頭を振り、携帯電話に手を伸ばす。
(今の内に調べて置こう。ネットを利用して情報交換してるヤツは絶対にいる。
何が起こってるのか、どの程度の規模なのか、政治家のホームページとかツブヤキとか、田島の精神状態も考えれば、ここにも長くはいられない。
何とか避難場所を見つけなけりゃ!)
現状を表すワードを打ち込み、検索。
すると、多くのタイトルがヒットする。
「こんなに、」
(ネットニュースじゃ、今朝9時の時点で各省庁よりウイルス・テロ・災害の警戒態勢を実施、安全確認が出来るまで全国民に屋内避難する事を呼びかけている、って!?
そんな警報が出てた何て知らなかったぞ!)
多くが通勤・通学の時刻。
場所によっては避難勧告も耳に入ったか知れないが、統也の通学路にはタイムリーなニュースを確認する状況は整っていなかった。
否、Jアラートが鳴ろうと、日常を優先できる程に日本は平和な国だ。
こんなタイトルに気づいても、我れ関せずな者も多かったに違いない。
その分、ネット掲示板には多くのレスポンスが寄せられ、盛り上がっていた様だ。
[屋内避難ニュース上がってるけど何? なんつ~ジョーク?]
[引き篭もりのお前ら勝利]
[どーせ大袈裟告知。ビビりすぎジャパン]
[誤報ダロ。ニュースにも全く相手にされてナイし]
[政府警告ヨワ]
[ネタ薄。もぉちょっと具体的じゃなきゃ相手にしようがない]
[つか、ウイルスなん? テロなん? 災害なん? どれよ?]
[片っ端から警戒ワラ]
[情報間に合ってナイんじゃない? それくらい慌ててるとか?]
[そんで、ゥプしちゃうとか、政府どんだけドンクサよって]
[そんなコトより目の前でゾンビもどき歩ってる。ワラ]
[ハロウィンには早いんぢゃね? まだ9月]
[コッチなんか近所で刃物もったジジィが暴れてるって大騒ぎ]
[画像はよ]
[ウチなんか、母チャン起こしても全然起きない。お陰で学校遅刻]
[オツ]
[うちのも起きない。何か変]
[ウチも]
[うそ? ウチも]
[オィオィおまいら救急車よべ]
[救急車、電話でない。ザケンナ]
[どこ地区? 近場のヤツ、呼んでやれ]
[コッチも出ない]
[ムカついたからケーサツ呼び出してやろーって、デンワ出ないし]
[ありえね~~朝っぱらから家の前で殴り合いの大喧嘩してる~~]
[消防も出ねぇ。イタ電してやったのに]
[人が人くってる!]
[オツ。病院いけ]
[人喰ってるって!]
[信じんなアホ]
[ホントだ!]
[ホントだグロヤバイ絶対ヤバイ警官やられてる]
[子供だって容赦ないみたいだぞ、コレ]
[ヤバイ、眠い]
[勝手に寝れ]
[ダメだ! 寝るのヤバイって! 他の板に書いてあった!]
初めは呑気なレスポンスから、徐々に動揺する様が窺える事に、統也は鳥肌を立てる。
(眠るのはヤバイ……
寝落ちてしまえば、用務員サンや、ここの警備員みたいに、簡単には目覚められなくなるから……)
今の所、眠気は無い。
そもそも、こんな緊迫した中で眠れる筈も無いだろう。
そう思い至るなり、統也は息を飲む。
「た、田島?」
(田島はここ暫く『眠い』と……ずっと、そんな事を言っていた。
学校から逃げる時だって、さっきだって……)
「田島、田島、起きろっ、起きろって!」
「う、ぅぅ……、、……」
一旦は目覚めそうになるも、田島は再び眠りに着いてしまう。
(嘘だろ、嘘だろ嘘だろ嘘だろ!?)
田島まで眠ってしまえば、本当に1人きりになってしまう。
その恐怖に狼狽え、縋る思いで携帯電話を握り、必死に検索。
(ど、どうすれば良いんだ!? 寝た子も起こす方法って無いのか!?
寝落ちたら絶対に起きれないのか!?)
【眠るのはヤバイ】と言う、簡単な文言ばかりが目につく。
具体的な事が知りたいと思えど、同じ質問を投げかけるタイトルに適切な回答は見当たらない。




