4-30 小さな転生貴族はサポートする
※3月25日に更新しました。
「おらぁっ」
「はあっ」
リオンとアレンが再び二手に分かれ、アウラに攻撃する。
こういうところの息の合いようは素晴らしいと思う。
だが、どうしてすぐに言い争いをするんだろうか?
『グルアッ』
アウラは体を横に回転させ、尻尾を大きく振るう。
大きく振るうなんて可愛らしい表現を使ったが、実際はそんな生易しいものではない。
空気の切り裂く音が聞こえ、地面が大きく抉られており、当たれば命を落とすのと心配するほどだった。
そんな心配はあの二人に当てはまらないわけだが……
しかし、この攻撃で二人の攻撃が中断させられるわけにはいかないので、俺は魔法を放つ。
「【土縛】」
(ガッ)
『グルアッ!?』
土の拘束具がアウラの尻尾を地面に押さえつける。
尻尾を押さえつけられ、回転を中断させられたアウラは驚く。
そこに二人の攻撃が直撃する。
(ドンッ)
(ズバッ)
『ギャウッ』
痛みで悲鳴を上げるアウラ。
だが、アレンの攻撃では鱗の表面を斬っただけで、血は流れていなかった。
これでは難しいだろう。
「父さん、もっと深く傷をつけることできる?」
「ああ、できるが……大丈夫なのか?」
「そこはアウラの耐久力を信じるしかないよ。結局これができなかったらアウラの命が危ないんだから」
「わかった。任せておけ」
俺の言葉に納得した様子のアレン。
こういうときの彼の「任せておけ」は非常に頼もしい。
こと戦闘に関しては彼とリオンさんは信頼できるだろう。
(バキィッ)
『グルアッ!』
アウラが土の拘束具を破壊する。
長く拘束できるとは思っていなかったが、こんなに早く破壊されるとも思わなかった。
作った側としては少し悲しい。
『グルアアアアアアアッ』
土の拘束具を作ったのが俺だと分かたのだろう、右腕を振るってくる。
俺はまだ体格は子供なので、その動きだけでも脅威に感じる。
地球だったら、避けきれず確実に命を落としてしまうだろう。
しかし、ココは異世界──今の俺には魔法があるのだ。
「土錬成:パルチザン」
『グルッ!?』
地面から土の槍を創り、アウラの右手を止める。
あまり期待はしていなかったが、やはり俺の創った槍ではアウラを貫けなかった。
まあ、壊れないだけで御の字だが……
「はあっ」
そして、俺の槍で動きを止めた右手にアレンが斬りかかる。
(ズバッ)
『グルアアアアアアアアアアッ』
とうとうアレンの大剣が斬り裂いた、アウラの右手が激しく出血する。
このチャンスを逃すわけにはいかない。
俺は即座に身体強化と風魔法を足にかけて一気に距離を詰め、傷口に両手を突っ込む。
生暖かい感覚に思わず嫌な顔になるが、やらなければならないのだ。
俺は意識を両手に集中する。
「【吸魔】」
俺は魔法を唱えると、アウラの体から俺の両手を伝って魔力が流れ込んでくるのを感じる。
異世界に生れ落ちてから7年の間にずっと感じていたこの感覚は間違えようもない。
【聖属性】という珍しい属性でチクチクする感覚があるが、耐えられない程ではない。
血と魔力の生ぬるい何とも言えない感覚に耐えること十秒程度、ようやく魔力を吸収できた
『グル……ル……るぅ』
(ドスンッ)
アウラは力尽きたように倒れ、徐々に体が小さくなっていく。
すぐそばでハクアも倒れている。
どうやら気絶しているようだった。
「はぁ……疲れた……」
俺は尻餅をつき、大きく息を吐いた。
ようやくこれでこの騒動も終わりか……
俺は安心してしまったせいか、そのままゆっくりと瞼を閉じてしまうことに抗うことができなかった。
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