4-20 小さな転生貴族は聖騎士と戦う1
※3月20日に更新しました。
「話は終わりかい」
俺たちと対峙した青年が茶化すように聞いてくる。
簡単に勝てると思っているのだろう、そこには余裕しかなかった。
決して自分の実力を過信しているわけではないが、十分だと思っているようだ。
「ええ、待たせたわね」
「しかし、まさか俺の相手が貴族の坊ちゃんとメイドとは……なめられたもんだなぁ。これがカルヴァドス男爵家流の教育かな?」
俺たちを見て、青年が推測する。
明らかに実力が下の俺たちが出てきたのだから、そう思うのは当然か。
そんな青年の言葉をリュコは無視する。
「あなたに聞きたいことがあるわ」
「何かな?」
「誘拐したとき、メイドの一人に怪我を負わせたわね」
「誘拐じゃなく、保護と言って欲しいな」
問いかけに青年は茶化す。
「そんなことはどっちでもいいわ。それで質問の答えは?」
「……怪我させたことは事実だな」
リュコの真剣な声に茶化すのは失礼だと思ったのか、青年は素直に答えた。
その表情にはどこか申し訳ない気持ちが見える。
「なら、本気で倒させてもらうわ」
リュコが腰を少し落とし、構える。
「戦わないといけないのはわかったが、それでいいのか?」
「何が言いたいの?」
「流石に武器を持っていない相手を攻撃するのは気が引けるんだが・・・・・・」
青年は少し嫌そうな表情をする。
流石に無手を相手に武器を使うのはプライドに反するのだろう。
「それなら心配ないわ」
「何?」
リュコが笑みを浮かべると、男は怪訝そうにする。
次の瞬間、リュコが地面を蹴って駆け出す。
「【炎舞脚】」
「うおっ⁉」
ハイキックが放たれ、青年はバックステップする。
いきなりの出来事に少し息を切らしていた。
「よく避けたわね」
不意打ち気味の攻撃を避けられたリュコは再び構えを取る。
彼女の両手足は炎に覆われていた。
これはリュコがエリザベスに教わっていた魔法だ。
身体や武器を炎で覆うことで攻撃や防御に役立てるのだ。
エリザベスはまるでドレスのように体を炎で覆っているが、リュコはまだその段階ではない。
かなりの高等技術のため、今の彼女では両手足が限界だった。
「なるほど・・・・・・魔法の炎と獣人の身体能力か。そりゃ、武器はいらないな」
青年はすぐに状況を察したようだ。
わかっていたことではあるが、かなりの実力者のようだ。
たいていの人はリュコが獣人であることで魔法を使えることに驚くはずだ。
しかし、青年は偏見を持たず、それを受け入れていた。
つまり、対策を練られる可能性がある。
(ヒュッ)
「っ⁉」
顔の近くに石の礫がとんできて、青年は上体を逸らす。
ちっ、避けられたか。
「おい、顔に向けて魔法を放つなんて危ないだろ」
青年は俺に向かって文句を言ってくる。
どうやら俺が放った魔法だとわかっているようだ。
「魔法を放つこと自体が危ないと思うけど?」
「そういう問題じゃない。もし顔に当たって怪我でもしたら、俺の美しい顔が台無しになるだろ」
俺の疑問に男は怒って答える。
「「・・・・・・」」
「いや、冗談だ。だから、そんな視線を向けないでくれ」
俺とリュコが冷たい視線を向けると青年は困ったような反応をする。
流石にそこまで自信過剰ではないようだ。
しかし、油断はできない。
こんな馬鹿げたやりとりをしていても、男には隙が見当たらない。
先ほどの不意打ちにしても、咄嗟でも完全に回避されていた。
「魔法戦士型と魔法使い型のコンビか・・・・・・しかも、それなりの実力者か」
「わかります?」
青年の呟きに思わず反応してしまう。
先ほどのやりとりだけでそこまでバレたのか、と。
「そりゃわかるさ。そちらのお嬢さんの魔法はかなりの高等技術──一歩間違えば、自分が火傷を負ってしまう。だが、その様子もない」
「・・・・・・」
「そして、坊やの魔法は一見普通の初級魔法だが、明らかに込められている魔力が多すぎる。しかも、無詠唱ときた」
「そこまでわかってますか」
青年の指摘は当たりである。
やはり、相当の実力者のようだ。
アレンの言う通り、二人でも勝てるか怪しいな。
作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。




