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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
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4-17 小さな転生貴族の父はぶちぎれる

※3月18日に更新しました。


「「……」」


 ハクアとクロネからの視線が痛い。

 まるで痛い人を見ているような冷ややかな視線である。

 まあ、助けに来たのがこんな変な仮面をつけた四人組だったら仕方のないか……

 だが、俺たちだって酔狂でこんな仮面をつけているわけではないのだ。


「貴様ら、何者だっ! ここが聖光教の支部であるとしっての狼藉かっ!」


 豚の様に太った禿──ガフ伯爵が唾を飛ばしながらそんなことを言ってきた。

 奴の言うとおり、ここは【聖光教】の支部の一つである。

 リクール王国では主流の宗教ではないが、それでも国内に支部ぐらいは置いてある。

 地球で例えるなら、仏教や神道がメインの日本にもキリスト教の教会やほかの宗教の建物があるようなものだ。

 大多数とは言えないが、ある一定の数はいる。

 とりあえず、そんなところに殴り込みをかけているのだから、問題にならないわけがない。

 しかも、実はこの支部があるのが隣の領地であるガフ伯爵領なので、その点でも問題になってしまうわけだ。

 顔がバレないように、俺の【土属性】の魔法で作った仮面をつけているわけだ。

 妹たちには不評のようだが……


「さて、その娘たちを返してもらおうか?」


 アレンがガフ伯爵に向かって宣言する。

 俺は目的をあっさりと言わない方が良いと思ってしまう。

 俺たちの狙いがハクアとクロネを取り戻すことであると分かると、相手も警戒するはずだ。

 そして、俺の予想通り、相手側も警戒心を露わにする。


「聖女様を狙っているのか、この不届き者めっ!」

「……どっちが不届き者だ? いくら欲しいものだからといって、人から奪っていいわけがないだろう。しかも、女の子を傷つけてまで、な」


 ガフ伯爵の言葉にアレンが反論する。

 どうやらアレンはハクアとクロネが誘拐されたことに加え、シルフィアを傷つけられたことに大層お怒りのようだ。

 致命傷になりそうな傷を負わされ、あの場にレヴィアがいなければ命を落としていてもおかしくはなかった。

 情に厚いアレンならば、怒っても仕方のない事だろう。


「ふんっ、そんなこと知ったものか。我々にとって救いとなるのだから、多少の犠牲はつきものだ。聖女様を迎えるためには周囲の人間の犠牲などいくらあろうが構わん」


「(ブチッ)」


「「えっ!?」」


 ガフ伯爵の言葉を聞いた瞬間、アレンから何かがちぎれる音が聞こえた──ような気がした。

幻聴かと思ったのだが、突如アレンから威圧感のようなものがあふれ出した。

 俺とリオンはそんな彼の様子に呆けた声を出してしまう。

 うわっ、地面にひびが入り始めている。

 なんでそんな現象が起きているんだ?


「それがお前の遺言でいいのか?」

「ふんっ、何を言っている? 貴様、まさかたった四人で我ら教団を相手するつもりか? 片腹痛いわっ!」


 アレン言葉を豚は鼻で笑う。

 おそらく人数的に数十倍差があることで自分たちが優位であると思っているのだろう。

 まあ、普通に考えればそうだろうが、アレンの実力を知っている者からすればこの状況は優位でないことはわかる。

 低くなった声は冷や汗を感じるほど怖かった。


(ブウンッ……ガガガガガガガガッ)

「「「「「ぎゃっ!?」」」」」


「なっ!?」


 鈍い音がした瞬間、多くの教団員が悲鳴を上げた。

 何が起こったのかわからなかったガフ伯爵が振り向くと、そこには抉られた地面と倒れている教団員たちがいた。

 今のアレンの攻撃を俺はギリギリ見ることができた。

 大剣を上段から振り下ろし、その直線上の地面を一気に抉ったのだ。

 抉れた地面から下の階層の様子も見え、壁どころか天井にも亀裂が入っていた。

 つくづく自分の父親の化け物さ加減を感じてしまう。


「アレンの奴、完全にぶちぎれてやがるな」

「うん、そうだね」


 リオンさんの感想に俺は同意する。

 普段のアレンからは想像ができない、【怒り】という感情が表に現れていた。

 とりあえず、彼を今後も怒らせないようにしよう──と、俺は心に誓った。


「……この場所が明日には地図から消えるんじゃないのか?」

「いや、流石にそんなことは……」

「グレイン……自分の父親の今の様子を見て、本当にそう言い切れるのか?」

「……うん、ごめん。たしかに言う通りかもしれない」


 リオンさんの真剣な声に俺は自身の甘い考えをかなぐり捨てる。

 今のアレンならば、ここにいる全員を血祭どころか、存在すらも消しかねない。

 ハクアとクロネを誘拐するような奴らなのでそれぐらいしてもいいと思わないでもないが、もう少し手加減してもいいんじゃないだろうか?

 流石にこれほどぶちぎれているアレンを見た後だと、相手がかわいそうになってしまう。


「「「「「(ガタガタガタッ)」」」」」


 現にアレンの殺気を受けた教団員の何人かが震え、地面に黄色い染みを作っていた。

 殺気を向けられていない俺たちだって怖いと思ってしまうのだ。

 向けられた相手は貯まったものではないだろう。


「お前ら、覚悟しろよ。生まれてきたことを後悔させてやる」


 アレンは憤怒の表情でそう宣言し、大剣の切っ先を相手に向けた。

 その姿は【悪鬼】──いや、【鬼神】と呼ぶにふさわしいぐらい恐ろしかった。








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