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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
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4-8 小さな転生貴族は妹に嫌われている?

※3月17日に更新しました。


「はは……大丈夫、グレイン?」

「ぐすっ……うん」


 苦笑しながら話しかけてくるシリウスに俺は半べそで答える。

 流石にあんな反応をされるとは……

 どうしてこんなに嫌われているんだ?


「グレイン、何をやったの? クロネがあんなに怖がるなんて」

「そんなの僕が一番聞きたいよ」


 アリスが純粋な疑問を投げかけるが、それは俺が聞きたいぐらいだ。

 なんで実の妹に怖がられないといけないのだ。

 別に俺はクロネに対して怖がられるようなことはしたことはない。

 むしろ、ハクア同様にかわいがっていた筈だ。

 それなのに、いつの間にか怖がられるようになってしまった。

 一体、何が……


「グレイン様のことが純粋に怖いのでは? 威圧されているとでも思っているのかも」

「そんなことするわけないだろっ!? って、もしかして、僕って怖がられてるの?」

「はい」


 俺の質問にリュコはあっさりと頷く。

 その答えに俺は愕然としてしまう。

 そんな俺を無視して、彼女は説明を続ける。


「グレイン様はクロネ様に優しく接していらっしゃいますので、優しい事は伝わっていると思います。ですが、魔力感知が得意な人にとってグレイン様の魔力は異常、恐怖を感じてもおかしくはないでしょう」

「いや、異常って……」

「ご自分が異常ではない、と?」

「いや、たしかにおかしいかもしれないけど……」


 リュコの言葉に反論できない。

 失礼なことを言われているのだが、至極もっともな内容だからだ。

 しかし、仕えている相手によくそんなことを言えるな。


「たしかに初めて会った時は少し恐怖を感じたね。アタシは魔力とかはよくわからないけど、グレインからは表現できない怖さを感じたな」

「お父様と同じぐらいの魔力を持っている人間がいることに私も最初は驚いた」

「……」


 婚約者たちにまで言われる始末だ。

 多少は自覚していたが、まさかそんなことを考えられていたとは……


「私たちはそういうのを感じなかったわね? どうしてかしら?」

「赤ん坊のころから知っているからじゃないかな? グレインだって、赤子のころから今みたいに異常な魔力があるわけじゃなかっただろうし」

「ああ、そういうこと」


 シリウスの説明にアリスが納得する。

 いや、たしかに今の魔力は俺が訓練することで身に付けたものではあるが……


「とりあえず、クロネ様に好かれるために魔力を減らすべきですね」

「……それは本気で言っているの?」

「まあ、無理ですよね。……というわけで、諦めてください」

「いや、諦めるのはやっ」


 あっさり諦めるように言ってきたリュコに俺は驚愕する。

 俺が悩んでいるのだからもう少し考えてくれてもいいだろう。

 他人事だからそこまであっさりと諦められるのだろうか?


「大きくなればグレイン様の魔力に耐えることがきっとできますよ。それまで我慢してください」

「うぅ……それはどれぐらいかな?」

「さぁ?」

「もう少し優しい言葉をかけてくれない? リュコの言葉で心がズタズタなんだけど……」

「そんな軟ではないでしょう? ほら、情けない表情をしないでください。ここは天下の往来ですよ?」

「うぅ……僕の扱いが酷い」


 俺はさらに気を落としてしまう。

 俺だって傷ついたりするのだから、もう少し優しくしてくれないだろうか?


「すみません」

「ん? なに?」


 俺が落ち込んでいると、シルフィアが会話に入ってくる。


「ハクア様とクロネ様があちらの店に興味を示したようで……」

「ん? あれはアクセサリー店か?」


 シルフィアの差した方向を見ると、そこには大量の綺麗な石が置かれた露店があった。

 あれはおそらくこの村の人間ではなく、行商している商人なのだろう。

 売っているのはそれぞれに違う効果を持った石をアクセサリーにし、持ち主を補助的に助ける装備品のようだ。

 あくまで補助的な効果しかないのでそれらを買うお金があるのならばより良い武器や防具に金を出した方が良いという意見があったりする。

 だが、武器や防具とは違って滅多に壊れることは少なく、一度購入すればそのまま一生使い続けることもできる。

 そして、何より綺麗な宝石のような石が使われているため、女性冒険者だけではなく一般女性からも人気だったりする。

 妹たちも例に漏れず、女の子として興味を持ったのだろう。


「よし、俺がプレゼントを……」

「ああ、グレイン様は待っていてください」

「なんでっ!?」


 財布を取り出してアクセサリーを買ってあげようとしたのだが、それをシルフィアに止められ、俺は思わず驚愕する。


「今のグレイン様が買っても、クロネ様はもらわないと思いますよ?」

「うっ!?」

「そういうのはもう少し信頼を得てからの方が良いと思います。物で釣ればどうにかなるものではないでしょうし」

「……たしかにそうかも」


 シルフィアの言葉に俺は納得するしかなかった。

 たしかに何かプレゼントをすればいいかと思っていたが、それは物で釣っていることになってしまう。

 そんなことで妹からの好感度を上げるようじゃ、兄としてはダメな気がする。

 もっと別の方法で信頼を勝ち取らないといけないわけか……


「グレインはティリスさんとレヴィアさんと楽しんで来たらどうかな。二人のことは僕が見ておくから」

「えっ、でも、俺が母さんに頼まれたことだし……」


 シリウスからの突然の提案を俺は受け入れることはできない。

 この一ヵ月は何もなかったとはいえ、これから何も起こらないわけではない。

 そんな状況で俺が離れるわけには……


「ちょっとぐらいは大丈夫だよ。それにずっと一緒にいたら、クロネもストレスがたまるだろうしね。あと、僕だけじゃなくてアリスもいるし、大丈夫だよ」

「……」

「婚約者なんだから、二人のことも気にかけないと。ずっと妹ばかりにかかりっきりだと、嫉妬されるよ?」

「うっ……」


 シリウスの指摘は正論だった。

 たしかに俺は妹に好かれようとするあまり二人のことを──いや、リュコを含めると三人のことをほったらかしにしていたかもしれない。

 ここは素直に提案を受け入れた方が良いかもしれない。


「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。じゃあ、行こうか」

「「うん」」


 俺の言葉にティリスとレヴィアが満面の笑みを浮かべ、返事をした。

 やはり二人にも我慢をさせていたのだろうか?

 半ば無理矢理とはいえ、婚約者となったのであれば気を付けた方が良いだろう。







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