閑話10-28 女子高生は異世界召喚される
「……吉田さんの言い分は理解できた」
「なら、これ以上の問答は無用ね」
西園寺くんの言葉に吉田さんが笑みを浮かべる。
これで問題を解決できたと思ったのだろう。
しかし、私はそう思えなかった。
西園寺くんから納得したような雰囲気を感じなかったからである。
もちろん、東郷くんからも……
「だが、それは委員長が吉田さんの仲間になることとは話が別だろう」
「たしかに、そうだな。俺たちのどちらも選ばれない理由はわかったが、だからといって君の仲間になる理由にはならないな。むしろ、委員長の力に目をつけ、無理矢理奪おうとしたようにも聞こえる」
「なっ!? それは吉田さんに失礼よっ!」
二人の言い分に私は反論する。
二人が言いたいことは理解できる。
だからといって私の友達を批判していいことにはならないはずだ。
そんな気持ちで反論しようとしたのだが……
「まあ、そう思うのが当然よね」
「えっ!? 吉田さん?」
なぜか批判をされた本人がそれを納得してしまった。
その言葉に私は思わず驚いてしまった。
そんな私の反応を見て、吉田さんは苦笑をする。
「聖を仲間にすると言った以上、そういう批判を受けるのは覚悟していたわよ。なんせ【聖女】様なんだからね」
「で、でも……吉田さんはそんな理由で私を仲間にする、と言ったわけじゃないでしょ?」
「ええ、もちろんよ。といっても、大した理由があるわけじゃないわ」
「どういった理由があるの?」
「少なくとも、あんな良くわからない連中に任せるぐらいなら、私たちと一緒に冒険した方が良いと思ったからよ」
「……」
吉田さんの言葉に私は黙り込む。
たしかに大した理由ではなかった。
だが、私のことを心配してくれていたからこそ、この提案をしてくれたのだ。
「よくわからない連中、は失礼じゃないか? これでもクラスメートのはずだけど……」
「今まで全く交流したことがないんだから、仕方がないじゃない」
西園寺くんが納得いかないのか、文句を言ってくる。
しかし、それに吉田さんはあっさりと反論する。
その反論に西園寺くんは一瞬考え込む。
「……確かにそうだけど。でも、僕たちをこいつらと一緒にしてほしくないかな」
「あ? なんだと?」
西園寺くんの言葉に東郷くんが怒りを露わにする。
まあ、明らかに馬鹿にされているのだから、それは仕方がないのかもしれない。
といっても、西園寺くんの言っていることは正しいとは思うけど……
「何か問題が?」
「俺たちのどこがよくわからない連中だ?」
「自分で理解できないのかい? 少なくとも、人に言えない連中との付き合いが噂されているような人間は「よくわからない連中」と言われても仕方がないと思うけど?」
「……人を噂で判断するなよ。あくまで噂──真実ではないかもしれないんだからな」
「かもしれない、だろう? 真実の可能性だってあるはずだ」
二人が睨みあいながら、言い争いを始める。
せっかく解決したと思ったのに、これでは元通りになってしまう。
いや、先ほどまでは私を巡っての争いだったので、私をどうにかすれば解決することができた。
だが、これは二人の間で行われている言い争いであるため、先ほどのような解決方法を使うことができない。
一体、どうすれば……
「聖、ちょっとどいて」
「え?」
私が悩んでいると、吉田さんがいきなり声をかけてきた。
意味が分からず、私は振り向いた。
そこには──大剣を上段に構えた吉田さんの姿があった。
その光景に私は思わず驚きの声を漏らす。
「吉田さんっ!?」
「はあああああああああああっ!」
私の声はすでに遅く、吉田さんは大剣を振り下ろした。
振り下ろしたのは、言い争っている西園寺くんと東郷くんの間──だが、二人からは距離があり……
(ズバアアアアアアアアッ)
「「「「「っ!?」」」」」
目の前で起きた予想外の出来事にその場にいた全員が驚愕した。
なぜなら、吉田さんが振り下ろした大剣がその直線状の床を──いや、その先の壁まで斬り裂いたからである。
明らかに大剣の攻撃範囲ではない。
「「……」」
目の前を斬撃が通り過ぎた二人は驚きのあまり言葉を失っていた。
いきなりこんなことをされれば、仕方のない反応かもしれない。
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