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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話10-28 女子高生は異世界召喚される


「……吉田さんの言い分は理解できた」

「なら、これ以上の問答は無用ね」


 西園寺くんの言葉に吉田さんが笑みを浮かべる。

 これで問題を解決できたと思ったのだろう。

 しかし、私はそう思えなかった。

 西園寺くんから納得したような雰囲気を感じなかったからである。

 もちろん、東郷くんからも……


「だが、それは委員長が吉田さんの仲間になることとは話が別だろう」

「たしかに、そうだな。俺たちのどちらも選ばれない理由はわかったが、だからといって君の仲間になる理由にはならないな。むしろ、委員長の力に目をつけ、無理矢理奪おうとしたようにも聞こえる」

「なっ!? それは吉田さんに失礼よっ!」


 二人の言い分に私は反論する。

 二人が言いたいことは理解できる。

 だからといって私の友達を批判していいことにはならないはずだ。

 そんな気持ちで反論しようとしたのだが……


「まあ、そう思うのが当然よね」

「えっ!? 吉田さん?」


 なぜか批判をされた本人がそれを納得してしまった。

 その言葉に私は思わず驚いてしまった。

 そんな私の反応を見て、吉田さんは苦笑をする。


「聖を仲間にすると言った以上、そういう批判を受けるのは覚悟していたわよ。なんせ【聖女】様なんだからね」

「で、でも……吉田さんはそんな理由で私を仲間にする、と言ったわけじゃないでしょ?」

「ええ、もちろんよ。といっても、大した理由があるわけじゃないわ」

「どういった理由があるの?」

「少なくとも、あんな良くわからない連中に任せるぐらいなら、私たちと一緒に冒険した方が良いと思ったからよ」

「……」


 吉田さんの言葉に私は黙り込む。

 たしかに大した理由ではなかった。

 だが、私のことを心配してくれていたからこそ、この提案をしてくれたのだ。


「よくわからない連中、は失礼じゃないか? これでもクラスメートのはずだけど……」

「今まで全く交流したことがないんだから、仕方がないじゃない」


 西園寺くんが納得いかないのか、文句を言ってくる。

 しかし、それに吉田さんはあっさりと反論する。

 その反論に西園寺くんは一瞬考え込む。


「……確かにそうだけど。でも、僕たちをこいつらと一緒にしてほしくないかな」

「あ? なんだと?」


 西園寺くんの言葉に東郷くんが怒りを露わにする。

 まあ、明らかに馬鹿にされているのだから、それは仕方がないのかもしれない。

 といっても、西園寺くんの言っていることは正しいとは思うけど……


「何か問題が?」

「俺たちのどこがよくわからない連中だ?」

「自分で理解できないのかい? 少なくとも、人に言えない連中との付き合いが噂されているような人間は「よくわからない連中」と言われても仕方がないと思うけど?」

「……人を噂で判断するなよ。あくまで噂──真実ではないかもしれないんだからな」

「かもしれない、だろう? 真実の可能性だってあるはずだ」


 二人が睨みあいながら、言い争いを始める。

 せっかく解決したと思ったのに、これでは元通りになってしまう。

 いや、先ほどまでは私を巡っての争いだったので、私をどうにかすれば解決することができた。

 だが、これは二人の間で行われている言い争いであるため、先ほどのような解決方法を使うことができない。

 一体、どうすれば……


「聖、ちょっとどいて」

「え?」


 私が悩んでいると、吉田さんがいきなり声をかけてきた。

 意味が分からず、私は振り向いた。

 そこには──大剣を上段に構えた吉田さんの姿があった。

 その光景に私は思わず驚きの声を漏らす。


「吉田さんっ!?」

「はあああああああああああっ!」


 私の声はすでに遅く、吉田さんは大剣を振り下ろした。

 振り下ろしたのは、言い争っている西園寺くんと東郷くんの間──だが、二人からは距離があり……


(ズバアアアアアアアアッ)

「「「「「っ!?」」」」」


 目の前で起きた予想外の出来事にその場にいた全員が驚愕した。

 なぜなら、吉田さんが振り下ろした大剣がその直線状の床を──いや、その先の壁まで斬り裂いたからである。

 明らかに大剣の攻撃範囲ではない。


「「……」」


 目の前を斬撃が通り過ぎた二人は驚きのあまり言葉を失っていた。

 いきなりこんなことをされれば、仕方のない反応かもしれない。







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