閑話10-17 女子高生は異世界召喚される
「わかりましたか?」
宰相が私に話しかけた。
先ほどの静電気のようなものをその身に受けたはずなのに、まるで何事もないかのように振舞っている。
この人に痛みはないのだろうか、とも思ったが、彼は右手を隠すように後ろに回していた。
私は彼の右腕を掴んだ。
「なっ、なにを……」
「見せてください」
いきなり手を掴まれ驚く宰相であったが、私は無理矢理彼の手を引いた。
そして、その右手を見て、言葉を失った。
「っ!? これは……」
「……」
宰相の右手は悲惨なものだった。
火傷と切り傷を同時に受けたような、黒焦げで傷だらけの手だった。
先ほどまでは普通の手だったはずだ。
それが、たったの一瞬でこんなことになるなんて……明らかに先ほどの静電気のような者が原因だろう。
しかし、こんな風になっても、我慢をするとは……
「どうして隠したんですか?」
「別に見せる必要がないと思いまして……」
「私たちに武器に選ばれなかった状態を教えようとしたのでしょう? なら、これを見せた方が良かったのでは?」
宰相に私は質問をする。
この手を見せれば、自分に合わない武器を選んだ場合のリスクは痛いほどわかるだろう。
だが、彼はそれをしなかった。
一体、どうしてだろうか?
「これを見せれば、武器を選ぶことを躊躇する方も現れるからですね」
「……確かにそうかもしれないですね」
「流石に私の立場でそのようなことはできません。一人でも多く、戦力を集めないといけないわけですから」
「すみません……どうやら愚問だったようですね」
「いえ、私も隠すような真似をしてすみませんでした」
私が謝罪をすると、宰相も謝ってきた。
どうやら、彼も申し訳ないとは思っていたのだろう。
危険な情報を隠す──信頼を失っても、仕方がない事なのだから……
私は彼の手を見て、あることを思いついた。
「少し手を貸してくれませんか?」
「はい?」
「少しその手を見せていただきたいのです」
「それは構いませんが……」
私の言葉の意図が分からず、首を傾げながらも手を差し出してくる宰相。
私はじっくりとその手を観察する。
これは本当に酷い。
下手をすれば、二度と手を動かすことができなくなるのではないだろうか?
正直、傷が治ったとしてもかなりの跡が残ってしまうだろう。
「少し触ります」
「え?」
私の言葉に宰相が驚く。
だが、そんな彼の反応も意に介さず、私は彼の手に触れた。
もちろん、できるだけ痛みを感じないようにふんわりと、である。
「……」
私は目を閉じ、精神を集中させる。
イメージは回復──傷が治っていくことを想像した。
(ポウッ)
「むっ!?」
何か温かいものが手から出ていくのを感じ、宰相の口から驚きの声を漏らした。
そして、数秒後に再び目を開くと……
「治っている?」
宰相の手が回復していた。
どうやら成功のようだ。
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