閑話10-6 女子高生は異世界召喚される
「まあ、言葉が理解できるのはありがたいな」
「どうしてですか?」
「言葉がわかるということは、それに伴う教育をしなくて済むということだ。最低限生活を送るためには、その場所の言葉を覚えておいた方が良いだろう?」
「なるほど……確かにその通りですね」
皇帝の言葉に今度は私が納得する。
これは地球でも同じことが言える。
留学にしろ、旅行にしろ──外国に行く場合には、その場所の言葉を学ぶ必要がある。
もちろん、すべての言葉ではなく、それぞれの目的に必要な言葉だけではある。
だが、それを学ぶか学ばないかで過ごしやすさが変わってくる。
おそらく、皇帝はそのことが言いたかったのだろう。
「では、本来の目的に戻るとするか」
「【ステータスプレート】の件、ですね?」
ようやく本来の話に戻ってきた。
まさか、こんなに回り道をするとは思っていなかった。
まあ、まったく見知らぬ世界に連れてこられたのだから、スムーズに話が進むことは難しいか。
むしろ、これでもかなりスムーズに進んでいるのではないだろうか?
比較対象がないので、わからないが……
「では、使い方を説明しよう」
皇帝は【ステータスプレート】を一つ手に取った。
それを両手で持つと、目を閉じた。
すると、【ステータスプレート】から光が溢れ出した。
数秒後、その光が収まると、皇帝は再び目を開けた。
そして、【ステータスプレート】を私に渡してきた。
「読んでみろ」
「はい」
皇帝の言葉に私は頷く。
渡された【ステータスプレート】に書かれてある内容を確認した。
・名前:エドワード=カイザル
・年齢:32
・状態:良好
・職業:大剣使い
・称号:皇帝、独身
書かれてある内容を読み取ることはできた。
これはおそらく皇帝のステータスなのだろう。
といっても、基本的な情報が書かれているだけで、筋力などのステータスが書かれているわけではないだろうが……
まあ、そんなものが書かれてあったとしても、日々の生活で変化したりするので意味はないのかもしれない。
とりあえず、私は先生に【ステータスプレート】を渡した。
先生はそれを確認し──
「えっ!?」
驚いたような声を漏らした。
一体、何を驚いているのだろうか?
周囲の視線が彼女の方に向く。
皇帝が話しかける。
「レイよ、どうかしたのか?」
「い、いえ……なにもありません」
皇帝の質問に彼女は首を振った。
だが、彼女のその反応は明らかに何かあったように思える。
しかし、変に聞き出そうとしても、答えてはくれないだろう。
こういうのは、本人が話したくなるのを待った方が良い。
とりあえず、先生から【ステータスプレート】を回収した。
受け取った後──
「32歳独身か……」
「何か言いましたか?」
「な、何もないわ」
先生が何か呟いたので聞き返したが、再び先生は首を振った。
残念ながら何を言っているのか、聞き取ることはできなかった。
一体、どうしたのだろうか?
かなり神妙な表情を浮かべていたようだが……
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