閑話10-1 女子高生は異世界召喚される
「う~ん」
周囲の光が収まったのを感じ、私はゆっくりと目を開いた。
先ほどの光は一体何だったんだろうか?
こうやって考えることができていることは、何か危害を加えられたわけではないようだが……
「おお、成功だ」
「やったぞ」
「え?」
だが、少し離れたところから聞こえてきた嬉しそうな声に私は驚きの声を上げた。
明らかに聞いたことがない声である。
いや、聞いたことがないぐらいなら構わない。
だが、明らかに成人男性の声だった。
少なくとも、教室に成人男性などいなかったはずだ。
この場にいるはずのない声に驚き、私はそちらに視線を移した。
そこにいたのは……
「召喚に応じていただきありがとうございます、勇者様方」
「は?」
目の前にいたのは真っ白なひげを蓄えた老人が二人がいた。
一人は見たことのない服を着ており、もう一人は全身を覆うような布──いわゆるローブと言う奴であろうか──を纏っていた。
明らかに日本どころか地球でも見ることはない格好だった。
もちろん、知らない人間である。
「ん?」
とここで、私はあることに気が付く。
知らない人間が彼ら二人ではない、ということではない。
私たちクラスメートを取り囲むように10人ぐらいのローブを纏った人たちがいるが、今はそんなことを気にしている時ではない。
それよりも、私たちがいるこの場が全く見たことのない場所なのだ。
石材を積み上げて作った部屋なのだろうか、日本ではおそらくほとんど見ることのない部屋の様式である。
周囲に掛けられてある灯も、明らかに見たことがない。
緑色っぽい炎がゆらゆらと揺れており、この場の雰囲気を奇妙なものにさせている。
そして、私たちの足元には教室で最後に見たはずの魔法陣があった。
しかし、教室にあったときとは違い、魔法陣から光はあふれ出ていなかった。
まるで、もうやることはないとばかりに……
「ここはどこですかっ!」
雨宮先生が話しかけてきた偉い雰囲気の男性に話しかける。
おそらく、この場で一番偉い人であると認識したのだろう。
いきなりの出来事に困惑しているはずなのに、雨宮先生はしっかりと行動ができている。
これが学生と社会人の違いだろうか?
いや、今はそんなことを気にしている時ではないな。
私はとりあえず、魔法陣の中にいるクラスメートたちを確認した。
この場にはクラスメート全員がいた。
全員が困惑している様子ではあるが、誰かが大怪我を負っているというようなことはなかった。
とりあえず、全員が無事のようだ。
「落ち着いてください。きちんと説明しますから」
「これが落ち着けますか? 光に包まれたと思ったら、いきなり知らないところに連れてこられたんですよ?」
男性の言葉に雨宮先生がものすごい剣幕で話す。
彼女の言い分はもっともである。
こんな奇妙な出来事に遭遇し、落ち着けと言う方が酷なものだ。
しかし、そんな雨宮先生を落ち着かせるように、男性がさらに口を開いた。
「こんなところではなんですから、皆様にはついていただきたい。そこできちんと説明しますから」
「は? どこにですか?」
男性の言葉に雨宮先生が質問する。
こんなよくわからない状況の上、さらに別の場所に連れていかれるというのだ。
彼女が不安に思う気持ちは理解できる。
そんな雨宮先生の気持ちを知ってか知らずか、男性はあっさりと行き先を告げる。
「もちろん、この国の最高権力者──皇帝エドワード様の元ですよ」
「「は?」」
いきなり告げられた言葉に先生どころか、私も呆けた声を出してしまった。
なぜなら、告げられた内容があまりにも突拍子がない事だったからである。
まあ、こんな状況に巻き込まれて、今さらな話ではあるが……
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異世界転生に異世界召喚と詰め込みすぎと思うかもしれませんが、作者がこれを書きたいと思っていることを書こうとしているので、続きを読んでいただけると幸いです。
もちろん、まだ書いていませんよ。
本当に描きたいことは第10章辺りに書く予定ですから、今はまだその前段階です。
伏線については、第8章にも出てくるかな?




