閑話8-5 第二王女と公爵令嬢の会話
「【正妃派】の連中が暗殺者のような輩を差し向けるぐらいは想定の範囲内よ」
「暗殺者を差し向けられるのを想定するのもどうかと思うけどね?」
「一番困るのは、そのネックレスを奪われることよ」
「え?」
イリアの言葉にシャルロットは驚きの声を上げる。
予想外の内容だったからであろう。
理解をできていないシャルロットにイリアは説明をする。
「魔法が効かないと分かれば、それ以外の方法で攻撃する以外にネックレスを奪うという選択肢があるでしょう? そうすれば、シャルロットを守るものがなくなるわけだから、暗殺することができるわけよ」
「……たしかにそうだね。でも、そう簡単にできるの?」
イリアの説明に納得しつつも、シャルロットは質問をする。
たしかに、ネックレスを奪うことに成功すれば、イリアの言う通りになってしまうだろう。
しかし、そう簡単に奪われるとは思えない。
無理矢理奪おうものなら、国王である父親に頼み込んで取り返すことぐらいできると思う。
「シャルロットが身に付けている限り、【盗む】という選択肢はとることは難しいわね。でも、【奪う】のならその選択肢をとる必要はないわ」
「どういうこと?」
シャルロットは聞き返す。
イリアの言葉の意味が理解できなかったからである。
流石にこれは理解するのは難しいと思っていたのか、イリアはすぐに説明を始める。
「例えば、【魔石】を使ったネックレスはかなり貴重なものでしょ?」
「うん、そうだね」
「「それを女性の中で最も権力のある正妃がつけていないのに、第二王女が付けていることが問題だ」と難癖をつけて、無理矢理取り上げる可能性はあるでしょ?」
「たしかにそうかもしれないけど……その時はお父様に言うよ?」
イリアの説明にシャルロットはそう返した。
権力により無理矢理奪われたのであれば、それ以上の権力で取り返せばいい。
シャルロットはそう考えたのだが、事はそう簡単なことではなかった。
「取り返すことができれば、簡単でしょうね」
「?」
シャルロットは首を傾げる。
やはりイリアの説明は難しい。
彼女の考え方は普通の人とは全く違うので、シャルロットが一度聞いただけで理解するのはなかなか難しい。
それを理解しているからか、イリアは基本的にかみ砕いた説明を付け加える。
「自分のものにするための行動であれば、取り返すことはできるでしょう。でも、シャルロットにネックレスを持たせないための行動だったら?」
「私に持たせない?」
「奪った後、破壊する可能性があるわ。そうすれば、シャルロットを守るものがなくなるでしょう?」
「あっ!?」
イリアの説明にようやく納得したシャルロット。
ネックレスをシャルロットの手元からなくすために、盗むことだけが方法ではないのだ。
むしろ、破壊した方がより安全と考えるべきだろう。
「でも、魔石は貴重なんだよ? だったら、手元に置こうとするのが普通じゃないかな?」
「普通はそうかもしれないわね。でも、仮にもこの国の【正妃】よ。どういう行動をすれば、シャルロットに対して効果的な嫌がらせができるかを考えられない相手ではないわ」
「……」
「自分のものにするのが難しければ、壊そうとするはずよ。要はシャルロットがこの魔石のネックレスを持たないようにするのが、一番の目的なんだから」
イリアはそう結論づける。
これが他の人が言ったことであれば、そこまで気にすることはなかっただろう。
しかし、イリアが言ったことで、信憑性が増すのだ。
彼女の言い方は難しい事が多々あるが、それでも全くの見当違いであることはほぼない。
基本的に、彼女の言ったことはほとんどが起こってしまうのだ。
事前にそれを伝えられて、シャルロットも何度か助けられた。
今回もそのようにできないだろうか?
「どうにかならないの?」
「そのために、隠しながら身に付けるのよ」
シャルロットの質問にイリアはあっさりと答える。
そういえば、最初はそんな話だった。
しかし、シャルロットの心配はぬぐえない。
「でも、ばれたら?」
「バレないように隠すんでしょう? といっても、素直にそのままつけるのは逆に危険かもしれないわね」
「? どういうこと?」
イリアの言葉にシャルロットは再び首を傾げる。
そんなシャルロットの反応にイリアは説明をする。
「シャルロットであれば、ネックレスを普通のつけ方で隠すことはできるわ。でも、だからといって、ずっと隠すことができるわけじゃないわ」
「というと?」
「ドレスを着て公の場に──パーティーに参加した場合、ダンスを踊ったりするでしょう? その際、激しく動くせいで隠していたネックレスが出てくる場合があるわ」
「……それでバレるわけね」
説明を聞き、シャルロットは状況を思い浮かべた。
たしかに、そのような起きる可能性は高いだろう。
そうすれば、あの目ざとい正妃のことだ──シャルロットに突っかかってくるだろう。
そして、後になって無理矢理奪おうとしてくるわけだ。
これは面倒である。
「他に隠す方法は……」
イリアは考え込む。
一番いいと思っていた方法が自分の考えのせいで難しくなってしまった。
だが、代替案が中々浮かばない。
「あっ」
「どうしたの?」
そんなイリアを見ていて、シャルロットがはっと何かを思いついたような反応をした。
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