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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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閑話7-14 聖氷と闇炎の姉妹たちの会話


「さて、ここで問題よ」

「え?」


 突然の私の発言に驚くクロネ。

 今までそんな流れじゃなかったのだから、驚いても仕方がないだろう。

 しかし、クロネに考える力をもっとつけてもらいたいので、こういうことをしていこうと思う。

 第二のアリス姉様、ティリス姉様を作ってはいけないのだ。


「王族が学長を攻撃することができる──これが第二王女様の危険にどうつながると思う?」

「え? つながるの? えっと……」


 私の質問にクロネは驚きながらも考え始める。

 小さく呟くながら、時折首を振る。

 なかなか思いつかないのだろう。

 しかし、1分ほど経ったとき、クロネがぱっと笑顔を浮かべた。


「わかった。他の王族に狙われているとき、ね」

「正解よ」


 クロネは正解を導いた。

 私はそれを素直に褒めてあげる。

 シルフィアも嬉しそうであった。


「学長は王族を守る義務はあるけど、王族から攻撃もされる可能性がある。第二王女様が他の王族に攻撃されるということは、その両方の条件が重なっているのよ」

「なるほど……でも、そんなことがあり得るのかな? 家族なんでしょう?」


 クロネが不満気にそう呟く。

 彼女からすれば、家族を攻撃する意味が分からないのだろう。

 これは私たちが男爵家の人間だからと言う理由ではない。

 貴族である以上、そのようなことにうちもなっていた可能性は合った。

 しかし、うちの場合はシリウスお兄さまとグレインお兄さまがいるおかげで、そういう争いがなくなっているのだ。

 まあ、別の問題が現れているのだが、今は関係のない話なので置いておこう。


「第一王子以外は半分しか血が繋がっていないんだけどね」

「え?」



 私の言葉に驚く。

 どうやらこれは知らなかったようだ。

 貴族である以上、この情報は知っておくべきだろう。

 自国の王族の相関図ぐらい、ある程度は把握しておくべきである。

 実際に会ったときに、それに応じた対応をしなければいけないのだから……


「第一王子と第二王女様の母親は側妃──しかも、子爵家出身の女性なのよ。だからこそ、本来は他の側妃や正妃様よりは格段に位が下なの」

「……まあ、そうなるよね」

「でも、一番愛されていたのはその側妃様なのよ。それが正妃様の怒りを買ったのよ。すでにその側妃様は亡くなられているわ」

「え?」


 私の言葉に驚くクロネ。

 この情報も知らなかったか。

 一度、この国の王族について勉強させる必要があるわね。

 家庭教師に伝えておこう。


「もちろん、証拠はないわ。だからこそ、側妃様の死因は病死ということになっているわ」

「なんで? 病気で亡くなったわけじゃないんでしょう?」

「……わからないのよ。外傷もなく、体内から毒物も検出されなかった……だからこそ、病気による突然死ということにするしかなかったの」

「そんな……」


 私の説明にクロネが言葉を失う。

 優しい彼女のことだから、とても信じられないことが起きていると思っているのだろう。

 しかし、世の中と言うのはそういうものである。

 良い人間もいれば、悪い人間もいる。

 自分が良い人間だからと言って、他の人がそうであるわけではないのだ。


「他の側妃様は別にその側妃様に対して、害意はもっていなかったわ。むしろ、正妃様の攻撃からできる限り守ろうとしていたらしいわ」

「そうなの?」

「他の側妃様は別に国王様のことが好きだから妃となったわけじゃないのよ」

「どういうこと? 結婚って、好きな人とするんじゃ……」

「……お爺様たちのせいかしら?」


 クロネの言葉に私はとある老夫婦の姿を思い出す。

 彼女の言っていることは、私たちの祖父母に当たるバランタイン伯爵夫妻の言葉だからである。

 祖父母は貴族の中でも珍しい恋愛結婚で、私たちにも愛した人と結婚してほしいと言っていたぐらいだ。

 クロネの言葉はおそらくその影響だと思われる。


「それはあくまでも跡継ぎを産むことを考える必要のない人たちの考えよ」

「そうなの?」

「国王様はその当時、まだ子供ができていなかった。だからこそ、正妃様以外に側妃様を娶ることになったの。高位貴族出身で、身分的に問題のない独身の女性を、ね」

「……なるほど。でも、件の側妃様は子爵家出身だったのよね?」

「どういう出会いかは知らないけど、第一王子様を宿したから側妃様になったみたいね」

「……側妃様はどう思っていたんだろう?」


 私の説明にクロネが微妙な表情を浮かべる。

 愛し合っていたとしても、国王と子爵家の女性──あまりにも身分が違いすぎる。

 子供を宿したとしても、結婚することを決断するには勇気がいると思ったのだろう。


「まあ、実際に娶ったわけだから、受け入れてはいたんでしょうね」

「……でも、結局死んじゃったら、幸せとは思えないね」

「……そうね」


 クロネの言葉に私は頷く。

 果たして側妃様が幸せだったのか、私たちには知ることはできない。

 だが、できれば幸せであったと私は願っている。






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