閑話7-8 聖氷と闇炎の姉妹たちの会話
「大丈夫ですか、ハクアお嬢様?」
「え、ええ……目が見えるようになったわ」
「え?」
私の言葉にシルフィアは驚く
先ほどまで目をくらませていたはずなのに、すぐに見えるようになったと言ったからである。
回復があまりにも早すぎる。
そして、それができるということは……
「この【魔石】のおかげかしら」
「【魔石】ですか?」
私の言葉にシルフィアが聞いてくる。
彼女はまだ気づいていないのだろう。
この【魔石】の秘めている力に……
「それはどういうこと?」
ようやく気分がましになってきたのか、クロネも聞いてきた。
ちょうどいい。
もう一つの【魔石】の所有者である彼女にもしっかりと理解してもらわないといけない。
私は理解したことを告げる。
「この【魔石】はたしかに【魔力吸収効果】を持っているわ。それはシルフィアが試したこととシュバルとアウルの【息吹】にキズ一つついていないことから証明されているわ」
「ええ、そうね」
私の説明にクロネが頷く。
流石にこの説明なら、彼女も理解できるようだ。
クロネはアリスお姉様やティリスお姉様ほどではないが、どちらかというと脳筋タイプである。
頭が悪いわけではないが、どちらかというと感覚で動くタイプなのだ。
そのため、こういう説明のためにはかなり言葉を崩さないといけない。
「だからこそ、グレインお兄様は【魔石】を私たちの護身装備として、送ってくれたんだと思うわ」
「そうでしょうね。グレインお兄様だったら、私たちを守るためにこれを送ってくれたんでしょう」
クロネは自信満々に頷く。
グレインお兄様のことを一番理解していると思っているからだろう。
自分達が愛されている、だからこそ【魔石】つきネックレスを送ってもらった、のだと……
「けど、おそらくグレインお兄様はこの効果に気づいていないと思うわ」
「「えっ!?」」
続く私の言葉にクロネとシルフィアが驚く。
どうやら、二人ともその考えには至っていなかったようだ。
だが、私はこの考えは間違っていないと思う。
「どうして? グレインお兄様が送ってきたものでしょ?」
「そうですよ。あのグレイン様がよくわからないものを送ってくるとは思えませんが……」
私の言っていることが理解できないのか、二人が反論してくる。
たしかに二人の言い分はもっともである。
グレインお兄様ほどの人間がそのようなことをするとは到底思えない。
しかし、お兄様だって人間である。
異常だと扱われようと、人間なのだからミスをする。
正確に言うと、ミスではないと思うが……
「グレインお兄様は【アブソルシルバーイーター】という魔物からこの【魔石】を手に入れたから、【魔力吸収効果】があると判断したのでしょうね」
「ええ、そうね」
「たぶんだけど、その効果については検証しているでしょうね。流石に何の効果もなかったら、意味はないから」
「じゃあ、そのときに先ほどの効果を見つけているのでは?」
私の言葉にシルフィアが指摘する。
たしかに、彼女の言っていることはおかしくはない。
しかし、私はそれが間違っていると思う。
「見つけているのであれば、そのことを手紙に書いているはずよ。万が一、先ほどのようなことになったとしても、危なくないように……」
「……たしかにそうですね」
私の説明に納得するシルフィア。
手紙に書いていなかったので、グレインお兄様が先ほどの効果を知らないと理解したのだろう。
しかし、そこからさらにシルフィアが指摘してくる。
「では、グレイン様は効果が分からないようなものを送ってきたということですか?」
「そういうことじゃないと思うわ。グレインお兄様はこの【魔石】を【魔力吸収効果】があるものとして送ってきているのだから……」
「ですが、現に違う効果が……」
私の説明にシルフィアが反論する。
私たちが心配だったからこそ、そう言っているのだろう。
彼女の立場ならば、仕方がない。
しかし、私はグレインお兄様の名誉のためにそれは否定させてもらう。
「グレインお兄様は調べたくても、調べられなかったのよ」
「え?」
「そもそも【魔石】はここ数年で発見された珍しい代物よ? どれだけ小さな【魔石】でもかなりの値段がついているはずよ」
「え、ええ……そうみたいですね」
私の説明にシルフィアが納得する。
しかし、まだ反論しようとはしているようだ。
「グレインお兄様はこれを倒した魔物から直接回収したんでしょうね。だからこそ、こんな貴重なものを私たちに送ってきてくれたわけよ」
「自分で回収したのであれば、いろいろなことを試すぐらいできると思いますが……」
「言ったでしょ? 【魔石】は貴重なのよ?」
「あっ!?」
ここでシルフィアはようやく気付いたようだ。
私は最後に結論を告げる。
「グレインお兄様がどれほどの【魔石】を手に入れたのかはわからないわ。でも、それは決して無駄にすることはできない量だったんでしょう。だからこそ、最低限確実にある効果は試したけど、それ以上は調べることはしなかった……いえ、できなかったんでしょう」
あくまでこれは想像である。
しかし、私の知るグレインお兄様なら、こうなっていると思う。
クロネほどではないが、私だってグレインお兄様のことを理解しているのだから……
「……すみません。私が間違っていました」
「別に構わないわ。シルフィアの立場なら、仕方がない事だわ」
謝罪するシルフィアに私はそう告げた。
別に私はシルフィアを怒るつもりはなかった。
彼女は当たり前の行動をしただけなのだから……
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