閑話7-6 聖氷と闇炎の姉妹たちの会話
「とりあえず、グレインお兄様がどういう意図でこのネックレスを送ってきてくれたのかわかって良かったわ」
シルフィアのおかげで私はグレインお兄様の評価を変えずに済んだ。
下手したら、まったく意味のない行動をする兄としてしまうところだった。
危ない、危ない。
「まあ、私はただのネックレスでも嬉しいけどね」
「それは私も同じよ?」
クロネの言葉に私は反論する。
その言い方だと、私がまるでお兄様が送ってくれたのがただのネックレスがいらないと言っているようではないか。
流石に妹としてそれはないだろう。
「では、このネックレスはしまっておきましょう。外出するときにつけるようにしましょう」
「わかったわ」
「わかった」
シルフィアの言葉に私とクロネは答える。
流石に普段からあんなネックレスをつけるつもりはない。
グレインお兄様がくれたものだから簡単に壊れるようなものではないだろうが、日常生活で常につけていれば汚れてしまう可能性がある。
それは避けたい。
だからこそ、シルフィアの提案はありがたかった。
「この箱に入れておきますね」
シルフィアはクロネが開封した箱を手に取り、開いた。
そして、そこにネックレスを入れようとして……
「「グルルッ」」
((ダッ))
「「「えっ!?」」」
突然現れた二つの影に私たちは驚いた。
二つの影はシルフィアの手元のあたりを通り過ぎた。
私たちは全員その陰の行く先に視線を向けた。
そこにいたのは……
「シュバルっ!?」
「アウルっ!?」
先ほどまで私たちのベッドに寝ていた毛玉たちであった。
急に起きたのは構わない。
しかし、この行動はどういうことだろうか?
だが、それよりまずはしないといけないことがあった。
「シルフィア、大丈夫?」
私はシルフィアに質問をする。
先ほどのシュバルとアウルの行動でシルフィアが怪我をしたかもしれないからだ。
そうであれば、よりきつい説教をしなければいけない。
「はい、大丈夫です。ですが……」
「どうしたの?」
私の質問に答えつつも、何かを言おうとするシルフィア。
しかし、それはクロネの言葉で遮られてしまった。
「ハクア、あれっ!」
「え? あっ!?」
クロネの慌てたような言葉に私は視線を向けた。
そして、すぐに気づいた。
「「ネックレスがっ!」」
私たちのネックレスがシュバルとアウルの手元にあった。
おそらく、シルフィアとすれ違った時に奪ったのだろう。
一体、なぜこんなことを……
「シュバル、返しなさいっ!」
「アウルもよ。今なら怒らないであげるから……」
私たちは二匹に呼びかける。
どうしてこんなことを急にしたのかはわからない。
だが、この二匹は別に意思疎通ができないわけではない。
私たちが命令すれば、聞いてくれるはずなのだが……
「「グルゥッ」」
「「ええっ!?」」
しかし、二匹は私たちの命令を聞かず、怒ったような表情を向けた。
これは今までに見たことがない表情だった。
まったく状況が分からない。
どうして二匹はここまで怒っているのだろうか?
だが、すぐに状況が変わった。
(((ブワッ))
「「えっ、何を……」」
シュバルとアウルがネックレスに──いや、魔石に向かって【息吹】を放った。
二匹それぞれの属性の奔流が魔石に向かっていき……
((シュウウウウウウッ))
「「「……」」」
魔石に【息吹】が吸収された。
その光景に私たちは何も言うことができなかった。
目の前にはなぜか満足げな表情を浮かべたシュバルとアウルがいるだけだった。
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