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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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7-148 死んだ社畜は反撃の糸口を伝える


「ウォーさん、ティリス、リュコ──ドラゴンの顔及び胴体を狙って攻撃を。四肢や尾は放っておいても構わない」


 俺はまず振り分けられた集団の中から一人ずつ選んでいった。

 そんな俺の人選にウォーさんが質問してくる。


「どういう理由で選んだんだ?」

「ドラゴンの外皮を破壊するのに適した人物を選びました。ウォーさんのハンマーはドラゴンの外皮に衝撃を与え、破壊させることができるでしょう」

「……たしかにそうだな。だが、気になることもある。リュコ嬢ちゃんは衝撃を浸透させる術を持っているからいけるかもしれないが、ティリス嬢ちゃんの方は難しいんじゃないのか? たしか、ダガーを使っていただろう」


 俺の言うことに納得しつつも、そんなことを聞いてくる。

 たしかにティリスが戦う姿を初めてみれば、そう思うのも仕方がないかもしれない。

 だが、それはあくまでもティリスの一側面だけである。


「ティリスはあのマントの下に様々な武器を隠しています。当然、それに応じた武器もありますよ」

「そうなのか? というか、今までどうして使わなかったんだ?」


 ウォーさんが質問してくる。

 まあ、普通に考えれば、このドラゴンを相手にダガーで挑むのはおかしいだろう。

 だが、ティリスにもいろいろと考えていることがあるのだ。


「一番使い慣れている武器だからですよ」

「それだけが理由なのか?」

「まあ、最たる理由が、ですね。そもそもドラゴンにどんな攻撃が通用するのかわかりませんでしたから、一番得意な武器を使うのが当然でしょう?」

「ふむ……たしかにそうだな」


 俺の説明にウォーさんが納得してくれた。

 たしかにティリスは獣人の身体能力のおかげでいろんな武器を使うことができる。

 もちろん、どれもあくまで【使える(・・・)】というレベルではなく、専門の人間並みに使うことができる。

 だが、状況に応じた武器にしなければ、その良さも活かすことはできない。

 そのためにもまずは状況を正確に把握しないといけないのだ。

 そして、今回の状況に一番合っているのは……


「グレイン、お願い」

「おう」


 ティリスが俺に向かって何かを投げてきた。

 それは金属の棒だった。

 イメージとしては鉄棒の支えている棒ぐらいの太さで長さは1mほど……ティリスの持っている武器の中では一番大きく、一番長い武器である。


「なんだ、それは? 棒術でもするのか? だが、長さが……」


 俺が手にした棒を見て、ウォーさんがそんなことを呟く。

 たしかに、彼が悩むのもわかる。

 一番大きいとはいえ、武器と使うにしては明らかに短すぎるからだ。

 これでは、棒術や槍術の利点の一つである長さによる少し離れたところからの攻撃がない。

 だが、これは別に棒術に使うわけではない。


「【土石創造(サンドクリエイト)・大槌】」


 俺は棒の先に魔力を流す。

 すると、棒の先に土が集まっていき、固まっていった。

 そして、完成したのは……


「ハンマー、だと?」

「ええ、そうです」


 俺の手にはウォーさんの武器と同じようなハンマーができていた。

 大きさはウォーさんの者と比べると一回り小さいが、ティリスが使う分にはこれぐらいの大きさの方がいい。

 あまりにも大きければ、扱うのに苦労するからだ。


「なるほど……たしかに外皮を破壊するためには一番効率的かもしれないな」

「ウォーさんが一番外皮を破壊していましたからね」


 ウォーさんの言葉に俺はそう答える。

 この戦いの間、ドラゴンの外皮は何度も破壊と回復を繰り返していたが、一番破壊していたのは明らかにウォーさんだった。

 ならば、ティリスの選ぶ武器がハンマーになるのは当然だろう。

 ちなみに、ティリスの武器は俺やレヴィアがいれば、千差万別の武器となる。

 彼女の持っている他の武器も今回のように魔力によってさまざまな武器に変化させることができるのだ。

 武器の形だけでなく、纏っている属性も変えることができる。

 獣人でありながら、属性攻撃を行うことができるわけだ。

 まあ、すべての属性でできるわけではないが……


「俺たちが選ばれた理由は理解できた。なら、他の奴はどうするんだ? 何もしないわけではないだろう?」


 ティリスの武器と自分たちが選ばれた理由がわかったウォーさんは俺に話の続きを促す。

 俺はそれに従って、説明を続ける。


「選ばれなかった方は破壊された部分が回復する前に追撃してください」

「ん? それだけでいいのか?」


 俺の説明にウォーさんが首を傾げる。

 おそらく、そういう攻撃は今までの戦いでやったと思っているのだろう。

 たしかに、この戦いの間に何度かそういうことをしたのは事実だ。

 けれど、ほとんどがその効果を示さなかった。

 だからこそ、意味がないと思ってしまったのだろう。

 だが、俺は何も考えていないわけではない。


「もちろん、ただ攻撃するのではないです。破壊によってできたヒビに染み渡らせるように攻撃してください」

「ヒビ、だと?」

「はい、そうです。破壊をすれば、ほぼ確実にヒビができるでしょう? そこに向かって攻撃するようにしてください」

「……どういう理由だ?」


 俺の説明に納得できないのか、ウォーさんがそんな風に聞いてくる。

 理屈がわからなければ、このような攻撃をする意味があるのか心配になっているのだろう。

 気持ちはわからないでもない。


「あくまで俺の想像です。「すべて信じろ」とは言えませんが、できる限り信じてください。おそらく効果があると思われます」

「……」


 俺の説明を聞き。ウォーさんが黙り込む。

 どうすべきか悩んでいるのだろう。

 俺のような新人の冒険者の言葉を信じろと言うのは難しい話かもしれない。

 先ほどやられてしまっていたしな。

 だが、ウォーさんは決断した。


「わかった。信じよう」

「本当ですか?」

「ああ。他に手があるわけでもないしな」

「ありがとうございます」


 受け入れてくれたウォーさんに俺は感謝の言葉を告げた。

 よし、これで反撃ができる。






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